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もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜  作者: 月影弧夜見
第4章:新・二千兵戦争
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反転/黒幕

 血を舐めた瞬間。頭がどうしようもない高揚感に包まれる。

 あの時の感覚。

 あの時の快楽。

 ———全て、思い出した。


「背……水の……陣……手ノ項……!」


 目の前にある「エサ」に今すぐにでも飛びつこうとする。

 魔力が流し込まれる。

 刀を握りしめ、腕ははち切れそうなくらいに力を強めた。


 そして、1周。

 円を描くように、刀を振る。

 周りを取り囲むエサは、皆腰から崩れ落ちていく。


 ……まあ、腰の下を斬り裂いたのだから、当然のように皆、腰より上半身から落ちていく。



 斬った。

 久しぶりに。

 人を。



 ———ああ、気持ちいい。


「ソウダ、コロせ。モット。オマエのココロのママにコロせ」



 頭の中にもう1人の自分が語りかけてくる。


 うるさい、ウルサイ、ウルさイ。

 頭が頭蓋骨からひび割れ、骨ごと肌がバックリ割れるかの様な激痛が走る。


 でも、頭の中はどうしようもないほど快楽に満ちていた。


 スッと刀を入れた後、骨と骨の間を縫い、丁度関節部分を切り裂いた際の快感。飛び散る血と紅の空模様。


 まさに芸術とも呼べるものであった。

 赤く染まった地面。全てが、俺と()()()の好物だった。



 それでも、エサの数にキリはない。

 何度でも、何回でも、斬って、斬って、斬り殺して、斬り刻んで、斬り裂ける。


 絶好の、人斬り日和だった。


 ひと振り毎にズシャッと鳴る斬撃音と共に、血を吹き出しながら落ちていく上半身。


 たまに飛びかかってくるエサだって空中で解体するし、エサだかりの間を縫って近づいてくるエサも問題なく斬り伏せる。


 全て、全て、全て斬り殺し、蹂躙していく。




 殺戮。虐殺。それが、今の俺にとっては楽しくて仕方なかった。


 目の前のエサを1個1個両断する。あちらにとっては俺に対する復讐のつもりでやってるんだろうが、全くもって雑魚ばかりであった。


 痛みも快感だった。歯を食いしばってなお、耐え難い快感が身を襲う。





 目に移る動くもの、全てがエサに見える。



 ———ふと、目が吸い付いた———(サナ)以外は。





 ———反転。




 何を、しているんだろう。

 斬り殺してきた手が止まる。足が勝手に後退する。


 俺は、俺は、何してるんだ?

 サナを見た時、ただの一瞬だけ正気に戻った。


 だが、目の前の惨状を目にして、一気に恐怖が自身を襲う。


 なぜ?

 どうして?


 なんで人を斬るのが楽しいと思ってしまうんだ?

 どうして、約束したはずなのに、また殺してしまうんだ?



 その時、またあの声がする。


「キにスルな。コロせ。コロせ。キりコロせ。ジブンのやリたいヨウにシろ」




 ……ダメだ。

 ダメに決まってるだろ、そんなの……!



 改めて、自分の取った行動を振り返る。

 そうだ、俺は———誰も殺さないって、約束したはずなんだ……!


 絶対に、誰も殺さないって……!

 ヤメロ、ヤメロ、やめロ……!




 必死に衝動を抑える。

 自然と涙が溢れ出す。

 今なお、敵を殺さんと震える刀を握りしめた拳を、もう1つの拳で握りしめ押さえつける。



 もう1度、サナの顔を見る。


「やめて、白っ!!」


 必死に叫ぶサナの声。

 そうだ、そうじゃないか。

 聞いてなかっただけで、サナはずっと俺に呼びかけてくれていたんだ……!


 ようやく、周りのコエも聞こえるようになってきた。





「嫌だ嫌だ嫌だ……やっぱり俺死にたくない!」

「こっ……殺すんだろ?!……早く……早く誰か行けよ……!」

「嫌……嫌ぁっ! 私……あんなになっちゃうの……?」





 一時戦況は停滞し、冷静になった敵は積み重ねられてきた死体を見て、ただただ恐怖し戦慄する。

 やっぱり……やめよう。


 こんな事、やめるべきだ。

 俺が言える話なんかじゃないけど。自分から始めておいて、それは虫が良すぎるってもんだけど。


 ……それでも、ここで血に染まらない、話し合いへの道を提示すべきだ……!


「……………………もう、やめないか?」


 敵は皆首を傾げる。


「もう、こんな事、やめに———、」



 言いかけた瞬間。

 耳をつんざく悲鳴が響き渡った。



 目線を上げると。

 縛り付けられた二の腕を刀で貫かれているサナと。


 その横に立って、どうだ、と言わんばかりの姿勢とにやけ顔で立っている赤い服の男。

 1度冷静になった思考が再び沸騰し始める。




「何、…………何やってんだあっ!」


 すかさず身体強化魔術で跳び上がり、サナが縛り付けられている台に向かって着地姿勢をとる。


 その時見えたのが。サナの縛り付けられた台を取り囲むようにして居座っている、赤い服の連中。


 刀を構え、着地と同時に男に斬りかかる。

 男は刀で俺の攻撃をガードする。


「そいつは……そいつは関係ないだろ……! なぜそいつを、サナを……傷つけた!!」


 最初の目的を思い出す。



「へへっ……コイツはお前の大切な女なんだろう? だから傷つける。何か……悪いか? お前だって、さんざん奪ってきたくせして何を……言ってんだよ?」


「だからって……奪わせてなるもんかあっ!」


 一層力を込め、男の刀を押し返す。

 一瞬だけ背後に目線をやる。


「護って———みせるんだあぁぁあっ!」


 刹那。既に俺は、台の下から刀で突き刺そうとしてくる敵の目を潰していた。


 刀を振り抜き、前を向いた瞬間、目線の先から刀が飛び込んでくる。

 すかさず頭を横に振り直撃を回避した後、男の胸を思いっきり突き刺した。



「し……ろ……」


「……大丈夫か、他にケガは?」


「……他はないわよ……大丈夫……」


「そうか、なら……」





 男は息絶えた。それを確認した後、男から刀を抜き、大声で今の感情を吐き出した。



「なあ、もうやめにしないか、こんな事。お前たちだって死にたくはないはずだ。


 俺だって殺したくはない、虫がいいってのは分かってる! でも、こんな事続ける理由なんてないと思うんだ!」


 ありったけの気持ちを言葉にして叫ぶ。




 少し間が空いた後、1人の青年が叫ぶ。


「そうだよな、それがいい! いくら親や兄弟が殺されたからって、何も殺し合いをする必要はなかったんだ、俺は乗るぞ! 例えコイツがどれだけ信用できなかろうと———」



 言いかけたところで。

 青年の首がすっ飛んだ。


 首には、おそらく何者かに斬られた断面。

 俺は人だかりより上の台にいるってのに、男を斬った何者かの姿も、太刀筋も、何1つ見えなかった……!





「何を、ふざけた事を言っている?」


 先程まで男がいた位置から響き渡る女の声。




「やめる? 殺し合いをする必要はない? そんな訳ないだろう? 私たちは何のためにここに集まった?


 誰の為にこんな事をしている、皆の者よ、もう1度よく考えろ。


 私たちが今すべき事は、父の仇、母の仇、兄弟の仇を討つ、ただそれだけの事だろう??」


 ……どうやら、黒幕のおでましらしい。

 ———しかし、このドス黒い殺気。

 もはや瘴気と化している周りの魔力。


 コイツらは、魔王軍の息のかかった者たちだ……!

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