ミニ小説 受験
何かに勝つために生きている。
誰かのために受かりに行く。
それは、人それぞれだ。
勝つ。 負ける。
それで決まる。
ある一人の少年が、記した、受験の決心。
「ここか・・・・。」
少年の名前は、分からない。仮に、
一番使われやすい名前で言ってみよう。 翔太でもいいかな。
「良し、行こう。」
グッ。誰かが翔太を掴む。
「ん?何でいけないんだ?」
翔太はその受験会場の前で、硬直してしまった。
誰にも引っ張られていないのに、足らへんを引っ張られている感じ。
一瞬強く引っ張られた。そして、いきなり暗闇の中に、落ちていった。
ドサッ。
暗闇の中に重々しい音が鳴る。翔太は、一瞬悲鳴を上げた。
「いってえなあもう! !? 何処だここは!?」
「無理もない」
暗闇の中から、聞き覚えのある声が、聞こえてきた。
とても懐かしいような声だった。
おじいちゃんの声らしいような声でもあった。
「お・・・・おじいちゃ・・・・ん?」翔太は暗闇の中に声を
反響させて言った。
「君は今日受験だね?」
暗闇は正体を答えてくれなかった。
「おじいちゃんなのか?」
翔太は暗闇にしつこく聞く理由があった。
翔太のおじいちゃんは、2年前、ある日突然心不全で、
この世を去ってしまったのだ。
とても翔太は、おじいちゃんが好きだった。
だからこんなにしつこく聞く訳なのだ。
「答えてくれよ!本当はおじいちゃんなんだろ。」
暗闇に光が灯った。
そして翔太の目の前に、おじいちゃんの姿が出てきた。
翔太は顔が崩れた。うれしかったのだ。
「やっぱりおじいちゃんだったんだね。会いに来てくれたんだね。
受験の日に、こうやって暗闇に連れて行って・・・。
・・・ここって、天国地獄?」
おじいちゃんは口を開けた。
「ここは時間が動かない場所だ。現実も今は動いていない。
心配しなくても良い。大丈夫だ。」
おじいちゃんは一瞬笑みがこぼれた。翔太は早速聞いてみた。
「何でこんな受験の日に来てくれたのか、教えてくれない?
おじいちゃん。」と。
おじいちゃんは一瞬硬直し、話し始めた。
「お前は、今日で人生が決まる訳だが、怖くないのか?」
「ううん。全然怖くなんかないよ。」
「そうか?俺は怖かったけどなあ~~~。受験という試練について、
お前はどう思ってんだ?」
「家族のためでもあり、自分のためでもあるよ。」
「ふふん。そうか・・・・。」
「うん。」
「・・・・・・・失敗したらどうするんだ?」
翔太は考えた。失敗。
実は翔太は心の中では、失敗すると思っていたのだ。
無論、そんなの翔太は考えたくもなかった。
考えると同時に、翔太は悲しくなった。
受験のためにがんばってきたこの4週間、親の逆鱗に触れ、
家出を一回した事。
まだまだある。親の顔を殴ったこと。ピアスをつけた事。
数え切れないくらい親には悪い事をしてしまった。
勉強だけは得意だった。
「どうしたら・・・・・・いいんだよ・・・。」
「・・・親とやり直しなさい。」
「え?」
知っていたのだ。おじいちゃんは。全て天の上から見ていたのだ。
翔太は涙がこぼれた。
「受験で・・・やり直したいんだ・・・。
親と・・。合格したら・・笑顔で戻って・・。
そんな感じで、直していきたいんだ・・。おじいちゃん・・・・。
今まで見ていてくれてありがとう。」
「良し。よく言った!!その意気で、受験合格してこい!
私はずっと天から見ている!!もう、助ける必要はないな!!
いいか翔太!!」
「何?おじいちゃん?」
「もうここにお前がくることはない。現実に戻らせるぞ。準備はいいか?」
「え?ちょっと待っ・・・。」
足の光の床が、暗くなっていく。おじいちゃんの姿が、
どんどん消えていくのを、翔太はこの目で見ていた。
途端に、ゴゴゴという音が出てきた。
「おじいちゃん!!」
「何だー!?」
翔太は感謝の気持ちを、言葉で、叫んだ!!
「会いに来てくれてありがとーーーー!!」
「・・・・がんばれよ。」
おじいちゃんはそう言い、完全に消えてしまった。
翔太は暗闇に飲み込まれた。
翔太が目を開けた瞬間、既に現実に戻っていた。
「おじいちゃん、がんばってくるよ。」
翔太は受験会場に小走りで走っていった。
「では始めてください。」
翔太は結果が良くも悪くても、精一杯頑張った。
面接も、とても緊張したが、頑張った。
頑張れば出来ると、自分に言い聞かせながらやれば、
良い方向に向かうと思った。
そんな気持ちと達成感で、受験検査日は終わった。
夜。眠る時、きっと受かると思いながら眠る事にした。
翔太は、そう思いながら、眠りに就いた。
これはとある少年が受験で成功の道へ行くきっかけの話である。
作り話ではある。
が、しかし、実現できないという訳でもない。
これは、もしかしたらあなたにとって、一番類似している事なのかもしれないのだから。
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題名「受験」
written by PLUS+PLUS
Presented by Y+-DESIGN.
2011 1,29 saturday
当時制作した文面ですので稚拙な表現がもしかしたらあるかもしれないです。
温かい目で見て頂けると嬉しいです。