激震オリュンポス
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一方その頃。
浮かび上がり、空島となった王都唯一の鍛冶屋では、ある作業が行われていた。
センと、その祖父であるスザクと、王都きっての鍛治職人、クイルによる共同作業。
その作業とは、『アルビオン・プロテクト・アーマー』の概念修復、及び最終決戦用調整であった。
センの祖父であるスザクは、アーマー自体のガワの修復、及び塗装。
クイルとセンはそれぞれ、魔力回路、付与概念修復に明け暮れていた。
純白にして、白銀の鎧は完成しつつあり。『神威』なる白だけの概念武装に合った仕組みはできつつあり。
白にとって、最善の魔力回路建造方式、隠蔽された概念の奥底、隠された概念武装でもある『エクスカリバー』の修復完了も、間近に迫っていた———。
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そしてその頃、トランスフィールド。いくつもの小さな諸国から成り立つ東大陸最悪の戦争地帯。
東大陸中央に眠る、伝説に語り継がれた『ムゲンエナジー』を求めて、数百年戦争続きの地帯だったが、この時は違った。
それは、先に攻めてきた魔王軍の来襲により、その諸国のほとんどが手を結んだ、という点にあった。
事実、白たちがカーネイジと争っている際にも、彼らはすでに力を合わせ魔王軍を撃退していた。
そんな彼らは、人界軍の襲来に驚きはしたが、その中にいる人間を見ればすぐさま打ち解けてくれた。
……『火薬草原』などという最悪の異名が、まるでなかったかのように。
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帝都オリュンポス。
『機神』なる、人とは一線を画した本物の『神』の住まう都にして、東大陸に1つ浮かぶ浮遊神殿要塞。
その地下深くにて———。
「アベルは、動き出したか」
暗い、配線に塗れた部屋にて、男……いや、カミの一柱は呟く。
「アフロディーテ、オリュンポスの高度を上げよ。あの魔槍は、こちらにとっても厄介な物だ」
『しかし……一発目の着弾は免れないかと……』
「構わん。転移術式に失敗し数多く被弾するよりは多少良い。そのまま高度を上げよ」
『承知いたしました』
この出来事には、あろうことか『カミ』すらも騒然としていた。
なぜなら、星を貫く魔槍が、神殿要塞都市山オリュンポスに11基も降り注ぐのだから。
ここをピンポイントに狙った、11基もの星を砕く魔槍。それほどまでに、魔王はこの帝都オリュンポス———および、そこに住まう『カミ』を危険視していたのだ。
しかし例の魔槍、創世天地/開闢神話と言えば、あの、アテナ・スペアを一撃で堕としてみせた魔槍。
どれだけ強固な魔力障壁、神力障壁であろうが、その魔槍の前には同じく無力に等しい。
「我々すら凌駕しつつある術式とは……貴様ほど出鱈目な者が他にも存在するとはな、カイン・セイバーよ」
「今は、死んだダークナイト、でございます、主神よ」
主人———オリュンポスを統べる全知全能とも言える、雷の機神ゼウス。
そのゼウスがここまで秘密を共有するその男の名は、カイン・セイバー。
しかしその偽りの名は…………かの魔王軍幹部、『ダークナイト』であった。
———そう、ヤツは生きていた。どころか、あろうことかオリュンポス側に付いていた。
「捨てたのではなかったか、その名は」
「いいや、昔の名はあまり忘れないものでして、特に、2つ前のあの名は」
「エターナルは順調か」
「……主神よ、今はそれどころではないのでは?」
「そうだな、まずはアベルを殺す事に集中するとしよう」
地が震える地響き。
西の空には、既に地獄の赤模様が広がっていた。
「黄昏時は……終わりを告げる……か」
そして王都にて、白たちは———。
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……トランスフィールドの人たちの受け入れは、順調に進んでいた。
あっちの人たちは『サイドツー』なる妙な人型の大きな機械を連れてきてはいるが、そんなの 俺には関係ない。
「直上に超巨大魔力反応確認、間違いなく、ガイア・コンソールです……! どうか指示を、マスター」
「指示を……つったって、また転移すればいいだけじゃ」
「既知座標に転移するか、ランダム転移のどちらかです。お選びを」
「既知座標で。前の王都の場所へ」
「承諾。座標認識、改竄……」
景色は目まぐるしく変わる。
……消し炭にされてあの世に送られるよりマシだが。
「…………ハッ、衝撃に備えてください、マスター! 転移する数秒前、こちらにも一基落ちていたよ…………うです……!」
窓から覗き見えた外の光景は凄まじいものであった。
墜落したと思われる光の断裂層に吸い込まれてゆく全ての物質。
風と共に、全てが揺られ落ちてゆく。
まるで地上にぽっかり、何もない虚無の穴が空いたかのような凄まじい光景。
魔族のものであるが、まさに神の芸当。
天罰、と言われても差し支えのない威力であった事は当然だろう。
へこみ切った地面より噴き出す赤い液体。
……おそらくマグマ、というやつなのだろうが、まるでこの星自体が血を流しているかのような壮大さだった。
「マスター、私の残存魔力量はもうすぐに尽きます……後はアルビオンアーマーの完成を急ぐのみ……魔王軍の残党にご注意を……」
「あ、ありがとうコック。お前は十分よく戦った。後は俺が……」
「ありがたきお言葉です、マスター。私は少し休ませていただきます」
墜落する飛行都市。
しかし幸いにもその衝撃は少なかったが、場の全てのものに衝撃が走ったのは、次の兄さんの一言だった。
「…………来る。もう1基、あの魔槍が」




