<ア ム>
「……い……いやあ、嘘よね、流石に嘘よね? だって白は死んだって……」
「いや……白です……生きてます……」
ドーム状の魔力障壁の上では激突音が鳴り響き続けてるってのに、ここにまさかの再会で呆然としている(元)パーティが1つ。
「……白……生きて……」
「ああ、もちろん、な? お前が生きてくれ、って。
この俺に生きてくれって約束してくれたから、今の俺はここにいる。それに関しては感謝する……ぞっ……?!」
「よかった……生きててくれて……!」
目に涙を浮かべる弱々しいその姿は、約2年前のあの時を彷彿とさせるものだった。
……だが。
「サナ、泣いている場合じゃないかもしれない、感動に浸るのはまだ後にしよう」
「そ、そうよね……まずはヤツを倒さないと」
「ちなみに、さっきの爆裂魔法って……お前か?」
サナと俺が別れる数日前、サナはさまざまな魔法を習得していた。つまり、魔法発動の張本人はコイツって可能性が……!
「エ……エエエ? ナンノ……ナンノコトカナ?」
明らかにイントネーションがおかしい。どう見てもコイツである。
「……まあいいか、とりあえずサナ、爆裂魔法をぶっ放してくれ」
「またそんな脳筋戦法でいくっての?!」
「当たり前だ、俺でもアレは斬れなかったんだ、あの装甲を上回る火力でゴリ押すしかないだろ」
「い、いやあ……さっきの爆裂魔法で残存魔力量がね……」
「やっぱり爆裂魔法撃ってたんじゃないか! つーか魔力量の管理もできねーのかよ、着弾するまで時間かかる魔法なら使うんじゃねーよ!」
「仕方ないじゃない私の一番のコスパのいい高火力魔法なんだから!」
「あんな何発もポンポン撃てるわけでもない魔法を……無駄にしやがって……! 一体全体どうやってヤツを倒すってんだよ……この馬鹿……っ!」
「馬鹿じゃないもんっ!」
「いい~ゃ馬鹿だ!」
「……知らないわよそんなの! ヤツの装甲を貫く火力なんて……
火力……なら……!」
……その時、サナの脳内には妙案が。
「どうしたんだ?」
「あるじゃない……火力なら……! 他ならぬヤツが持ってる火力が……!」
「……まさか、ヤツのビームか……?」
「確かにそうよ! アイツのビームを、アイツの身体に直接当てればいいんだわ! 完璧な作戦よね! 不可能かもしれないという点に目を瞑れば!」
「できるかどうかなんて賭けでもいい……やる以外に道はない……!」
「ふふん……やっぱり私は馬鹿じゃない~♪」
一方その頃。目覚めしロボットは不動の岩の様にただひたすら立ち尽くしていた。
……そしてただただ、破壊すべき敵を探し求めていた。
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……誰もがそのたった1つの鉄クズにすら勝てないと絶望し、恐怖し悔しがったが、俺たちは既に作戦を組み終えていた。
「……いいぞ、準備は出来てる……!」
「それじゃあいくわよ……! 錬成開始、凍結魔術クリスタル!」
広範囲に広がる冷気は次第に地面にまで及び、辺り一帯を完全に氷付けにしてしまった。
しかし、氷に覆われたのは建物とロボットだけで、人間たちは皆冷気から逃れていた。このような繊細な魔力行使も、魔術の才能が突き出ているサナの得意技だ。
ロボットの単眼が明らかにこちらを向く。
……だが、コイツは計算済みだ……!
瞬間、光が放たれるが、サナは跳び上がって、俺は横に跳んでビームを避ける。
まるで、2人でダンスを踊っているかのように軽やかに避けて……って、ボーっとしてる場合じゃない。
単眼の赤い模様は確実に俺を追ってきている……!
よし、ここまでは順調だ……!
「いいぞーーっ! 氷魔術の用意だーーっ!」
上空にいるサナに向かって合図をする。
「背水の陣……脚ノ項!」
速く、速く!
吹き抜ける風の様に、流れ去る川の水の様に速く!
ただ速さを求めて走る……!
