4 vs竜
「石の雨!石の弾丸!」
距離をとりながら空を飛ぶ竜に魔法を放つ。
攻撃は全て命中し、竜がこちらを忌々しそうに睨んでくる。
(あれだけ動かれていてもしっかりと攻撃は当てれている!)
〈リュミーナの宝玉〉を嵌め込んだ杖のある状態ならば自分の課題であった魔法のコントロール精度がしっかりと克服されている。
杖を使っての初めての実戦が竜であるのは想定外ではあったが、しっかりと課題をクリアしているのなら問題はない。
しかし、私の魔力の質が高いとはいえ、初級魔法では当たってはいるが大したダメージにはなっていない。なら!
「大岩よ、加速せよ!大岩の大砲!」
巨大な岩を作り出し、魔力の操作で回転させ初級魔法以上の速度で相手に打ち出す中級魔法。
魔法は命中し、竜が私の真上から落ちてくる。
慌ててその場から離れて急いで距離をとる。
相手は竜。通常の魔物より遥かに強力な存在で
自分だけでは非常に荷が重い戦いになる。
前衛がいれば話は多少変わったかもしれないが、今の自分に普段は共に戦う仲間はいない。
竜の体当たりでも喰らえば即死だ。
それだけではない。魔法使いは竜の代表的な攻撃である竜の息吹を警戒、いつでも避けられる位置から自身の攻撃の届く距離を見極めて魔法を打ち込み続けることが大切だ以前ガイス達から聞いた竜と戦う時に意識することを思い出す
これは後衛の鉄則らしいが、今だけはそうも言っていられない。こちらの攻撃がギリギリ届く範囲には常にいなくてはならない。
目の前の竜の竜の息吹がどの程度の距離届くかはわからないが大体20〜30m離れてた上で、いつでも避けれるように身体を魔法で強化しておく。
「大地よ、鋭く、切り裂け!大地の剣!」
地脈に流れる魔力を利用して創り出した剣を竜の首へ落とす。
竜は強靭な鱗を持つため、鱗の部分はダメージは与えるのは難しい。
しかし、首周りは鱗が少なく、攻撃が通りやすいので、早く倒すなら首を狙うといいとスランサから言われたのを覚えている。それに習い、首を狙う。
しかし竜は素早く避けてこちらに反撃して突進してくる。
「ぐ!?」
避けたはいいが竜が通り抜けた風圧で吹き飛ばされた。背中が打ち付けられ、全身に鈍い痛みを感じたが、追撃に備えてすぐに立ち上がる。
走りながら一度情報を整理する。
私の使える魔法は土系統の魔法と操作系の魔法、それと回復魔法。
土系統魔法と操作系魔法は中級までなら使用できる。
回復魔法は血を止める程度はできるが、体の損傷を完璧に治すのは難しい。なので攻撃は基本避けなくてはならない。
この手札だけで竜を屠らなければならない。
改めて、竜を相手にするには心許ない実力だ。
普段の私なら一人では絶対に倒せないだろう。
しかし、マルスとスランサの攻撃のおかげか、竜は左目を失い、翼の鱗もかなり剥がれていているので、今なら機動力を奪うために翼も狙える。
こちらにも勝機は十分にある。
(やってみせる...二人の仇は必ず!)
杖をもう一度強く握る。
「抑え、囲い、閉じて、封じよ。巨石の檻!」
岩の牢で敵を封じ込める中級魔法、これで竜の動きを抑えている間に竜の首を断つ!
「大地よ、鋭く、切り...」
首目がけて魔法を飛ばすために詠唱を始めたが
檻は竜の体当たりで破壊され、素早くこちらに向かってきた。
「そんな!?」
中級魔法の檻を無理矢理壊して出てきた!
詠唱を中断し、攻撃を避ける
(無理矢理檻を壊された!なら次は檻を壊される前に中で動きを止めてから仕留める!)
