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再開と再会

「はあ、ぜえっ……も……もう見失ったよな……」


「ええ……多分……つけられてもいないと……思うわ」




 感動の再会。

 が、そんな奇跡的な再会を果たした俺たちに待っていたのは新たな敵、そして新たな負債。

だから。


「……サナ……幹部、ぶっ倒しに行くぞ……!」


「幹部……って、魔王軍幹部?! いやでも……」


 ……そう、黒は言った、「魔王軍幹部なら倒せる」と。




 今金が稼げる依頼は、討伐依頼ぐらいしかないだろう、それも特別報酬が手に入る魔王軍幹部討伐……!

 大丈夫だ、今の俺ならきっとやれ……





「あー、えーとね、現幹部って、2人しかいないんだ」


「…………はい?」


「2人……つまり、ダークナイトってやつと黒騎士、魔王の右腕左腕しかいないって事。


 魔族の壊し屋、魔王軍には所属していない、カーネイジって言う暴力組織ならいる……そいつらなら、かなりの懸賞金がかけられているけど」



「……なん……だと……!」



 ………無理だ、流石に俺もコイツら2人に勝てはしない!……と思う。よく分からないけど、このサナがいてもそんな賞金がかけられているほどと言うのなら。


「えっ……なんで……そんな減ってんだ……? 2年くらい前には……何人いて……」



 ……あの、つい先ほど出会った元魔王軍の老婆は除くにしても、一体全体何があったんだ……?


「白以外の他の勇者たちが、残った2人の魔王軍幹部を倒しちゃった訳よ。それに幹部の補充も行われてはいない。だからその2人しかいない訳よ。


 そのおかげで、戦線は前進、今のところは人界軍が優勢な訳。それもこれも、私たちと黒さんが2人も幹部を倒したからよ!」




「じゃあ……一体どうすれば……!……とりあえず、幹部補充まで待つしかないのか?」


「……まあ、そうなるわね」


「嘘だろ……! 刀も修理しなきゃならないってのに!!」


「刀……って、まさか白、その刀欠けたりでもしたの?!」


「……ああ、流石に10年近く使ってるからな、いくら概念武装とは言え、逆にここまで壊れなかったのが不思議なくらいだ」


「……問題は山積みね……」

「そうだな……とりあえず、王都に立てた家にでも帰……」



「ないわよ」



「……へ?」

「だから、家。もうないわよ」


 はい??????




「ない……ないってなんだよ、別にサナが何からやらかしたとかじゃないんだろ??……え、もしかして……俺か?! 人斬りだってバレ……」


「いいえ、そんな事じゃないわ。物理的に壊されたのよ。





 壊し屋、カーネイジ軍団によって。王都ごと、丸ごとね」



 あーなるほど、だから懸賞金がかけられてんのか。

 って何? なんだよそのふざけた軍団は????


 王都ごと……って事は王都は完全にぶっ壊れた?? 俺のいない2年の間に????


「……おい、ソイツらの本拠地教えろ、すぐさま殺しに行って、その腑引き裂いて……」


「落ち着いて! 本拠地なんてないわよ!」


「ない?」





「……そう、山賊や盗賊みたいな感じで、仮拠点を作っては移転してを繰り返してるから本拠地なんてない、どこにいるか分かんないのよ!」


 おいおいどーすんだよ、再会したかと思えばいきなり詰みじゃねえか。


「じゃあ……サナは今どうやって住んでるんだ?」


「狭い宿生活よ」


「なるほど、俺もまたあの宿生活に逆戻りと」


「大正解」





 ……なんてこった、なんでこんな事になってしまったんだ……


「と……とりあえず王都に帰るとして、食い物ないか?」


「食い物?? 何で?」


「何でってそりゃあ……ここに来るまでに食ってないんだよ」


「な……なるほど……とりあえず、王都に帰りましょう!」


「道、分かるのか?」


「分からなきゃ王都に帰るなんて言う訳ないでしょ」


 そりゃあそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇




 そうして歩いているうちに王都に着いた……が。


 王都は俺の知っているそれとは明らかに変わっていた。


 まず外壁。めちゃくちゃ綺麗な壁だった。

 純白に煌めく白亜の壁。


 そこにぽっかりと空いた門を抜けると。一風変わった街の姿が。


 街に入ってみると、まず灰色の大通り、その後噴水が中央に座する広場。その奥には、より一層大きくなった王城が。




「なんか、全体的に綺麗になったな、……そういや、俺って死んでる事になってたのか?」


 ガスも言っていたが、もしかしてマジで死亡扱いになってるのか?


