開闢の槍、創世の美琴
ここで終われない。こんな早く終わるわけにはいかない。
何より、コイツと戦ってると———ああ、楽しい!
心の底から、何かが湧き上がってくるように楽しい!
「ふっ……!」
来るのはわかっている、来い、来い、いつでも来い!
その神域の光———断ち切るまでぇっ!
「神威ッ!」
左より迫り来る閃光。
真正面から受け止め、そしてそのエネルギーを斬るために、最善の位置、最善の姿勢を維持する。
———来る。機械的に振られた聖槍、その輝きが迫る。
両断、断ち切るのは最初の一瞬でいい。振られ、俺の真正面にエネルギーが集中する最初の一瞬。その一瞬を断ち切る、それのみ。
『んぐっ……!』
「はああああああああっ!!!!」
あまりにも膨大すぎる魔力のエネルギー。
しかし、それに対抗するこっちだって———神の核が込められた概念武装! 不足は…………ない!
一瞬にして、その閃光の刻は過ぎ去った。
何物もその中では、盾の役割は果たさなかったが、しかし———その閃光を、断ち切る刃があった。
故に、俺は死ななかった。
「そりゃああああああっ!!!!」
———切り抜けた。光のピークは終わり、後はその残り滓が来る。
……故に、それを糧に加速する。
刀を流し、振りかぶった姿勢のまま落下する。……そこだ、魔王……!
「もらった———!」
……しかし、振り下ろされた神速は。
「なっ……!」
あまりにも余裕に持ってこられた聖槍によって、その斬り筋が塞がれていた。
『………………悪くない相手だ。
余も———本気を出してよいか?』
「本気、だって?……それは違えな、俺も本気は……出してないさ」
来る。
ヤツの本気、ソレが何なのか。
『創世天地・———』
その槍の輝きが、より一層根強くなる。
その瞬間、俺は今までに察したことのない悪寒を感じるのだった。
『開闢神話……!』
「っっっ……ぐぐ、ああああああああっ!!!!」
———待て。待て、待てよ。今何が起きた? 今何が、俺の体を襲った?
———空?
「はあ…………っ?!」
俺はさっきまで……半壊しかけた魔王城にいたはずで……いやでも、何で今は……空に?
「ありゃ……何だ、一体……っ?!」
直後魔王城より噴き上がったのは、あまりに大きな光の柱。
それは直線を描き天まで上り詰め、そしてそこで消失する。
しかし……アレが本気?
俺はあんなヤツと張り合わなければならないのか……??
『ガイア・コンソール、それは我が至高の概念武装にして、我が神技の直接的なパスに等しい。
創世天地/開闢神話———第一神話、それこそこの槍の正体。……しかして第二神話、ソレは———、』
瞬間、光の渦は収斂し、たった一つの武装に濃縮される。
『そう、それは異界より。
ヒトの生きた証、ヒトの生きた印。それらの究極蒐集』
高密圧度の魔力の塊。しかしてその塊が為したものは。
『源、偉伝英雄模倣。
創世天地/開闢神話、異界認識情報注入。性質変化。《《剛弓》》———幻想再現。
———鎮西八郎列伝・装填』
「ゆっ……弓……っ?!」
魔王———と思しき人影の周りに開かれた『門』の如き光の渦は、その全てがまたもや魔王に収束し。
『無銘・魔弓五人張』
———まずい。そう感じた時には、既に魔王城辺りの光は全てなくなっていた。
そう、ないのだ。あの一帯だけ、光の全てが消失し、もはや何も見えなくなっていた。
しかし、声は響く。ソレ故に、そこにいるのは確かだった。
そして。
光が放たれたのを確認したのは、ソレが放たれてからおよそ1秒後。
来る。そう認識した瞬間、剛弓より放たれた矢は到達する。
狙いは俺の心臓、一直線。しかし当たればどこであろうと身体が弾け飛ぶ。そのぐらいの威力、それほどの剛弓。
一瞬にて、全てが決まる。俺の判断、俺の用いた全てが、全てを左右する。
まずは状況。飛び上がっている。回避は不可能。極ノ項を用いても、その事実は微塵たりとも変わらない。
第一、今から何をしようと当たる。確実に命中する。風速による偏差、その全てをも完全に計算し、ヤツは俺の心腑を狙って放ってきた。
ならば、迎撃のみ。
どこに来るのかは分かっている。どうやっても、コレは心臓に命中する。
一瞬のはずなのに、その時間がえらく遅く感じる。
オールマイティは使えない。コレをどう使おうと、その瞬間にヤツは何らかの『対策』を取ってくる。きっとこの神技の何もかもが、ヤツにとっては見透かされているのだ。
ならば。やはり、信じるのは己が技量と刀のみ———!
斬り込む体制に持っていくのは、その矢が飛んでくるスピード以上に一瞬だった。
だがしかしどうあろうと心臓は貫かれる、貫かれなくとも当たれば身体が爆発四散。そんなことあってたまるか。
「極———」
研ぎ澄ませ、限界を。0.000000000000001秒の時間を感じ取れ。
視界は、感覚は、白の世界へと移り行く。
何もかもが白に包まれるその中で、俺はその矢の真髄を見る。
「———とっ」
言いかけた瞬間。
俺の体は、腕は、反射的に———、
空中にてその矢を、最大の力を持って———両断していた。
「———た」
両断、なんかじゃない。
激突だ。衝突だ。最大限の力を以て放たれた剛矢を、同じく最大限の刀にて粉砕した。つまり激突。
力の余波は凄まじく、ソレを弾いただけで、俺の体は吹き飛んでしまう。
———ああ、今どこに向かっているのか分からない。どこまで吹き飛んでいくんだろう、俺は。
……待て。いや、待て。来る。
まだ———来るっ!