だが、黒竜は私に"次"を与えるつもりはなかったようだ。
竜の口が大きく膨らみ、魔力が一点に集まってるのを感じる。
「...!竜の息吹!」
敵がどのくらいの距離までブレスを飛ばせるかは不明なため、できる限り距離をとり魔法で障壁を作り出す。
その距離約60m
「大地の盾!」
盾を何枚も作りだしブレスを防ごうとする。
『ガァァァァ!!!!!!』
黒い炎が放たれる。
炎の息吹は一瞬で何枚もの壁を粉砕し、私目がけて迫ってくる。
壁が威力を減らしてくれたのと距離をとっていたおかげで炎は私の左腕を掠った程度で済んだ。
しかし、
「……っ、……あ、……あがっ。……ああああああああっ!?!?」
(痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い!!!!)
あまりのダメージでその場に崩れ落ちる。
喉の奥を掻き切るような悲鳴が、噴き出す熱に混じって溢れ出した。
そして、動きが止まった私を竜は見逃さない。
巨大な尻尾による攻撃が私の体を捉えようとして...
「うっ!?!?」
尻尾が当たる直前に近くの建物の瓦礫を魔法で操り自分に当ててどうにか直撃を避ける。
だが、かなりの力で、自分自身を吹っ飛ばしたため先ほど竜の風圧で飛ばされた時以上のダメージを負う。
「回復!!」
回復魔法で体を癒す。
「ハァ、……ッ、……ハァ、……ッ。あの黒い炎、
掠っただけでこのダメージ...。まともに受ければ即死ね...」
あの黒い炎の特性なのだろうか?
今までの受けてきた攻撃の中で一番の痛みと熱さが襲ってきた。
腕だけでこれならば、全身に当たれば間違いなく魔法は使えず、焼け死ぬだろう。
先ほどの攻撃から、ブレスの射程は推定60m以上。
私の魔法の射程距離は精々50mが限界。
相手は空を飛ぶことができ、次の炎の息吹は空中を移動しながら撃ってくるかもしれない。
こちらの攻撃は確実に当てなければならず、竜からの攻撃は掠っただけでも当たる場所によっては即死。
状況はこちらが圧倒的に不利。
それでも竜を倒すために次の一手を考える
『「....」』
竜と目が合う。
先ほどのように突っ込んでこない。
ゆっくりとこちらに近づいてきた。
そして...
翼を広げて上空に飛翔した。
竜の高度は地上から約80mといったとこだろうか。
先ほどより遠い距離からもう一度あの黒い炎を放とうとする。
私の攻撃魔法では届かない、あとは一方的に炎に焼かれて勝負は終わるだろう。
だが、
「冒険者は常に自分の力と経験と目の前にあるものを使って勝つもの」
かつて、仲間たちに教わったことを口にする。
炎を放とうとする竜の目ををよく見て
「私達の勝ちだ」
そう告げて杖を空に向けて魔法を唱える
「物体操作!!」
魔法の対象は竜ではなく、竜の左目に刺さっていたスランサの剣。
攻撃魔法の射程は届かないが、操作魔法なら届く!
剣を操ることで竜の左目から抜き、右目を切り付ける!
『グァ!?』
突然の攻撃。下にいる私からの魔法攻撃ではなく、自らの目に刺さった剣による攻撃。
攻撃態勢に入っていたせいか、竜は剣を避けれず、その一撃は右目に直撃した。
私を終わらせる黒い炎の息吹は放たれることなく、竜は両目を失ったからか、その場を離れようとさらに上空へ逃げようとする。
「逃がさない!」
操作しているスランサの剣に私の魔力をさらに与えて、翼に空いた穴から剣で切り裂く!
マルスの弓の攻撃で開けた穴の部分から何度も何度も切りつけることで翼を切り裂き竜を空から地面に堕とす。
「抑え、囲い、閉じて、封じよ。巨石の檻!」
竜は両目が既にないため、自らが閉じ込められていることに気づいていない。
檻への魔力を強め、先ほどの檻よりも頑丈にしてから、魔法を発動する。
「終わりだ」
大地の剣を竜の首目がけて放ち、その首を切り落とす。
私一人では勝てなかった。
私の前にスランサとマルスが竜に大きなダメージを与えてくれたからこその勝利だった。
こうして、私の初めての竜退治は終わった。




