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もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜  作者: 月影弧夜見
第9章:カーネイジ・クライシス・クラッシャー(CCC)
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Side-イデア/レイ:ファイナル・ストライク

 …………これが、心の中に語りかける、だとか言うヤツなのだろうか……?


 聞こえてきたのは……ただの妄想かもしれないが、聞こえてきたのは間違いなくサナ……さんの声。


 しかし……魔術であればできるのか? 人の心の中に語りかける、というヤツが。


『あー、えっと、まあ、この声はイデアの妄想だとか……そういうのはなくて、えっと……


 ……私が! 私が直接、語りかけてるの!』


『……ならばいいのだが……話し方……はこれであっている……のですか?』


『語尾は合ってないけどね……


 それで、レイちゃんって、分かるでしょ? 人界軍近衛騎士団長、レイちゃん。


 そのレイちゃんが、今トンデモない敵と戦ってるワケ。だからある作戦に、イデアの力を貸してほしいの』


『……まあ、アイツとは一度手合わせはしたからな。ところで一体全体どんな作戦……なんですか』


『…………その敬語やめて、話しにくいから!


 ……んで! 肝心の作戦ってのが……』




*◇*◇*◇*◇



 各地で巻き起こる激戦。

 その最中で死闘の中にあったのは、人界王直属騎士となったレイも同じであった。


 ……いいやむしろ、彼女はイデアよりも頑張っているのだろう。


「……はあ……はあ、は……チッ、まだ、倒れないのか……!」


「もしかして……この私に、勝てるとでも思いましたか?」


「化け物……が……!」


 レイが相手をしていたのは、魔王軍幹部よりカーネイジへと引き抜かれた「断崖」の異名を持つ男、ヘキ。


 漆黒の衣装の裏に覗かせる、まるで石像のように灰に染まったその身体は、如何なる攻撃をも寄せ付けない。


 まさに壁、断崖絶壁の体現者となる男であった。


「何度やっても無駄です……私の肉体は鋼の如く硬く、そしてあらゆる攻撃を寄せ付けない!


 ……そろそろ、あなたの体力も無くなってきた頃でしょうか、くたばった後は嬲り殺して差し上げますよ……丁重にね」


「ち……ふふ、流石にコイツは……キツいかも……」






「何を手こずっている。キサマはそれでも、人界王直属の騎士なのか?」


 後方。私の真後ろに現れたその人影はおそらく……



「…………人斬りの兄、ね……一体、何のようよ……!


 あなたは人の手助けなんて、するようには、……見えないんだけど」


「キサマの世界には、人斬りかそれ以外の人しかいなかったりするものなのか。


 ………………まあ、手助けをしてやるために来てやったんだ。


 キサマの手助け……もとい()()()()に来た、と言えば分かるか。


 …………サナ、が何かをするつもりだ、と言えば、大体何をしでかすか想像はつくだろう」





 …………そう。

 圧倒的に強固な壁ならば。

 さらにそれを超える圧倒的な火力で吹き飛ばす……って訳?


「脳筋もいいとこ。…………私も、人の事言えないけど」



「…………だが、キサマは退いてろ。ヤツがしなくとも、この俺のみで貫いてみせる」


 イデアは、その先に見据えた敵に手をかざし、その敵を指した2本の指に魔力が収束する。


 ———何するつもり?


「まさか、この私を貫いてみせる、とでも??」


「その通りだ。キサマ如き、この俺の新超必殺技で粉微塵だぜ」


「…………ならば受けてみましょうか、この私を貫くなど、不可能に等しいですがね」







 暴風が吹き荒れる。

 イデアの身体を覆い尽くす稲妻が、その魔力の質を物語っていた。

 凄まじい魔力量。量だけなら、魔法にだって匹敵するほどのものだった。が。


 体感、体感だが、1分経過。

 ……2分経過。

 ……3分経過……って……!


「…………イデア、まさかあなた……嘘をついて時間稼ぎを……?」


「…………」


「しかしこの魔力量……囮としては申し分ない量だ……凄まじすぎる……!」


「…………」




「まだですか、いい加減、待つのもウンザリしてきたのですが」


 敵であるヘキも流石に痺れを切らす。

 それでも、まだ魔力溜めは終わらない。


「…………」


「イデア……貴方の時間稼ぎに全てがかかってる……だからもう少し、もう少し魔力を高めるフリを……」


「うるさい……! 集中できんだろう……!」



 あ、あるぇー?

 これって時間稼ぎしてたんじゃなくて、まさか本当に貫くつもりで……?


