まさかの再会
はい! ということで今回、前章『アーティフィシャル・マインド』の前回までのあらすじ解説をさせていただく、機巧天使のコックと申します!
今回も長くなりそうなので、読み飛ばしは推奨ということですが……やっぱり読み飛ばされると悲しいです、私は。
ちなみに誤解されがちですが、私の一人称の読みは『わたくし』なのでご了承を。
お願いですので一人称全てにルビを振ってくださいまし(何やらケータイのような端末に文字を打っている)……っと。
それでは始めます。
辛くも黒騎士に勝利したマス……白たちは、自分たちが眠っている状況に気付かれます。
目覚めたそこは、既に浮遊岩盤の上! 白たちはなす術なく、この私に連れ去られてしまうのでした! はい! もしねが1部完———、
……そんなことは置いといて。連れてこられたその場所は、『大穴の島』。世界の中心にポツンと浮かぶ、謎の大穴がある島でした。
そこでっ! この私は、白に死ぬよう申し出たのですっ!……その理由は、私のかつてのマスターを動かしてほしい、と言うもの。
白様には神技と言う名の特別な超能力があり、それを用いればマスターは動く、と言う話でした。
しかしまあ、当の白様にはそのような認識はなく。こうして私の野望———というにも乏しいものは、軽く消え失せてしまったのです……
そこで白様は『心当たり』があると言い出し、その場所へ訪れます。そこはかつて白たちが撃墜されたロボットの残骸の場所でした!……まあ無駄足でしたが。
そこで白たちは、黄色いカプセルを持った魔族と交戦。散り際に『リー様ぁ!』とか言い残して死にました。……ここ伏線です。
そんなこんなでもう一度大穴の島へ。そこでなんと、動かないはずのマスターが動かれたのです!
歓喜に満ちた私は寄り添いますが、その正体はさっき出てきた『リー』とか言うクソザコエレキポイズンスライムがマスターの姿を乗っ取ったものでした。許すまじ。
そのまま私は記憶を失ってしまいますが、白の———いえ、『マイ・マスター』の呼びかけにより主従を結び、覚醒っ! この私は『スーパーコック』となってリーを一網打尽に———(してません)
そんなこんなで私と(現)マスターたちでリーと交戦しますが、絶体絶命の危機に。そんな中、マスターの神技———『ザ・オールマイティ』が覚醒、リーを撃破されたのですっ!
しかし私の記憶が戻ることはなく———それでも私は、我がマスターに……っ、白様に、着いていくことを決めたのですっ! 完!
……え?
『お前の一人称にいちいちルビ振るのは面倒くさいからしない』??
そ、そんなぁ……私の一人称の読みは『わたくし』です、どうか覚えて帰ってくださいねぇ読者さん……
◆◆◆◆◆◆◆◆
数時間前の激突から。
大穴から這い上がって数分。
俺たちは今。
とてつもない、食糧難に陥っていた。
とりあえずサナとセンに関しては、なぜかイデアが持ち歩いていた医療用ポーションにて回復したのだが、それだけじゃ済まない問題が残されていた。
聞いた話によれば、この大穴は、世界の中枢を担う二大陸、その間に挟まれている巨大な孤島らしいじゃないか。
……え、食糧は?
当然魔族はいない。
木は……ない。草1本すら生えておらず。
よく考えれば、俺たちは数日前(正確な時間は分からないが)から何も食べていない。
サナもセンも、兄さんも揃って空腹を訴えている。
……コックに買ってきてもらうか、食糧?
……いいや、買ってくるとかいう発想がそもそもダメなんだ、盗んでもらう事にでも……
「盗んでくる……ということは、見つかれば敵を排除しても、良いと?」
「…………また心読んだだろ」
「ええ、全くマスターからの指示がないからと心配になって……」
「……はいはい分かった、なら指示を出そう、俺たちを転移魔法で王都まで連れてけ」
「無理でございます」
……ふぇ?
