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もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜  作者: 月影弧夜見
第9章:カーネイジ・クライシス・クラッシャー(CCC)
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ザ・オールマイティ/原初の祖

◆◇◆◇◆◇◆◇





 

 ヘンに、落ち着いた気分だ。

 さっきまで、あんなに怒り狂っていた、というのに。


「気に入ってくれたかい? 全知全能(ザ・オールマイティ)は」


 そんな全ての時が静止した世界で動けるのは。

 やはりというか、俺のみだった。

 つまり、コイツは……


「お前は……俺か」


「キミであってキミではない。僕の名前はアダム・セイバー、人類の()であり、()()()()()であり、キミの()()さ」



「俺の中にいた、俺ではない俺———それはお前だったのか、アダムとやら……!」



 新・二千兵戦争。その最中に発生した、俺が俺自身じゃなくなる、あの衝動。


 コックが言及した、俺の中にいる俺ではないナニか。『アダム・セイバー』と名が付けられた、勝手に俺の中に住み着く誰か。


 そう、その全てが、コイツだった。


「じゃあなんだ、お前か……俺の衝動を抑えきれなくしていた、もう一人の俺ってのは……!」


 と、少年(アダム)は顔をしかめる。





「合ってるけど……違うね、衝動は僕の中にもある。僕の、史上初の人間としての欠陥としてね」


「だったらなぜ、それを抑えなかった」


「キミと同じ理由さ。抑えられなかった。


 だからこうしてキミの身体、キミの魂に『()・オールマイティ』を介して、転生しているんだよ。


 ……僕はヒトであって———厳密にはヒトじゃない、()()()()()()()()()()()()()ヒトだからね、こういうことだってできるのさ」



 ———だから、なんなんだよ。


「……俺の、邪魔をするつもりか?」



「そんなことはないけど……まあ、引き留めて悪かったね。


 ところで———どうする? 使うのかい、ザ・オールマイティは。


 時を———魔力・神力の流れを完全に停止させる神魔力領域、ザ・オールマイティ・シャットダウン・オブ・ワールド。


 それが僕の———キミの力だ。


 ただ、使うのなら……もちろん、僕自身の人格は、ある程度露呈することになる。


 そうなった場合キミは、またいつ暴走するか分からないよ?」



『コロセ』『ムサボリツクセ』

 俺の頭を犯す衝動。人の肉への果てなき渇望。


 人を斬ることに、食べることに、殺すことに快感を感じる、あの異常な頭。ソレに、またなってしまうかも、と。



 




「…………それでも、俺は……



 サナを———仲間を傷付けた、アイツが許せねえ……っ!」



 完全に静止し、重力の影響も何も受け付けなくなった身体を揺り起こす。

 既に落下態勢、迫り来るは死の針38本。

 だが、その全てが止まっているのなら。


 動かそうと力を入れ奮発した瞬間、「白の世界」より意識が戻る。

 それと同時に、「アダム」と話すことで落ち着いていた心境も揺らぎ始め、昂り始める。


 ……そりゃあ、そうだろう。


 ()()()()を目の前で殺されて、怒らない者などいないのだから。


 だから、お前は許さない。



◆◇◆◇◆◇◆◇






 5秒経過。

 全てに色が戻り、全てが動き出す。その中で、


「……なぜキサマ……瞬間移動でもしたのか……?」


 たった俺だけの動きが吹き飛んでいた。


「逃がすかぁぁぁぁあっ!」


『メタル・クライシス』によって再度形成されたクラッシャーのその鋼の肉体を、斜めに両断する。


 中のコード……らしきものがパチリと音を立て発光する。


「この……虫ケラが……ああっ!!」


「絶対に、許さないっ!」


 逃げようと後退するクラッシャーの身体を、これでもかとまでに何度も何度も切断する。



 ……しかし。


「無駄なんだ、貴様の攻撃は! 地を這い、ゴミ虫のように無様に散るといい!!」


 またもや飛んでくるは無数の鉄の針。


「もうそれは……見飽きたんだよっ!」


 それら全てを跳び上がり回避した後、超スピードで落下する。





 俺の身体がぶっ壊れてでも、ここで終わらせるしかないんだよっ! 


