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もしも願いが叶うなら〜No pain, no life〜  作者: 月影弧夜見
第3章:緋色のカミ( Ⅰ )/救世主(セイバー)
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修行( Ⅲ )/別れ

◆◆◆◆◆◆◆◆


 次の日の朝。

「よし、次は浮遊の練習だな」


 朝食を食べ終え、次に黒から告げられたのは浮遊の方法だった。



「なあ、背水の陣の練習はもういいのか?」


「まあ、脚の項と手の項を使えただけで充分だし、後は白、お前の問題でもあるからな。


 まあ、白単騎でも『黒騎士』と『ダークナイト(ネットリボイス)』以外の魔王軍の幹部とやり合える位にはなっただろう」



 ……今の俺って、そんなに強くなってたのか。


「って、今の奴らは何だ? 黒騎士? ダークナイト?……誰だよそいつら、ダークナイトに関してはなんでそんなに、ヘンに名前をカッコつけて読むんだ??」



「……え、白知らないの?」


 驚いたサナが口を挟む。


「……いや、聞いた事ないけど?」



「……えーとな、黒騎士とダークナイト (ネットリボイス)はな……魔王の右腕左腕と称される位の実力の持ち主だ。


 黒く輝く甲冑を纏い、魔王軍戦線においては、邪魔する者を全て冥府送りにしてきた本物の実力者だ。特にダークナイト(ネットリボイス)に関しては素顔を見た者すらいないとか……」



「会ったり見かけたりしたら逃げるのが1番!……まぁ、逃げられた人はごく僅かだけど……」


 ……なるほど、俺はとてもヤバい奴について聞いてしまったらしい。




「あ~、あ~、そんな物騒な話はやめにして、早く浮遊の練習に取り掛かりたいなー、なんて」




「お前も黒騎士に勝てるくらいには強くしてやろうか?」


「え」

「そんな事……できるの?!」


 俺よりもさらに驚愕したサナが、思い切り目を見開き黒に詰め寄る。

 ……そんなに、黒騎士ってヤツは強いのか。



「ああ、俺ならば、ヤツに勝った事がある。なんならヤツの戦い方は熟知したつもりだ」



「え……えと、なんでそんなに知ってるんだ??」


「……俺は、ヤツと同じ師匠の下で修行を積んでいたからだ。魔王軍を倒す為に。


 まあヤツは力を追い求め、結果魔の道に堕ちてしまった訳だが」



「凄いな……」

「あの黒騎士と黒さんの師匠って……一体何者なの……?」



「宗呪羅」

「……へ?」

「だから、俺たちの師匠は雪斬宗呪羅だ」



 ……雪斬、宗呪羅。


「……え?」


「えと……アレでしょ? 宗呪羅って……不死身って言われた剣士の……」


 どうやら、サナも知っている……ようだが。




「そうだが?」

「……でも、あの人って国際指定人物に上がっていた様な……ってどうしたの白?」



 雪斬宗呪羅。そう、間違えるはずもない。

 ……俺の、師匠(恩人)だ。


「……実は俺も、宗呪羅に……色々とお世話になって……」


「……お前もだったのか、って事は、俺はいわゆる『兄弟子』って訳だ!」


 なんだか黒はやけに上機嫌でかなり嬉しそうだった。




「ねえ、私の周りの人って……どうしてみんなして経歴が濃すぎるのよ……?」


「さあ、無駄話はおしまいだ。野菜生活、抜け出したいんだろ?」


「……そうよね、もう野菜は懲り懲りよ……」


「確かに、そろそろゴブリンのステーキにでもかぶりつきたいぐらいだからな……!」





「さて、浮遊法だが、まずは2つあるうちの1つ目を教えよう。2人とも、魔力障壁って出せるだろ? その魔力障壁を浮かばせる事はできるか?」


「いやいやいや、魔力障壁を浮かばせるなんてできる訳が……」



「私はできるわよ」


 そうだった。サナは魔力の潜在能力がピカイチだったんだ。そんな俺には想像できない事も出来て当たり前だよな……




「えっと、白はできないのか?」

「できません」


 キッパリ言ってやった。



「それじゃあサナは自分で浮かせた魔力障壁に乗る練習をしておいてくれ、俺は白に魔力障壁の浮かせ方を教えるから」


「……できたできた! 乗れたわよ! 魔力障壁に!!」


 そこには、紫色の魔力層に乗って浮いているサナの姿が。コイツどんだけ万能なんだよ。




「そうか……だったらそこら辺で暇を潰しててくれ……参ったな、こんなすぐに習得されるなんて……」


「それで、魔力障壁の浮かせ方ってどうするんだ?」

「まず、地面に並行にして魔力障壁を作ってみろ」


 そこからはイメージに全てを委ねる。

 平べったくて、薄い感じの魔力障壁が思い浮かんだ。


「ふんっ!」


 力を入れ、魔力を型に流し込む。


「できたな、それじゃあ、次はそれに乗ってみてくれ」




 薄っぺらい魔力層に足を乗せる。


「次は、そのまま自分ごと魔力障壁を浮かせるんだ」






 言われた通りにイメージする。

 力を抜き、目を瞑り、身体ごと宙に浮くイメージで……!