サナが氷魔術で作った氷の壁を避け、ヤツの視線を潜り抜けながら接近する。
およそ5メートル、といったところで氷の壁に身を隠し、
「もう大丈夫だーーっ!」
と合図を送る。
……そう、もう氷の壁、ヤツの射線を遮る遮蔽物は必要ない。
すかさず氷の壁から飛び出し、ヤツめがけて一直線に走る。
「さあてとぉ!……ショウタイムだっ!」
「白の世界」へと意識を移す。一瞬だけだが、極ノ項を使う……!
ヤツの単眼は今こちらに気付いたが、もう既に手遅れだ……!
ただ走るだけだが、目標地点はヤツの単眼じゃない。
真の目標は、ヤツの足と足の間。縦数十センチのみ浮いているそこを、スライディングで切り抜ける……!
ヤツは単眼に光を走らせ、ビームをヤツめがけて走る俺に撃ってくる。
……だが、その判断が間違いだ……!
ロボットであるが故、いつまでもターゲットを追い続けていれば倒せるとでも思ったんだろうか。
そう、いつまでも俺を追うのは構わないが、
「自分の身体に当たらない様に———気をつけた方がいいぜ?」
ヤツの地面と身体の隙間を潜り抜ける。
もう少し頭を上げていたらと思うと、恐怖で頭がどうにかなってしまいそうで、想像もしたくなかったのだが。
正直言って、賭けだった。ヤツのビームはヤツ自身の装甲を貫くぐらい強力なのか、と。
……だが、その賭けには勝った。
ヤツの単眼は浮いていた。ので、それを利用させてもらった。
うまくヤツの視線を誘導し、ヤツのビームで自身の図体をかち割ってやろうと、そういう魂胆だった。
……結果は、見た通り。
火花を散らしてヤツの鋼の図体は真っ二つに割れ、中からは高温で溶け、オレンジ色に変色した鉄が全貌を晒していた。
「███深刻ナ……深刻、ナ、エラー、ガ…………発生……シマシタ███」
完全に勝った、と思っていたその時。
「---修理、ハ、不可能、ト、断定。[自爆プロトコル]ノ開始……コノ身体ヲ捨テ、辺リヲ一掃……シマスマス---」
負けそうになったら自爆する。ゴーレムのお約束だ。
って、めちゃくちゃやべえじゃねえか!
周りに人は……って俺たち以外いねえ!
ついでにガスもいねえ!
まあ、他人を気にせず逃げられるから、好都合ではあるのだが。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「はあっ、はあっ、はあっ!!」
「おっお前白か?! どうだ、ヤツは倒せ……」
無我夢中で走った後、横にいたのはガスだった。
「……ああ、ちゃんと、倒せたよ」
次の瞬間。地を揺るがす爆音。
「……まあ、自爆したけど」
振り向けば、赤く染まった空が。
「……ガス、俺は今、何で逃げたのかお前に問い詰めようと思ったが、お前が正解だ。逃げててくれてよかった」
「ってかどうすんだよ白! 多分あの村、弁償だぞ!」
「……なんだって?」
……なんだって?
弁償??
「いや、依頼の注意事項に、村が破壊された場合は勇者の自己責任で……って。しかも、他の勇者は逃げちまったから、必然的にお前が弁償を……」
……と、そこにサナが降りてくる。
「なあサナ、俺たち、再会したばっかだけどさ、」
「どうしたの白?」
「村、どうすんだ?」
「弁償……って事?」
「……多分な、金、持ってるか?」
「え……いや、幹部討伐の金は……この2年くらいの間に使ってしまって……」
「…………ガス、払ってくれないk……」
横を見たが、もうガスの姿はそこにはなく。
代わりにそこにいたのは、村に住んでいた人たちだった。
……ああ、やっぱり何で逃げたか、小一時間問い詰めるべきだった。
「サナ、とりあえず……逃げるぞ! せっかくあの鉄クズを倒したのに、弁償なんてごめんだ……!」
「な……なんでこうなる訳よ……!」
……なるほど、資金不足か、またまた戦う理由ができてしまった。
あまりの理不尽さを噛み締めながら、逃げる様に、というか逃げる為に、その場から走り去った。




