表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契約の大剣  作者: ハま松
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

3 黒竜


「さて、ハルファスに戻ろう」


昨日は杖を受け取り、食事をした後適当にレスランの中を回ってから宿で一夜を過ごした。


昨日は食い逃げ犯になりかけたことを除けば満足した一日になった。


デザートをつけたせいで代金が足りなくなり急いでギルドに素材を換金に向かうというハメになった。


預けていた馬を取りに行きレスランを出る。


「戻ったら杖を使った実戦だな」


適当にギルドの依頼を受ければいい。

今から戻れば昼過ぎにはハルファスに到着するので

魔法の試し撃ちの時間は十分にある。

仲間は嫌がるかもしれないが無理矢理連れていこう。そろそろパーティーの貯金が酒代と賭博で消えているかもしれない。ここらで働かせて資金を稼いだほうがいいだろう。


ーーーーーーー

ーーーーーーー


レスランを出発してから数時間たち、そろそろハルファスが見えてくる。

たった一日とはいえ仲間と共にいないのは随分と久しぶりな気がした。

普段はパーティーの誰かとは話していたので丸一日一人になる機会なんてそれこそ冒険者になりたての時期くらいだった。


当時は全てを一人でなんとかしようとした結果、いろんな失敗をして、いろんな目にあった。

今よりも使える魔法も少なく、魔物の縄張りの特徴すら知らなかったため、突然襲われたときは何度も死にかけた。


しかし、「悪酒」に加入し、多くの学びを得て、迷惑をかけながらも成長して今の自分があるのは仲間である彼らがいたからこそだ。


だからこそ、杖を手にして少しはまともになった自分を早く見せてあげたい。

そんなことを考えいるとハルファスが見えてきた。


「...え?」


しかし、私の目に映っていたのは信じられない光景だった。


黒い竜が飛んでいた。

ハルファスの上空にその魔物はいた。


初めて見るソレはあまりにも巨大で、人目見ただけで"今の自分では絶対に勝てない"と理解させられた。


それほどの力、それほどの恐怖を一瞬にして刻まれた。



『グォォォォォォ!!』


「っ!?」


竜が鳴いた

あまりの咆哮(ハウル)大きさに馬が暴れて振り落とさた。

立ちあがろうとしたが、足に力が入らない。


私はアレを見ただけで"死"を感じた。


本来王国にはいないはずの竜。

昨日のことを思い出す。冒険者の男達がしていた噂。

あれが真実だったとでもいうのか?

だとしたら何故今まであんな怪物の目撃情報がなかったのか。


そう思いながら再び竜を見る。

よく見ればソレは遠目からでもわかるほどに大きな角が頭についていた。

竜の特徴として角があるなんて話はガイスから聞いたことがない。


「逃げないと...」


「勝てない相手からは全力で逃げろ」

かつてガイス達から教わった通り、私ではアレには勝てない。戦おうなんて思いもしないほどに私の心は折れている。

なんとか立ちあがり必死にハルファスから逃げようとする。


「でも...」


あの街にはまだ仲間が生きているかもしれない。

自分ではあの竜と戦うには役に立たないかもしれない。しかし、怪我を負った仲間を魔法で癒すことならできる。私は弱いが私の仲間はみんな強い。

仲間が最後まで立っているために私はできることをしなくてはならない。それが"仲間"というものなのだ。


「ガイス!スランサ!マルス!」


仲間がハルファスにいるのだ。彼らのためにも、自分のためにも私はハルファスに向かわなければならない。


強化(ブースト)!」


馬は逃げてしまったため、自分自身の肉体に強化魔法を掛けて全速力で走る。


もう直ぐでハルファス入り口に着くといったところで竜が北の方に飛んでいった。


「逃げた!?」


都市内の状況が不明なため何故竜が北に飛んでいったのかはわからないが、もし逃げたのだとしたら中にいる冒険者達から逃げたのかもしれない。


あるいは、全てが終わったので用は無いとばかりに飛び去ったのか。

いや、マルスの魔法は探知だけでなく隠蔽にも使用できる便利なものだ。

ガイスとスランサもそのことを知っているので

都市の何処かに逃げているかもしれない。


そんな都合のいい考えだけを希望として走り続ける。

どちらにせよあの竜と戦わずに済んだのは幸運だ。

これで仲間を探すことだけに注力できる。


「!?」


都市に入り目に映ったものは衝撃的なものだった。

惨劇。そう表現する以外の言葉が見つからない。

都市の至る所が破壊されていて、黒色の炎が街を燃やしている。

一昨日までいた都市と別の場所に来てしまったのではないかと錯覚する程の破壊が起きていた。

先ほどの竜が降り立ったような跡があり、巨大なクレーターができている。


血だらけで倒れている人や、人だったものが燃えていた。


「うっ」


死体の多さや人間の燃えている匂いに吐き気がする。

どうして私が来た時に人を見なかったのか、

都市から悲鳴すら聞こえないのは何故か?

もう誰も生きている人間がいないからなのではないか?

それがたとえ、私の仲間であっても...


「いや!そんなことはない!みんなは生きている!!」


見ていないものを確定させ落ち込んではいけない。

きっとどこかで息を潜めているだけだ。

そう考えて再び都市中を走り回る。


だが、目の前の光景はそんな希望を打ち砕いた。


「そんな...スランサ、マルス...」


体の半分より下がないスランサと胸に大きな穴の空いたマルスが倒れていた。


「あ……、う、ああああああああぁ!!!」


回復魔法を行使するが彼らの息は吹き返さない。

大切な仲間が死んでいた。

いつも私に抱きついてきたスランサの温もりも、

陽気なマルスの声ももう二度聞くことはできない


「どうして、どうして、こんなっ」


こんなことになっているのか。

あの黒竜がマルスとスランサを殺したのだろうか。

なぜ自分の魔法では二人を蘇らせることができないのか。

色々な思いがあったが、もう一人仲間が見当たらないことにも気づく。


「ガイスっ、ガイスは!?」


周囲にガイスは見当たらない。いるかもしれないガイス名を必死に呼びかける


「ガイス!!どこにいるの!?ガイス!!!」


必死に近くを走りながら呼びかけるが反応はない。


「どこだ!!ガイ...」


ガイスと呼びかけようとした時、都市の中心から巨大な声が聞こえてきた


『ガァァァァ!!!!!』


驚いて音の発生源に目を向けるとそこには...


「竜!?」


街の中心付近に黒い竜が一体飛んでいた。先ほど北に飛んでいった竜よりは小さい個体だが、それでも50mほどの大きさはあった。


瞬間、中心にいた竜がこちら目がけて突っ込んできた。


「なっ!?」


都市の中心から今いる位置はまだ距離があるのにっ、それなのに視界に入った私を目指して!?


慌てて回避する。

後ろにあった形の残っていた建物は竜の突進により崩れさった。


竜をよく見るとその竜の体には大量の傷があり、翼には穴がいくつも空いていた。そして、竜の左目は潰されており、その目の部分にはよく知っている武器が刺さっていた


「スランサの剣...」


彼女が使う双剣の一本が竜の目を潰したのだ。なら翼の穴はマルスの弓によるものだろう

しかし、スランサとマルスは目の前の竜と戦い、殺された。


「お前が!!!!」


全身の魔力を高める。

目の前に仲間の仇がいる。

これを生かしておくなど考えられない。


本来ならば一人では決して挑まないであろう存在。

だが...


「お前を、倒す!!!!」


失った仲間のために、私は、竜を屠ることを決意する。

杖を強く握りしめ、目の前の敵を睨みつける。


そうして私の初めての竜との戦いが始まった。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