先程まで……いいや数時間前までそのスペックの凶悪さを見せつけていたコックが、いきなり「無理」と言い出したんだ、困惑もすれば驚きもする。
「……無理……って、既知座標じゃ……ないから?」
「それもありますが、単純な魔力不足でございます。普通の人間ならば、転移魔法なんて1週間に1度が限界……つまり、おそらく前の私が先に何度か使われて……」
「魔力……不足……じゃあ、俺たちはどうやってここから出れば?」
「それは私の浮遊魔法で可能でs……」
「それを早く言え!! つーか早くそれしてくれ!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
……と、いうことで。
2年前より白く輝いた石の城壁に。
2年前よりもツルツルになった床の石のタイルに。
2年前より、いささか活気が良くなった王都へと、俺たちは足を踏み入れた。
「王都……ようやく帰ってこれたわね……」
「僕も王都は久しぶりです!」
「僕も、って……別に俺とサナはそんなに久しぶりじゃないがな」
「それでアレン、今から何をするつもりなんだ」
……と。これからの展望を聞かれたので。
「とりあえず、王様から黒騎士討伐の報酬をもらう。……んでその後、センと兄さんは置いといて、俺とサナとコックでパーティ認証を……」
「え?」
「何だと?」
2人はまるで、なぜ自分が置いていかれたかも分からないような顔をしている。
「……だってさ、俺に養えると思うか? 自分含め4人! いくら黒騎士討伐報酬があったとて、流石にそりゃ厳しすぎ……」
「だからって、イデアさんとセン君を置いていく訳?」
「恐れながらマスター、流石にそれは非人道的かつ非道徳的であり、やめた方がよろしいかと……」
サナとコックより詰め寄られる。なんか怖いよ。
「いやだってセンには保護者だっているし、兄さんは自分で生きていける……だろ? 大体、俺たちは金不足もいいところで……」
「…………置いて、いくの?
イデアさんはともかく、セン君を? まさか、このセン君を……こんなにか弱いのに、それでいて敵に一目散に突っ込んでいくこのセン君を、置いていくって……言うの?」
「なんか……酷くないですか?」
「……すまん、俺様にももう少し何か欲しいのだが」
……連れてけ、ってことね。兄さんに関してはどうでも良さそうだけど。
「チッ、あーはいはい、分かったよ、その代わり金がなくなったら働いてもらうからな、覚悟しとけよボロ雑巾のように使い倒してやるからっ!!!!」
「マスター、正しくはボロ雑巾のように使い倒して捨ててやる、でござ———」
……半分冗談だったが、半分は本気だったことは絶対に内緒にしておこう。
◇◇◇◇◇◇◇◇
……そんなこんなでジョブセンターへ。
「こんにち……あれっ……えっ……え?」
受付のお姉さんは未だに受付をしていた。が、何やら俺の方を見つめ驚いている様子だった。
「えっと……白さん……ですよね? 確かあなた…2年前の闘争にて亡くなったと……」
……覚えられていた事が何より嬉しい。
「思われてただけで、実際俺は生きてます。ところで、パーティ編成をしに来たんですけど……」
「確か以前もこんな感じでしたよね……それに聞きましたよ、サナさん! あなたたちが黒騎士さんを討伐されたとか!」
「それはまあ……そうですね……! ここにいるみんなのおかげですけど……ね」
そう言いながら、サナは俺たち4人を見つめる。コックに関しては全く関係ないのだが。
「とりあえずパーティ編成お願いします! 私と白は既にしたので、この3人のジョブを……いや、2人でいいです!」
「お2人? そこの……奇抜な格好をされた女性の方は、参加なされないのですか?」
「いえ、この(コックの頭に手を載せる)人(なのかどうかはよく分からないけど)はちょっと事情があるので、パーティ編成のみでお願いします!」
「そりゃあ……そうだよな、人工生命体、しかもある程度何でもできる超万能ロボットに、何の魔術が有効か言っても無駄だよな……」
「……私、ロボットと思われてます?」
そうして、とりあえず全員の検査が終わった後。
「はい、ジョブ適性検査は完了です! イデアさんは……幻想模倣魔術が魔術から魔法の域にまで達しています……! すごいですね……!」
「お褒めに預かり光栄にございます、姫君よ」
「姫……君……ですか?」
「やめろ兄さん、急にかしこまるのやめろ」
……あ、「女たらしのイデア」って呼ばれてたこと忘れてた。そう言えばこんなこと言うヤツだった、兄さんは。
———そう言えば、黒騎士に色目を使ってなかったのかってのは疑問だな。流石に勇ましくて性的興奮の向く対象じゃなかったか。
「そしてセンさんは……まあ、どれも平均以下ですが、潜在能力の面においては、とても———」
「やめてくださいお姉さんそれ以上言わないでくださいっ!」
珍しくセンは叫ぶ。
やはり普段大人しいセンでも、そこだけはコンプレックスなんだな。……まあ、勇者志望だし当然か。
……そして、あの時。
「パーティ名、ワンダーショウタ———改めて考えると言いづらい名前ですねコレ……」
「……ほらサナ、お前だぞ」
サナは顔をピクピク引きつらせながらも、必死に作り笑顔を装っていた。ホントにどーしてこんなパーティ名付けたんだ。
「まあとりあえず、このパーティは白さん、そしてサナさん、そしてイデアさんにセンさん、最後にコックさんでよろしいですね?」
「お願いします」
「えっと、今から黒騎士討伐報酬を貰いに行かれるのですか?」
「はい、パパッと貰って、すぐにでも隠居生活を……」
「アレン、俺たちが行くのは温もりある家ではなく、戦場に決まっているだろう?」
兄さんの前では言わない方がよかったかこの戦闘狂めっ!!
