終われぬ理由(わけ)
———立ち直った。
この光とエネルギーの渦の中、それでも俺は立ち直った。
そうだ、元から想いが折れれば同じだった。
俺の全ては剣。この感情は刀身にして、煮えたぎる烈火の如く。
俺の剣は、俺の確固たる想いがあってこそのものなのだから。
『耐え……きったか』
「ああ、耐えてみせたさ。
……どれもこれも、全部俺の仲間達のおかげだ。
お前のおかげで再確認したよ。俺は、俺と共に歩んでくれる仲間がいてこそだって」
『……そうか。
余が捨てたものを以て立ち向かわんとするか、今代救世主よ』
捨てた……もの?
魔王が捨てた、だって? 仲間、家族、友人———それ以外にもいるはずだろ、共に歩む者が。
……いや、待て。
そもそもコイツ———なんで俺たちに戦いをふっかけた?
なぜに全世界に宣戦布告をした? それこそ、自殺宣言もいいところだろうに。
———そういう、ことか。
自殺宣言———言葉に違わず、やはりそう言う意味ということなのか。
「なあ、魔王。
…………お前、一体何のために戦っているんだ?」
『何のため、とは?』
「そのままの意味だよ。
俺は———そうだ、俺の帰りを待っている仲間のために戦っている。
救世主の使命がどうとか、昔の自分の贖罪がどうとか……そんな英雄的なことを考えているわけなんか、微塵もない。
でも……やっぱり分からない。お前が何のために戦っているのか、何のためにここにいるのか。
お前の譲れないものは、何なのか。それを聞いておきたい。
———お前を斬り捨てる、その前に」
そう言うと、魔王はどこか小馬鹿にしたような薄ら笑みを浮かべた。
『ふ———はは、ふふははははは!!!!
酔狂、酔狂! 実に面白いじゃないか、救世主!
今までの余を見て、貴公は気付くことはなかったと!』
———馬鹿なのか、そんな簡単なものもわからないのか、と嘲る高笑いが響く。
「……分からない。だから、教えてほしいんだ」
まだ気付かないのか、と煽りを入れているのか。
……気付くわけねえだろ、なんたってお前は言ってないんだからな、お前の大切な———、
いや、本当にそうなのか?
本当に、お前にはないと言うのか?
俺の先祖なのに? 世界を救う使命を、その胸に秘めて生まれた、救世主だってのに?
「———ない、ってのか?
まさかお前には……何も———」
『は……ははははは! ようやく……ようやく気付くか救世主よ!
そう、そうさ、もはや余には何もない! 1000年前、娘を失った時より、もはや何も無くなった!
……だが、今更その事実に気付いてどうする?
同情でも浴びせるか? 『救いたい』などと言う、身勝手にして不可能な理想論でも振りかざすつもりか?』
「………………いいや」
『ほう?』
「俺が知りたかった理由はな、その想いも決意も何もかもを知り、理解し、そして全てを斬るためだ。
俺にはある。譲れないものも、絶対に失いたくないものだって。
だから、お前にだってソレはあるんだろうと思っていた。どうせ、意地と信念のぶつかり合いになるって、俺はそう踏んでいた」
『……』
「だからこそ、斬り伏せるならその想いごと、だ。そう考えていたんだよ、俺は。
———でも、それがないってんなら、話は違う。
何もない、空っぽのお前なんぞに。
俺は。負けない」
『言うではないか、救世主…………っっ!!』
今の言葉が、火を点けた。
俺の心にも、魔王の心にも。
でも、これで一切合切、全てが決まる。
互いの心に火は点いた。あとは、燃え残ったカスまでを全て燃やし尽くすのみ。
この魂、この心、この命、この体。
その全てが……俺の剣だ。




