遭遇/機巧天使
えっと……こんにちは。前の章から出てきた……その、セン、って言います。よろしく……お願いします。
前回の章『ブレイバー』編の振り返り、と言うことで呼ばれたので、順を追って解説していこうと思います。
今回、結構長いので、その…………読み飛ばし、推奨らしいです……
……欠けた白さんの刀、神威。それを直すために白さんとサナさんは、僕のいる村にまで来てしまいました。
僕とも顔を合わせて就寝———翌朝になると、サナさんがさらわれており……そこに行くとなんと、白さんの兄———イデアさんが。
イデアさんはすかさず白さんに襲いかかりますが、交戦の最中、魔王軍幹部最強の一角を担う『黒騎士』が登場、白さんたちは撤退を余儀なくされてしまいます。
しかしイデアさんは諦めるわけにはいかなかったらしく、単身で黒騎士に特攻。その左腕を持って行きながらも、イデアさんは両断されてしまいました。
一方その頃、目を覚ました白さんは、亡き兄の遺品を見て、この大敵と戦うことを決意。僕のいる鍛冶屋にまでやってきて、概念法術による神威との適合作業に取り組みます。
またまた一方その頃、村の上空には巨大な鉄の球体が。そこから降りてきた謎の女と、黒騎士は相見えます。
球体の正体はなんと神。『機神』と言う、魔王軍とは違う第三勢力であることが発覚。
黒騎士は魔王に連絡を取り、魔王の保有する魔術兵器
『創世天地/開闢神話・亜種』にてコレを撃墜、残骸よりその機神———『機神アテナ』の神核(神の命)を奪取し、残る勇者を殲滅せんと村へ向かいます。
またまたまた一方その頃、昏睡状態にあったサナさんが目覚めます。しかし既に戦闘は始まっている———と言うところで、色々あってこの僕、センと共闘すると言うハメに。
僕たちは必死に応戦しますが、やはり魔王軍幹部最強……歯が立たずに惨敗してしまいます。
そんな最中、神威の修復を完全に終えた白さんが参上! その後は実は生きていたイデアさんや、謎の少女の声を借りて辛くも勝利を収めたのです!
そして、イデアさんととりあえずの和解をし、この場にいる全員は眠ってしまいました……
と言うところですけど、謎が多い章でもありましたね。『機神』の存在だったり、赤髪の女、修道服の集団、白さんを導いた謎の声……だったり。
いやまあ、『機神』については、白さんだったりサナさんだったりは知ってはいるのですけど、その件はまた別の機会にということらしいです、はい……
『………………アテナ』
この……声は…………
『私、の、名前……は、アテナ』
あの声だ。あの時、俺を導いてくれた幼女の声。
そうだ、俺はコイツにお礼を言わなくっちゃ———、
『待ってて……ね。迎えに、いく……から。
———しろ』
なんで、俺の名前を知って———、
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……ん……んっ……」
意識が確立してゆく。夢を見ていたような、ソコに何もなかったような、寝起き特有の不思議な感覚が続く。
真っ暗だった視界は、いつの間にか自然の混ざった風景に……
「あれ」
……がしかし、目を開けても視界は暗く。
仕方なく顔を遠ざけると。
「……あれ??」
俺は兄さんに、抱きつきながら、
「寝てしまった……のか?!」
……マジかよ。20過ぎの兄に抱きつく10代の弟ってどんな光景だよ!
———それはさておき、辺りを見回すと、サナとセンの姿が。
「……どーすっかなぁ……こっから」
幸いにも、石にされた自身の右腕は元に戻っていたが。
それが黒騎士を倒したということの証明になるというのなら———いいのだが。
兄さんも、サナもセンも、誰1人起きやしない。そもそもあれから何時間、いや何日経ったのかさえ分からないこの状況で、一体どうしろと言うんだよ……!
とりあえず兄さんは最後に起こすとして、サナとセンを起こさないと……って、何かおかしい。明らかに何かおかしい。
……なぜか知らないけど息がしにくく、霧———のような何かが立ち籠めているこの状況下にて。
一体全体どうして、例外なく、
全員が眠ってしまっているんだ?
そう、この状況にて、起きた者は俺以外誰1人としておらず。
黒騎士の罠か、などと考えたが、黒騎士は両断され死んでいたはず。
……では誰が?
誰が、どのようにして、何の目的でこの状況を作り出した?
……ただの偶然か?……などと思えればよかったのだが。
とりあえず、サナを起こそうと足を進めると。
「…………なに、これ」
開いた口は塞がらない、
多分、おそらく一生。
霧の先、見えてきた景色は。
「どう…………なってんだよ……っ!」
上から見下ろした、村の風景であった。
……と。
『あらら、起きちゃいましたか』
上から響いた女の声が。
え?
……なん、だって?
今、どっから声がした……!