「それでは、ご武運を!」
「ありがとうございました!」
ジョブセンターを5人で後にする。
1番先頭にいたコックは、羽根がつっかえてなかなか出れなかったのだが。
という訳で、人界王、ユダレイ・タッカーダル王に謁見だ。
……この全員で行っていいのだろうか、アポも無しに。
……まあ、
「とりあえず行ってみるか、王城!」
「だね!」
そうして門の前へ。
巨大な門を2、3度ノックする。
「出てこないわね」
4度目。
「出てきませんね」
5度目。
「出てこないな」
6度目。
「マスター、吹き飛ばしてもよろしいでしょうか?」
コックが提案。やめてほしい。
「待て待て待て、金を貰いに来たんだよ、穏便に、穏便にっ!」
……と。
木製の門が軋む。
「あの~、この時間に来訪される者は聞いておりませんが……」
中から出てきたのは、小柄な少年だった。なにやら豪華そうな鎧を身につけているので、まあ騎士……とかそこらへんの身分と言ったところか。
「そりゃあ、俺たちアポなし、そもそも言ってないからな」
「一応聞いておきますが、どのようなご用件で?」
「黒騎士討伐報酬を貰いに来ました」
「……冗談なら今すぐ閉めますが」
そりゃあそうだろう、黒騎士———魔王軍の尖兵、魔王の右腕と呼ばれた者を倒したのが、こんなチンケな装備のパーティなのだから。
……だったら、コイツを出しとけば顔が立つってもんだろ。
「本当ですけど。サナ、顔出せ~っ、お前ならある程度顔が立つだろ~」
横からひょこっとサナが顔を出す。
「ほら、コイツ、見たことあるだ……」
「師匠!」
…………へ?
「あーーーっ! アンタ、ケイじゃない! まさか騎士になったっての?!」
「いやあ、実はですね…………少しアルバイトみたいなのしてて……」
……なるほど。俺がいない2年間の思い出話のようだ。
———アイツ、元犯罪人だよな?……俺含めて。
だが、木製の門からひょっこり顔を出して、あのケイって子が話してるって考えると、そんな長話を王が許すはずもなく。
「……すいません師匠、今から門を開けますね」
巨大な門が開き、城の全貌が姿を晒す。
白く染まった城壁に、意味ありげなタペストリー。
ステンドグラスから差し込む光はとても幻想的だった。
目の前には赤色に染まったカーペットがあり、その奥には玉座に鎮座する王の姿が。
その両脇には、跪く騎士が2人。
1人とは剣を交えたこともあるが、もう1人は一体……?
「何用か、勇者よ。用件を述べよ」
「魔王軍幹部、黒騎士の討伐報酬を貰いに来ました」
「……よい、前へ踏み出す事を許す」
サナのその顔を見た瞬間、王は前に出ることを許してくれた。物分かりが良くてとても助かる……が。
4人。
俺たちは、王の前にて、
跪く。
———コックを除いて。
「(おいコック、跪け片膝を付くんだ!)」
「(マスターに、でございますか……?)」
「(ちげえよあの偉そうなおっさんにだよっ!)」
小声で交わされた会話は、だがしかし静寂な場において、その声を聞かなかった者はいなかった。
「顔を上げよ、偉大なる勇者よ」
堂々と見上げ、人界王の顔面を凝視する。
瞬間、辺りが殺気に包まれる。
(どこかで感じたことのあるような)
(何かから剣を向けられている)
「……まさかとは思いますが王よ、この俺をこの場で殺そうと企てておられる……のですか?」
恐る恐るの質問。
……だがそれに答えたのは、一閃の輝きであった。
一瞬にして眼前に現れたのは、銀色の刃。
その刀を手に取る剣士は、隻腕にして。
黒髪、そこから透き通る琥珀色の瞳。
あろうことか、その刀の担い手は女だった。
……そう、生きていてほしかったけど、できるならば会いたくなかった人物ランキング堂々の第1位。
新・二千兵戦争において、数多の剣士を引き連れ俺を殺そうとした張本人だった。
名前は……まだ知らないけど。




