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もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜  作者: 月影弧夜見
第10章:激震! 勇魔最終戦争!
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繋いだ想い

 目を開けると、朝の日差しのように眩しい光が。

 しかし自然と、痛みはなく、まるで天国にいるような気持ちだった。

 周りには、やっぱり仲間がいて。

 これが天国か、と錯覚しそうになった。だが。



「……よくやったな、セン。お前の勇気がたった今、世界を救った。


 あの予言は間違ってた。なぜなら、世界を救う者の1人にお前を入れてなかったからな」




 暖かい声が、聞こえた。

 ……そうか、なるほど、僕は、やったんだ。

 ほんとのほんとに、せかいをすくったんだ。


 ちょっと、ぼんやりしてきているけど。

 ……まあ、すこしくらい、やすんだって、いいよ、ね。




********


「大丈夫だ、セン。お前の守り通した世界は、俺が救ってみせる」


 運命は、今、その概念通りに逆転した。

 本来、ここで終わるはずだった。

 全てが、今まで積み重ねてきた数多の現実が、ここで潰えるはずだった。


 しかし、アイツ(セン)は運命を変えた。

 自らの死をも厭わない覚悟で、変えてみせたんだ。


「このままだと、救世主としての名が泣くよな。


 鍛冶屋のじっちゃん、アーマーは完成してるんだろ?


 ()の覚悟は済んでるから、早く……俺にくれ。お前の孫の、センの守り通した未来が消える前にな」



「久しぶりじゃな、あの時の勇者よ。まさかお主があの村を救い、世界を救う事になるやもしれぬとはな……


 まあ頑張ってくれ、わしは応援しとるぞ」


「ああ、行ってくる。俺が、世界を救ってみせるさ」


「その概念防護は、この最終決戦用に調整した特別仕様じゃ。ここで勝たなければ、未来はないぞ」


 アーマーを胸に装着する。

 概念防護……とか言ったが、無理なく俺の胸にフィットしてくれたのはそのおかげだろうか。


「やってみせるさ、この俺が」



 ———やることは、ただ一つ。





「……アレン。1つだけ、言わせてくれ」


 聞こえてきたのはイデアの声。

 そうだったな、センを最後まで信じ、応援していたのは、イデア……兄さんだった。


 兄さんにしては……意外だが。



「センは……センは、やりきった。ヤツは勝ってみせたんだ。


 ……アレン。貴様も、勝てよ……!」


 ———その真っ直ぐにこちらを見つめる目は、とても今までの兄さんとは別物と言わざるを得ないものだった。


 コイツ———いや、この人が、ここまで俺に託すようなことを……


「…………兄さんは、兄さんは戦わない……のか?」


「———フン……! 貴様と一緒に戦う、など絶対にごめんだ」


「この前は普通に一緒に戦ってたくせにさぁ……どうなんだ」




「フン! 貴様が俺以外に殺されるのが気に食わんだけだ!


 さっさと行け、センの努力が水の泡になる前にな……!


 それに、あの魔王とは他でもない、救世主(セイバー)の———『鍵』の継承者たるお前が決着をつけなきゃならない。だからこそ———」


「…………ああ、勝ってみせるさ」







 ———魔力翼、起動。

 俺の体内の魔力器官に残っている魔力を使用し、その背に緑の魔力の翼が顕現する。


 もはや浮遊法を使わなくともよい。そんなものを使わなくとも、遥かに効率の良いものがここにある。



「……すごい、白、神みたい……!」


 俺の姿を見たサナはそう口走った。

 ———神、か……


「行ってくるよ、サナ。……待っててくれ、俺の帰りを」


「……うん、行ってらっしゃい。

 待ってる……からね、帰ってくるの……!」



 その笑顔———久しぶりに見た気がする。

 それなのか、俺が護りたいって、そう思っていたのは。







「……………来るが良い、白……とやらよ」


 今の声は———人界王?