 ん? 身体ごと宙に浮くイメージ……?


「……できた! 今俺宙に浮い……て?」







 ……俺が浮いているのは紛れもない事実だった。しかし、


「えっと……白? 魔力障壁を……どうして魔力障壁を床に置いたまま、浮いてるの?」


 あまりの光景に目を疑ったのか、目を見開いたままサナも口を出してきた。



 ……そうだ、魔力障壁は接地したまま、自分の身体だけが宙に浮いていたのだ。


「嘘だろ……俺は何1つ教えちゃいないってのに……もう習得したのか……」




 黒のあまりの驚愕ぶりに少し困惑する。


「えっと、もしかしてこれって……2つ目の……ちょっと名前がややこしい浮遊の仕方だったり……する?」




「……そうだ、それが時空間固定浮遊法だ。……1つ目の、俺が教えようとしてた浮遊法より魔力消費がかなり多く、コントロールが難しいが使いこなせればかなりのスピードで飛行できる、緊急用の浮遊法だ」


 ……黒、迅速かつ丁寧な解説ありがとう。


「つまり……俺は浮遊できた、と?」


「そうだ。しかも、1つ目の浮遊法を教える時のイメージでそうなったのなら、正直言って、1つ目の浮遊法は()()()()()()





 ……待って、待って待って。今かなり重要な、衝撃な事実を告げられたような……?


「白、よく聞いて、魔術を扱う際には、その人個人個人でどんなイメージでするかってのが1人1人異なるのよ。


 で、黒さんが1つ目の浮遊法のイメージを伝授してた時に、白がそのイメージでその……名前の長い2つ目の浮遊法を扱えたから、1つ目の浮遊法が、白にとってどんなイメージでできるのかが黒さんにも分からないわけ」


「……は……?」




「白、難しい話だが、要約すると俺には1つ目の便利な浮遊法は教えられないって事だ」


「え……」


 つまり、俺はこれから空を飛んで移動する際、コントロールの利かなくて魔力消費も多いコスパも悪いリスクも高い方法で浮遊しなきゃならない訳か!!



「嘘だろ……俺の魔力量……どんだけ少ないと思ってんだよ……!」



 とそこに、サナがフォローを入れてくれた。


「大丈夫よ白、白には刀があるでし……」


「魔術万能女子に言われたくないっ!」


 だが、自分の魔術の才能に嫌気がさし、少し涙目で潤んだ声でそのフォローを突っぱねてしまった。




「仕方ない、白はもうそれを使っていくしかないんだ。いいじゃないか、サナの作った魔力障壁に乗せて貰えば」


「自分で作りたかったんだよおっ!!」


 あまりの劣等感、そして実際の状況を想像した時の恥ずかしさからか、もう心の中でギャン泣きである。

 後になってめちゃくちゃ恥ずかしかった事は……もちろん言うまでもないだろう。






◆◆◆◆◆◆◆◆


 ……その後、なんやかんやあって2日かけてサナも2つ目の浮遊法をマスターした……なんやかんやで言いまとめられるほど何もアクシデントはなかった。


 なんやかんやで言いまとめられる才能恐ろしや。



「……さて、これでようやく修行が終わったな、どうだ白、最後にひと試合しとくか?」


「……いや、別にいい……です」


「よーやく野菜生活からの脱却!! まずは王様から魔王軍幹部討伐報酬をむしり取って、レストランでゴブリンステーキパーティね!!」


「……ちゃんと野菜も食べろよ……そういえば、あの魔王軍幹部のインフェルノドラゴン討伐報酬も、お前らの手柄にしといてやるからな」


「マジで?!」


「つまり……宿生活ともおさらば……!……って訳ね!!」



「…………でだが……白、ちょっとこっちに来い」


「あ、ああ、分かった」




◆◇◆◇◆◇◆◇





 黒の言う通りにし、2人だけであの巨人 (?)の首に移動する。



「白、お前には生きていてもらわなきゃならない。それが俺の使命だからだ。


 でも、困ってるやつがいたなら、積極的に助けてやれ。それもお前にとっての贖罪だ」



「……おいまさか、この前の俺たちの話聞いてて……!」


 あまりの恥ずかしさに顔が真っ赤に燃え盛るが、黒はそんなこと気にも止めず、笑顔で話を続ける。



「……それと、困った事があったらいつでも俺を頼れ。俺はここで待っているからな」


「……分かった」


「更なる強さを求める際も俺を訪ねろ。その時は背水の陣の()()()()を伝授してやる」



「えっ、まだあるのか?」


「『まだある』言うな。


 ……ん、そうだ。背水の陣『極の項』がまだ残っている。言っただろ?背水の陣は習得に数年かかった、って」


「……」






「じゃあな、白。人生は1度きりだ。どんなに罪を重ねようが、その罪に囚われる人生を歩んでいてはあまりにも哀れだ。


 だから、迷え、葛藤しろ、選択しろ、お前の人生はお前が決めるんだ。いいな?」





「…………もちろん。どれだけ迷っても、どれだけ罪を重ねようとも、俺は俺なりの幸せを掴んでみせる」


 その言葉を言い終え、ふとした時に黒は、もうその姿を消していた。

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