Side-other/白:非情にも。
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放たれた衝撃は全てを揺るがし、魔導大隊の位置する城壁をも砕く。
……その砂塵の中で。
城壁にて傍観を続けていたサナとコックは、「絶対に見たくなかったモノ」を目にしてしまった。
兵は、全て殲滅した。
今の衝撃で、敵味方問わず、誰1人残さず吹き飛ぶ。
……イデアの、そしてレイの安否が心配になるところだが。
バゴリと音を立て瓦解する城壁。
「退避、魔導大隊、退避! 白兵戦、用意!」
不安定になった足場が崩れ落ちる。
「サナ様、あなたは私がお守りいたします」
「ありがとう、コック……ただ、これは一体何……?」
翼を広げたコックに抱き抱えられながら、サナ状況を伺う。
……なぜ、城壁は瓦解した……?
いくらあの爆裂魔法とはいえ、ここに直接打ち込んだわけじゃないはず———、と。
———その答えが、2秒後に明らかとなる。
「会いに来たゼェ、お嬢さん!」
「……コック! 天撃でも何でもいいから追い払って!」
「承知しております……!」
爆煙に辺りが包まれる。しかし、
「……オレの、勝ちだな」
既にその鉄の右腕を振り上げた、クラッシャーがそこにいた。
その巨腕が振り下ろされ、コックが形成していた魔力障壁のドームごと、サナは地面に叩きつけれる。
「っ!…………ごめんコック、ありがと……もういいわよ、魔力障壁は。
その代わり、コックも一緒に戦って……!」
「もちろん、私も戦いたくて胸が高まっております!」
———あれ、コックってこんな戦闘狂のキャラだっけ、とサナは思ったが、既にその眼前にはクラッシャーが迫っていた!
「終わりだゼ、お嬢ちゃん!」
「負けるもんかあっ!」
史上最大の激突が今———始まった。
「……錬成開始!」
「おらぁっ!!」
咄嗟に出来上がった氷の膜が、その巨腕によって砕け散る。
だがしかしこれは序章に過ぎない。
「幻想顕現、『メタル・クライシス』!」
サナの繰り出した、幻想顕現魔術。
思い浮かべたものを、そっくりそのまま現実に映し出し、魔力でそれを形作る魔術。
……がしかし、サナが思い浮かべたのは、クラッシャーの神技、『剛鉄襲来』。
クラッシャー本人、そのものを形作る概念自体になんとか干渉し、その神技を完全完璧にコピーする———、
———などと言う、魔術の扱いに長けたサナだからこそ、できるかできないかの賭けに持っていけるほどの、大技。
「同じ手を使っても、1人じゃオレには勝てないぜ……?」
「誰が私1人って言った……ワケ?」
———神技。人の身体のエネルギー、原動力たる『神力』を用いて発動できる、その人固有の超能力。
……クラッシャーのものは、鉄を操作できると言う簡単なものだった。
迫り来る巨腕を、サナはクラッシャーのモノを模倣した鉄のカーテンで凌ぎきる。
しかし、この後。
防戦一方では始まらないが為に、その為にコックがいる……!
「天殺撃———これで終わり……です……!」
既にその身体には、コックの手が添えられており。
「何だと……!」
そのまま、コックの全身全霊の一撃によって、クラッシャーの身体は細胞1つ残さず吹き飛んだ。
……かのように、思われたが。
「ちくしょうっ、なんてデタラメなアッ!」
その身体は、既に鉄へと変化していた。
首から頭にかけては、未だ人のままであったが。
「最初から……首から下は偽物ってことね……!」
「まさか気付かなかったのか? 俺の真名概念にまで侵入しておいて!」
「私にとってもうかつだったわ…………ハッ、コックは……!」
「……この、鉄クズ人形の事か?」
天殺撃。
その一撃は、文字通りコックの全身全霊を賭けて行われる、最強の一撃。
その最大出力を出そうものなら———無論、一撃で仕留めきれなければ、こちらが動けなくなり、殺される。
「コック!」
「サナ……様……お逃げくだ……さい……よかったです、この短い期間でも…………みなさんと一緒にいれて……」
「何別れの言葉告げてるの!…………そんなの、許す訳ないでしょ……!」
憤慨しつつも助走をつけたサナは、その魔力を杖に込め、クラッシャーの真上へと跳び上がる。
「ここで……決着をつける……!」
———瞬間。
コックが天殺撃を試みていた頃。
城壁だったはずの瓦礫から見下ろしていたのは、白だった。
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「……コック、アイツ……!」
……だが。
その光景。
2秒に満たない僅かな時間に巻き起こったその展開に、 俺は戦慄しながらも、
———激怒していた。
首を掴まれ、既にボロボロなコック。
その姿をよそに、見上げた上空。
「ぁ…………ぁ、あ、ぁ…………」
……その、上空だった。
クラッシャーの背後を取らんと、今まさに飛び上がったサナの影は———、
「ぁ……ぁ、あ、ああああぁっ……!」
突如現れた鉄の針に———貫かれた。
「うあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
赤い、赤い、無情な痛みと、涙と血がこぼれ落ちる。
「……やめろ、」
目より光がなくなり、完全に力を失ったサナ。
「やっ……やめろ、」
力無く落下してゆく様は、まるで先程の涙を表しているようで。
「やめ……やがれぇぇえええっ!!!!」
———やめろ。
俺の仲間を———傷付けんじゃねえ……っ!
地を蹴り、全てを終わらせる。
これで最後だ。
絶対にケリをつける……!
確実に、正確に、迅速に、苦痛を与えて、殺す!
「次から次へと……くたばり損ないが邪魔をするなぁっ!」
クラッシャーが差し向けた、突進し来る38本もの鉄の針。
避けれるはずもなく。
その全てが、俺の身体に突き刺さった。
心の針が、その全てが、俺の身体に。
『アダム・セイバー、認証』
瞬間、辺りの景色より色が消え去る。
全ての生命体、そしてそれに起因する魔力、神力の流れも全てが静止する。
針すらも、衝突する寸前でその動きを止める。
———『白の世界』へと。