 来るが良い……つまりは、その下に跪け、と。




 まあ、体裁だ。ここで何もせず、後からレイにどやされたらたまったもんじゃない。

 世界を本当に救えたのなら———その方がいいだろ。



「この身、この定め、王のものとして預けたい。今の俺は、王の忠実なる騎士です。どうか、ご命令を、人界王」


 何とも皮肉と言うか、2年前王に楯突いた勇者が、今となっては王に完全なる忠誠を誓っている、という状況。


「……ならば、人界王、ユダレイ・タッカーダル四世が命じる。魔王を、その手で討伐せよ。繰り返す、魔王をその手で討伐せよ」



 そう、来たか。

 いや、それはそうだよな。今やたった一縷の希望になっているんだから、この俺が。


「仰せの———ままに」





********



 白は飛び立った。竜か神か、神聖なる存在かの如く、神速を以て飛び立った。

 それを眺め、羨んでいたイデアは。


「…………アレンは、行ったか。……それにしてもムカつく野郎だ、こんな時まで共闘を選びやがって……!」


 イデアはその右拳を、気に食わなそうに力強く握りしめる。


「…………だが、……セン。お前を見てると顕著に感じてくるもんだぜ。……一緒に何かを成し遂げることの、重要さがな……!


 アレンは最初から分かっていやがったんだ、それが最適解だと、2人で戦うのが一番だと。


 ……俺がくだらないものだと一蹴したものだが、そこには確かな力があった、想いがあった。それが積み重なって俺たちの現在(イマ)があった……!


 貴様が強かったのも、きっとそれだ。貴様には、守るものがあった、大切な人がいた。


 だからこそ、それを失わないために、ひたすら強くなって、必死に策を模索して、一緒に戦う。


 それが一番だと、貴様は誰よりも分かっていた……俺はそこから、一緒に戦うことの大切さを、知ったんだ……! だからこそ、今は貴様にこの言葉を送ろう……









 ……勝てよ、アレン。お前はこの世の誰よりも、強い……!」





 ただの独り言———そのはずであったが、イデアの心境にも、確実に変化は訪れた。


*◇*◇*◇*◇



 弾丸の如く、空を駆け巡る。

 風が頬を撫で、いずれ切り裂かれそうなほどに激しく強くなる。


 ……いや、切り裂かれちゃマズいか。



「目指すは魔王城……待ってろよ魔王……!」


 瞬間。


 ずっと横、数キロ離れた先にて浮かんでいたのは、にあまりにも巨大すぎる数個もの鉄の塊。



「クラッシャー……じゃない、じゃなんだアレ……まさかあの時の……あの村にいた鉄の球体……なのか……?」


 目的地は……この混乱を引き起こしている魔王城だろうか、その鉄の物体は移動していた。が、そんな事は気にもとめない。


 アレが魔王軍と関係のあるわけがない。魔王軍はあんなもの使わない。とならば———いや、本当に関係ないだろう。


 それよりも。……そうだ、それよりも行かなければならないところがあるはずなんだ、俺には。




 早く、早く。

 どこまでも、早く。

 無駄にはしない。できないし、させない。


「……魔力反応……雑兵か、振り切ってみせるさ、こんなところじゃ止まれない……!」


 既に消し飛ばされた地上を見て、それまでの旅の思い出が奥底より蘇る。

 それと同時に決意は固まった。


 日は空の向こうへと沈む。

 ……がしかし、太陽の如く輝くこの翼が、この地上を明るく照らす———!





「アレが……魔王城……」


 黒のレンガで構成されたそれは、いかにもここが本拠地ですよ、と言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。


 ……周囲には毒沼。

 空を飛んできてよかったなと、改めて思う。



 ……不思議だった、なぜか魔力障壁がない。

 いくら魔族の本拠地、魔界の奥底、大陸最西端に位置するとはいえ、そんなはずはないだろう。


 あの魔槍、ガイア・コンソールも撃ち尽くした……はずだ、魔王城にはほとんど魔力反応がない。



 いや、城内には残存魔力もあるのだが。

 ……なのになぜ、魔王城そのものに魔力障壁が貼っていない……?




 世界の終わりには似合わない程、不自然に静か。

 明らかに何かがおかしい、と思いながらも。


 魔力翼を前面に押し出し、城内へと突撃する。

 瓦礫を魔力翼で突き破り、落ちゆくレンガとともに落下すると、眼前に出てきたのは、王城と同じような大広間。




 松明は置いてはあるが、点きはせず。

 崩れ去ったレンガに反応すら示さず。

 ただ、そこには———玉座と思しき場所には、男がいた。



 そこに、ただ一人の———王がいたのだ。

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