「背水の陣、全力解放!!」


 視界は白に染まる。

 身体は蒼銀の魔力を身に纏い、より鮮明に光り輝く。

 感覚を研ぎ澄まし、興奮する肉体を抑えつけ———、


 ……だめだ、やっぱり……!


「極ノ項!!」



「さっきからうるさいヤツめ! 気でも狂って叫びたくなったか!」




 やはり、意識を研ぎ澄ましちゃダメだ。

 この、この今の、煮えたぎった感情を武器にして戦う……!


 それが俺の……最適解!


「もらったああああああっ!!!!」


 音速の落下。しかし。




「…………俺の勝ち、だな!」





 すんでのところで回避され、ヤツは既に構えに入っている……

 ならば。


「ふっ!」




「な……何ぃっ?!」


 既に振り下ろされたその刀を、0秒で上まで持ち上げ切り上げる……!



 本来来るはずのない剣筋。

 だがしかし、その「来るはずのない」という意表、虚を突いた打突……!


「き……ふざけやがって……!」


 擦れる断面。

 舞い散る鉄塵。

 それは、刀が確実に命中していたことを示す。




「メタル・クライシス……!」


 瞬間、倒壊した住宅より、鉄の瓦礫が全方位より襲いかかる。




「ザ・オールマイティッ!!」


 一瞬、一瞬だけでも()()()()、僅かにでも有利に動ける時間を作り出す……!


 そうだ、そのはずだ。この力は、アダムって誰かさんが俺にくれた切り札!


 例えアレが俺の衝動で、俺の罪の象徴だとしても……ならば俺はソレと向き合ってみせる!


「ふぐっ…………」


 脳内にモザイクがかかる。俺の、俺のみの意識を塗り替えんと、何かが語りかけてくる。


『コロ———』


「うるっ…………せえ!



 テメェなんざ……そんな衝動になんざ……負けねぇよぉぉぉぉっ!!!!」



 瓦礫を切り分け、全てが、時が止まった世界にて、すぐにヤツを斬り伏せんと跳び上がる。

 ……が、瞬間。


「……なんだと……どうしてそこにいる……!」

 


 神力領域が解ける……反撃の機は相手にある……!



「ゴミ虫風情にぃ、この俺がぁっ!」


 いつの間にやら、クラッシャーはその右腕に纏った鉄塊を俺目がけ薙ぎ払う。

 こちらもそう易々と、薙ぎ払われるわけにはいかないが……!



「……っ……ああっ!!」


 『メタル・クライシス』の影響だろうか、謎の方向より謎の力が加わり、刀が弾け飛ぶ。






「肉弾戦か……上等……!」


「諦めない?!……くだらんぅっ!!」


 左腕に力を込め、食らわせるは全身全霊の拳。

 骨が砕ける激痛。だが、まだ動くと言うのなら気にしない!



「ふ……クソ……カスの分際で……下等生物の分際でええっ!!」


 その苦痛に歪んだ顔はすぐさま戻り、鉄の巨腕が振り下ろされる。





 避けられはしない。

 ここまで近距離であれば、激突は必須……

 ならば……力爆!


「背水の陣、力爆!!」


 今まさに殴りかからんと、後ろに引いた右腕が魔力により肥大化する。


「メタル・クライシスの真価がぁっ……っ?!」


 その拳がぶつかり合った結果、起きたのは完璧なる拮抗状態。


 互いに互いが拳のみに集中し、他の小細工に手を回している余裕はないこの状況において、この拳の力のみが、戦況を左右する決め手となる……!





「ず……あ……ああああっ!!」


 そして、押し切った。

 流れるようにして、拳はヤツの顔面を直撃。

 すぐさまクラッシャーは、転がるようにして吹き飛ばされていった。




「……は、……あっ……」

「最後の、最後の言葉は、言い残すことでもあるか、クラッシャー!」

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