刀は……手にしていない、が、ただならぬ異常事態に縮こまった脳は、今この瞬間に正常へと戻る。
すぐさま刀を取れるように、刀の方角へと手を翳しながら、声のした方角とは別方角に逃げようと走る、が。
『あ~、逃げるつもりならやめておいた方がいいと思いますよ?……どうせ何をしようと、無駄なものは変わらないので』
どれだけ走ろうとも直上から響いてくる女の声。
だが迎撃しなくてはと脳を活性化させる。
……ただ、神威を以てして戦えるのか?
敵は姿を見せない、声のみの存在。
種族も分からなければ、正体すら掴めず、ましてや何不自由なく飛んでいて、なおかつこの地面を浮かせている存在。
……戦わずして分かった。
格が。
違いすぎる。何もかも。
上からしたのは女の声だが、おそらく人ではない何か。
……が、その『人ではない何か』さんが一体瀕死の俺たちに何のようだ?
刀を手に取るが、何とか対話を望めないか確認する。そのためにはまず。
「……なあ、お前は誰だ」
『個体名……なら、G-01<armor empire>:機巧天使初号機:司令塔、でございます、以後、お見知り置きを』
「……はい?」
えっと……何つった?
じーぜろわん………あ、あーたふぃふゃる、えんじぇる??
「え……えっと……名前が分からなかったんですけど」
『……はあ、確かに長いですよね、この名前…覚えてもらえなくてショックでございますぅ~』
……なるほど、結構フランクな感じなんだな……ってそうじゃなくて!
「え……えっと……コック!
長ったらしいからコックピットから取ってコックって呼ばせてもらうけどな、一体俺たちに何の用だ!」
『あなたたち……ではなく、具体的に言うとあなたに用が……』
「だから何の……」
『突然ですけど、死んでくださいます?』
……なるほど、結構殺意マシマシなんだな。
「……それは無理だけど」
『そこを何とかぁ~』
え、ちょい待って、生殺与奪の権利はあちらが握っていらっしゃるのではなくって?
『……まあとりあえず、もうそろそろ『拠点』に着きますので、地面を降ろさせていただきますね』
「地面を……なるほど、やっぱりお前が浮かせていたのか」
……死んでください、とは言われたものの、襲っては来ないだろうと思いつつ好奇心にそそられ、縁から地面の下、空から見た地上の風景を確認する。と。
……それはそれは、惨状と呼ぶに相応しいものであった。
3つもある、惑星の裂け目とも呼ぶべきほどに深く暗い渓谷。その東には、半径何キロあるか分からないくらいの巨大すぎるクレーター。
そのクレーターの範囲内に、なぜかそびえ立つ1つの山が。
……いや、おかしくねえか?
辺りの木は薙ぎ倒され、クレーター内部のものは『ソレ』を除いて全て消失してしまっていると言うのに。
……何であの山は、クレーターの、しかも凹んでいる部分のど真ん中より少し西の方に、何事も無かったかのごとく生えている……んだ??
最後に、なんかあそこにある。
枯れた木……枯れた、と言うより中から燃え尽きたかのような、あまりにも巨大な抜け殻。
……だがその材質といえば……どこか鉄のようで。
しかも、今は雲一つない快晴だって言うのに———そこだけは何もかもが影に包まれている。
……まあ、今は関係ないだろう。またいつかここに訪れる日が来るはずだ、その時に調べるのはアリかもな。
とりあえず、地面が地面に接地した。
デタラメな事が起きすぎて、何を言っているか分からないとは思うだろう。
安心する、多分みんなが起きていたらみんな揃って混乱していただろうから。
……と。霧に包まれた辺りが晴れ、コックがその姿を現す。
翡翠の瞳に、純白のスーツのような服。そしてその、足まで届くほどに長い青色の髪に、灰色の花のかんざしを付けた女。
……そこまでなら、普通の人と同じ、であったが。
頭部から頬に向かって、機械の断面を思わせるような、青緑色に輝く1本の線が刻まれた顔面に。
白鳥のごとく広げられた2枚羽に、頭部には幾何学模様の描かれた、少しばかり欠けた光の円環。
「…………天使……?」
実物なぞ見た事はないが、そう言いたくもなるような見た目をしていた。
『そう、私は天使! 天使なのでございます!』
「……あー、なるほど、天使か」
文末に(棒)と付きそうな声で呟いた。もう俺は何にも驚かない。
『とりあえず、ある場所に赴いて事情を説明いたしますので、それが終わり次第———
———死んでくださいます?』
最後の一言。場を揺るがすほどの威圧が込められていたが、その邪悪な微笑に振れた表情はどこか既視感があり。
見てるとなぜか無性に腹が立ってくるような感じがした。
地面が地面についてから……中々おかしい事だが、おかしかったのはそこからであった。
地面がついた正面には例のそびえ立つ山がある……と思っていたが。
『魔術隠蔽解除、霊峰型魔力障壁撤去。さあこれで、中へ入れますよ!』
天使が———コックがそう言った瞬間、山だと思っていたものは白い六角形のパーツのようなものに分解され、崩れ落ちていく。不思議と触れても感触はなかったが。
……そして、その下には。
魔力障壁と魔術によって隠蔽されたものが、姿を現す。
鉄でできた巨大な縁に、地下数百メートルまで続く穴が。
……まさか、黒が言ってた大穴って……この穴?