「……言いにくいけどそうね、白はあの戦争、いや、新・二千兵戦争で殺された事になっている。……けど、どうやってあの場から生きて帰ってこれたの?」



「サナが……俺に生きてくれって……言ってくれたおかげさ」



「……ぷっ……ふふっ……急にくっさい台詞吐くじゃない白!」


「え? ああ……確かによく考えてみたら恥ずかしい台詞だよな、でも……



 ……でも、ホントにそうなんだよ。その言葉を思い出した瞬間、力が湧き出てきて、それで……」


「よく考えなくとも恥ずかしいけど……それで、どうかしたの?」






「……ああ、それで、また殺した」

「……」


 サナは黙り込み、少しだけ俯いた。


「そうだ、サナだって見ただろ? 俺が衝動に任せて、敵を斬り殺したのも」


「……まあ、そう……よ……ね」

「……でも、それでも。例え衝動に負けようが、俺は戦っていくって決めたんだ」



「……」


「もちろん、それが贖罪になるからだとか、そんな理由もあったりするけど、そんな義務みたいな理由で戦うとか、そんな訳じゃないんだ。


 ………俺は、大切な人を守る為に戦うって」


「守る……為?」


「そう、……とある出来事で戦わなければならなくなって、今まで、何の為に、本当は何の為に戦ってたかって、今一度自問してみたんだよ」


「……」


「そしたらさ、やっぱどう考えても、俺は誰かを、大切な人を守る為に戦ってきた、それしか思い浮かばなかった。


 もちろん俺の身を飲み込む謎の衝動だってあるさ。でも、やっぱり今の俺には、守るべき大切な人がいるからさ、だから———だから、その為に生きるって、決めたんだ」



「じゃあ、やっぱり、私もいないとダメ?」


「……そうだな、何せ俺にとっての守るべき大切な人だから」


「守られるだけとは思わないでね……私もこの2年ですっごく強くなったんだから!」


「ああ、って事で……」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「って事で……って、やっぱりご飯なのね」


 着いたのは、前の宿とは外見以外ほとんど変わらない、王都にしては質素な宿の2階。


 その一角を、サナは半ば貸し切り状態で使っていた。



「……ハムハム」


「そう言えば、刀が欠けてるって言ってたけど、明日直しにもらいに行くの?」


「……ハムハム」


「白ってば、聞いて……」


「……食べてる途中に話すのは礼儀がなってないだろ」




「は、はあ……」


 師匠の教育で、食べてる途中には話さないってのは何故か特にこっぴどく躾けられたからな。




「とりあえず、明日からは鍛治職人のところを訪ねるしかないな、俺も刀無しじゃ非力なガキだ。……サナも……来るか?」


「一応……行っとこうかな」


「……よし、それじゃあ、今日はもう寝る」

「なかなか早いわね……そうだ、銭湯行きましょうよ!」



「せんとー?」


「ここ2年の間に、王都にて温泉が発見されたのよ! だからそれを用いて、今まで上流階級しか使えなかったお風呂が、民衆が使える公共のものとして設置されるようになったの。それが銭湯!」




 風呂。日ノ國では入るのが常識だったが、この大陸に来てからは全くもって入っちゃいなかった……が、そうか、風呂って上流階級しか使えなかったんだな。ようやく納得した。


 ……ただ。


「やめとく」

「え゛゛゛……なんでよ」


「めんどいし、眠いし、それじゃあ俺は寝る」


 ……そう、数年間ずっと風呂に入っていなかったんだ、今更入ろうと言われてもめんどくさい以外の言葉が浮かばなくなっていた。


「その臭い体で眠るって言うの?!」


「……えっと、女はそういうの気にするんだなとは思うが、俺はあんまり気にし……」


「だから、私が気にしてるのよ……パーティメンバーが臭いって事を……!」


「……」


「え……もしかして寝た……寝たっていうの?! 今の間に?! しかも地べたで?!」


「……」


「…………まあ、仕方ないわね、今日はあのロボットとも戦ったし。さーて、私は銭湯、行ってきますか……」







********

 そして、サナは何を想っていたのか。




 ……もう内心、私はこんな白を今のまま受け入れてしまっているのかもしれない。


 普通に考えたら、人を何人だって斬り殺してきた人と一緒にいる、だなんてやっぱりどう考えてもおかしいと思う。


 でも、この関係でもいいか、と思える自分がいて。

 2年の間、また白に会えるのを楽しみにしていた自分がいて。

 正直言えば、私は白が怖い。


 いつ白に襲われて殺されるかなんて分からないから。


 それでも、やっぱり白と一緒にいる事が。

 それだけでも白にとっては大切な事であって、白にとっての贖罪になるのなら。


 ……やっぱり、まだまだ旅に着いていこうって。そう思えたから。







********



 ……再会と新たな負債、白たちの旅は、まだまだ続いていきそうだ。

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