表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

序幕  ある神の愚痴

序幕  ある神の愚痴  


 永久に続く人生ってどう思う? 

 結構辛いんだよね。気の毒に思う者などこの世のどこにもいないし。

 だからね、私が、私を慰めるんだ。

 一番の暇つぶしは地上の人間たちを眺めることだよ。

 今日のアティアは機嫌がいい。ゆっくり青空をたゆたいながら、わたしは地上を見下ろす。所々、雲が邪魔してうっとうしい。と、思えば私の意を組んで、アティアが雲を消してくれた。

 眼下には、大きく分けて五つの島々がある。

 私が今、気にしているのは東の大陸ヴァリア―ム。さらに海を挟んだ北に位置するボアース諸島だ。

 どちらもわたしが最初につけた名前と違う。

 人間たちは勝手に様々な名前を付ける。癖? なんだろうか。

 島の名前どころか、私たち神々の名さえ創作してしまうのだから呆れたものさ。それだけじゃなく、宿ってもいないものにも神の存在を信じて疑わないのだから。ま、この話は置いておこう。おかげで愉快なこともできるのだから。

 ヴァリア―ムは、四季のある住みよい大地だと自信をもって言えるよ。

 ただねぇ。大陸を統べる良き君主に恵まれていない。大小様々な国が支配され、支配し、未だに落ち着かない様子だ。まさに群雄割拠の時代さ。

 おかげで大地は泣いているよ。

 私にできることは、せめて雨を降らせるようにアティアに頼むことくらいさ。少しでも染みこんだ血を洗い流せるようにってね。

 ボアース諸島は、まぁ、少々酷だったかなって思う極寒地だ。けれど、その代わりに強靱な肉体と見目麗しい姿を与えたつもりさ。彼らは総じてボアース人と呼ばれているが、七つの部族があってそれぞれの個々の族名がある。彼らの多くは、海を渡ってヴァリア―ムへ降り立つんだ。

 なぜかって? 

 それは、働き口があるからさ。家族を養う糧だよ。つまり、お金。

 戦ばかりのヴァリア―ムにとって、屈強なボアース人は喉から手が出るほど欲しい。中には、乗っ取ってやろうとする野心を持ったボアース人もいるけれどね。

 とまぁ、こんな感じだからもちろん、死者が多い。冥界の忙しさは察するにあまりある。

 さて、私の暇つぶしの話だったね。

 それはね、人間の死に際を覗くこと。もう少し分かりやすく言おうか。

 ほら、人間ってさ、死を間際にするとこれまでの記憶をざざーっと漁り出すだろう? 走馬燈っていうのかな。それを、私も一緒に覗かせてもらうんだ。

 これがなかなか面白くってね。

 胸を躍らせながら、沈み始めた人間共の声に耳を傾ける。

 今日は私を満足させる人間はいるだろうか。戯れに遊んでみるのもいいな。

 どういうことかって? 

 それはこれからのお楽しみさ。

 さぁ、はじまり、はじまり。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