「……イデア、まさかあなた、本当にヤツを貫けるとでも……」


「ファイナル、ストライクーーーッッッッ!!!!」



 話しかけた瞬間、イデアの手のひらから超高密度に圧縮された魔力弾が発される。

 ……あれ、もしかして不意打ち……?


 その魔力弾が激突し、砂埃の舞うこの場にて。

 イデアは、さんざん魔力を溜めまくったうえ、不意打ちまでかましてみせたイデアは、確実に勝ち誇った顔で高笑いをしていた。


「はっはーーっ!! やはり、やはりキサマ如き、この俺様の必殺技、ファイナルストライクにかかれば木っ端微塵に吹き飛ぶんだ……! 


 愚かだったなあ、自分の判断を悔やむといい!! はーーーっはっはっは!! はーーーっはっは…………あ……!」




「…………あ? あ、って一体何よ」



 なぜだろう。

 嫌な予感……しかしなかったのだが……?







「どうしました……? その程度で、この私を貫けるとでもお思いで?」


「何……やってんのよ……全っ然、貫けてないじゃないイデア! この馬鹿っ!」


「ち、くしょう……まさかこの俺の新超必殺技が……!」




 ヘキの身体には、目立った損傷……などはなく。

 まるで最初から、その攻撃がなかったかの如く、ヘキはただ、仁王立ちでその魔弾を受け止め、消し去っていた。


「……それで、おしまいですか……?


 ならば今度はこちらから……死になさいっ!!」


 ヘキが掲げた両腕の間に、黒い魔力が溜まり始める。


 これはおそらく……周りの全ての生命から魔力を吸い上げている…?


「私ノ身体に込めラれた()()ヲ用いテ……貴様らを塵にシてやる……!!」


 ———呪詛?

 つまるところ……呪術?

 いや、でも……そんなの日ノ國でしか———そもそも、日ノ國でもあまり使われなかった術式だというのに……?



「……チッ、コイツはまずいな……レイ! 今すぐにでも逃げるぞ!」


「コイツはまずい……って、これほとんどあなたが引き起こした事だけどねっ!


 ……ただ、今アイツは呪詛と口にした。つまりヤツが用いるのは呪術ってこと……! 呪術に関しては私も疎いし……はっきり言って、何が起こるか……分からない!」



 収束される黒い気。

 どう勝つか、そんなものは全く分からないこの状況下で。






『……待たせたわね……できたわよ、多重連奏爆裂魔法の準備が!!』


 差し込んだ希望の勝機。

 脳に直接語りかけるようにして聞こえた、サナの声。


「……ふ、ふはは、あーっはっは! そうさ、全てはこの為の時間稼ぎ、だったんだよ!」


「サナ、タイミング完璧よ!……でもイデア、その言い訳は……少し無理があると思うケド」






「ふふフ……この私カら逃げルツモりか……ダが無意味ダ……この攻撃が外レようと、貴様ラが死ぬ運命は何モ変わりハしない! まずは……コの一撃で…………ああっ?!」


 黒い魔力の玉を放出するべく、ヘキが上を見上げたその瞬間。

 その真上には、幾重にも重ねられた魔法陣が。


 橙色の魔力描写式魔法陣。……つまり、この幾重にも重ねられた魔法陣、その全てが、爆裂魔法の魔法陣ということ……!!!!



「なん……ナんだと……!!」








「チッ……もっと遠くへ行かなければ……巻き込まれたら確実に死ぬぞ……!」

「圧倒的な火力だけど……そのリスクも圧倒的か……!」


「きさ……貴様ら、貴様らーーっ!! 逃ゲヤガって……覚悟すルがイい……!! 死ねえっ!!」


 背後より放たれる最後の魔力玉。

 同時に起動する魔法式。



『多重連奏爆裂魔法、クインテットエクスプロージョン!!!!』




 上空より降り注ぐ最大級の爆裂魔法。

 その風圧だけで凄まじかったが、まだ私たちにはやるべきことが残っていた。


「おい、レイ! 迎撃……だ! 合わせるぞ、刀を抜けっ!」

「……2人で、合わせるっ!」


 迫り来る暗黒の魔力弾。

 だがしかし、ここさえ乗り切れば確実に勝てる、というのなら……!


「せー……のっ!」


 2人でタイミングを合わせ、その魔力を両断する。

 黒い瘴気が吹き荒れた後、意識は目の前の白い光に飲まれてゆく。






 ———だけど。


「か……勝った…………ぞ…………っ!」


 そこには確かに、勝利の二文字が刻まれていた。


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