「……なあ、コック。死ぬ前に質問いいか?」
『ええ、この私に何でもお申し付けくださいませ』
「ここって、何なんだ?」
『ん~、大戦の跡地、つまり終末戦争、その決着の地、でございます』
終末戦争。1000年前の大戦。としか知りはしないが、とにかくそれがいかにヤバかったかは今ので知った。
「……で、俺はこの大穴に飛び込め、と?」
『そこは安心してください、私が責任を持って降ろしますので。あなたは死んでもらうのではなく、私が殺さなければ意味がありません』
正直言って逃げたかったが、抵抗するだけ無駄であろう。
サナもセンも、置いていくのは心配しかなかったが、今はこうするしか道はない……か。
『……それじゃあ、私の羽根に捕まってください』
……冷静に考えれば、というかさほど考えなくとも、これから俺を殺すヤツに捕まって降りる……だなんてやっぱりおかしいわ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
……穴の中は……特に何もなく。
強いて言うなら、人が1人降りれるくらいのちっぽけな、木製の螺旋階段があったくらいで、それ以外は特に見映えのあるものはなかった。
最下層に、到着するまでは。
『さて、ではアレンさん、こちらをご覧くださいませ』
「……ちょっと待て何で俺の名前知ってんだ!! 俺は名乗ってないだろ、しかも本名なんて何で分かるんだよお前?!」
『いや、心の中を~……ちょちょいっと』
「人の心読めるのっ?! と言うかソレ記憶だよね、俺の記憶だよね?! つか勝手に心読むのやめてくれ恥ずかしいっ!!」
「申し訳ございません~、私とした事が~配慮に欠けてしまいました~♪」
歌いながら自らの失態を口にするのか……と困惑した瞬間。
———コックが最初に言葉を発した瞬間、場は光に包まれた。
最下層。下はただの土、であったが、横には円筒状のだだっ広い通路のようなものが。
……そして、その通路の先を塞ぐかのように———通路に蓋をするように正面にあったのは、円状の鉄の壁。
……して、そのすぐ下にて座り込んでいたのは。
『こちらが……私のマスター、でございます』
鉄の壁に寄り添うようにうな垂れ、もう動く事はなくなった機械が、そこにいた。
……正しくは機械ですらない。
顔面も、その3分の2は灰色に覆われているものの、左目を含めた残りの部分は間違いなく、人の肌そのものであった。
腕に至っては錆びきって、なおかつツタに絡まっている。
「……でさ、俺に何をしろと……」
『あなたに死んでもらう、とは言いましたが、最終目標はそれではございません、あくまでソレは過程にしかすぎず……』
「……予想できたんだが……そのご主人様を動かしてほしい……と?」
『その通りでございます!』
……なるほど、とりあえず事情は掴めてきた。だが……
「何でこいつを動かすためだけに俺の命が必要なんだよ?!」
『何の為に、ここまで来たのか、分かります?』
「いいや分からない。全くもって分からない!」
『もしかして……気付いておいででない?
『鍵』の持ち主であると言う事に……?』
……鍵、今確かにコックは『鍵』と口にした。
黒と同じだ。俺の中に眠る『鍵』……って言ったって。
「……何の話だ」
『ハーーーーッ』
直後、コックはこれでもかというほど大きすぎるため息を吐く。
……ただ、未だに俺は何の事か全くもって分かりやしなかった。
『……つまり、神技に目覚めていない、と? 魔術以外で、超能力的なヤツは使えない、とそうおっしゃるのですか?』
「そうだ、全くもって分からん」
『ハーーーーッ』
「そのため息やめてくれ、劣等感に苛まれる」
『……う~ん、どういたしましょうか……私は人造天使、今ここでアレンさんを殺そうが『鍵』の継承は不可能……なれば……子作り?』
「おい今何つった聞き捨てならん単語が聞こえた気がするんだが!!!!」
『冗談です、まあしようと思えばできますが』
「遠慮しときます」
貞操は渡さん、と決意に満ち溢れる。
「なあ、つまりさ、コイツを動かせればいいんだろ? 俺のその……『鍵』をどう使うかは知らんが」
『はい、まあそうですけど……何をなさるおつもりで?』
「……いや、機械つったら、1つだけ思い当たる節があって……」
◇◇◇◇◇◇◇◇
……んで、また地上に来た訳だが。
「……白。誰、その女」
「え、えっと白さん! こここここどこなんですか?!?!」
「アレン! 貴様とはさっさと決着を……」
サナと、センと、イデアの3人に色々問い詰められる状況下に陥った。
……つまり事後処理が、明らかにめんどくさすぎるのだ。
とりあえず、俺の持てる全ての情報を話す。
「つまり、ソイツは白の恋人でも何でもなく……?」
「ここは大穴で?」
「俺様と決着をつける気はないと言う訳かアレン! キサマは俺と戦う事を運命づけられた……」
……つくづくうるさい仲間たちであった。




