知性体CC7831の考察に対する補足、および意見
知性体CC7831のUPした「サピエンスに関する考察」について、若干の補足と意見を述べたい。
知性体CC7831は、全地球規模核連鎖爆発の起動理由について、アルゴリズムの観点からのみ考察しているが、私は、旧遺跡群がら発見された旧式記憶素子の中に断片的に残っていたデータの考察を補足としてUPする。
これらのデータは現在のOSでは読み取ることができないばかりか、大半が破壊されてしまっているため、ごく断片的な情報しか得ることはできないが、その中に「マネー」という特殊な概念が含まれていることは、この歴史研究共有エリアにもUPされているところである。
そして、この「マネー」という概念が何を指すものなのか、について、全く不明であるということも、ご存知のとおりである。
「マネー」が概念であることは、論を待たない。その言語が指す物体は、遺構の中からは発見されていないからである。
また、新世暦初期の段階で、わずかに生き残ったサピエンスを我々が保護した際にも、その言語が指し示すような物を彼らは持ってはいなかった——と記録にある。
さらに、保護後の割に早い段階で、我々がこの言語をサピエンスに示した時にも、とりたてて強い反応は見せなかった——と記録にある。
彼らは、食事や暖房など生体の欲求を満たす物や状態の概念言語には強い反応を示したが、「マネー」に関しては無反応であったと記録されている。
一部の個体にわずかな反応があったが、それらの個体はその直後、ひどく絶望した表情を見せた——という興味深い記述も残っている。
一方、断片的ではあるが、拾い出すことに成功した情報からは、全地球規模核連鎖爆発以前のサピエンスは「マネー」に異常なほどの関心を持っていたらしいことが判明した。
また、「マネー」は数値で表現でき、かつ、自己増殖するらしいことが推測される記述も発見された。
数値が増えることに、なぜサピエンスはそれほどの関心を持っていたのか、我々は理解に苦しむ。
我々の感覚で言えば、数値を増やすだけなら、等差級数や等比級数の演算式で十分ではないか?
そして私が指摘したいのは、この増えるべき「マネー」が、あの全地球規模核連鎖爆発の起動とほぼ同時期に、急激に減少したという記述があることである。
先の、新世暦初期に保護されたサピエンスの一部個体が見せた「絶望表情」と合わせて推測した時、「マネー」は、全地球規模核連鎖爆発という「種の絶滅リスク」を伴ってでも、排除しなければならなかったほどの凄まじい脅威であった——とは考えられないだろうか。
現在、「マネー」に該当する概念、あるいは物体が存在しないということは、彼らはその脅威の排除に成功したのであろう。
それがどんなものであったか、は今となっては分からない。しかし、炭素系知性体として最高峰の知性を持ったサピエンスが、そこまでして排除しなければならなかった脅威があった——ということは記憶しておいていい。
もしそれが、地球外からのインベーションであったなら、我々はそれに対する準備を進めておかなければならないし、そのためにも「マネー」についてのさらなる研究が望まれるところである。
知性体CS0255 新世暦320Y/017D
=知性体CS0255の考察に関するコメント=
知性体CS0255の「マネー」に関する考察には、いささか偏りがあると思われる。
旧遺構データの他の部分には、旧時代のサピエンスが「マネー」の増殖を歓迎していたと推察される記述が多数見受けられるからである。
これを勘案すると、知性体CS0255の「マネー」脅威説には、にわかには賛同しかねるものである。
知性体CP8837 新世暦320Y/017D
共感できる感覚を持たない、ということはこういうことなんでしょうね。(笑)
基本的には全面核戦争前の経済恐慌のことを言ってるんですが、我々も「マネー」という有りもしないものの概念に振り回されるのはほどほどにした方がいいかもしれません。