そして簿記試験へ
ついに簿記試験に臨む輪太郎。果たしてうまく問題は解けるのか?
6月8日日曜日。
今日は待ちに待った検定日……そう、第65回 日商簿記検定の日である。
受験するのは3級で、勉強してきた限りそこまで難しくはないはずだが、とはいえ、油断していい内容でもない。
最後の2週間は少々無理をせざるを得なかったが、それでも、時間的には十分かけることができたはず。
きちんと勉強をしてきたつもりだ。
そつなく合格できるよう、最後まで頑張りたいと思う。
さて、あらかじめ送られてきた受験票によると試験開始は今日の朝9時から。
それから試験の説明が行われ、試験用紙が配布されて本番が開始。
試験時間は60分とのことだ。
とりあえず、母の車で会場まで移動するのだが、自宅から会場までおよそ40分。
ギリギリにつくわけにはいかないので、少し早めにと1時間半前に出発した。
長六橋で白川を超えて河原町に入り、そこから紺屋町の熊本商工会議所へ。
現代だと長六橋から紺屋町に抜けるにはのたくる下り坂をおりる必要があるが、この時代だとまだ道路のつけなおしが行われる前で直接まっすぐ入ることができる。
付近に着いたら近在の駐車場に車を止め、道を渡って商工会議所の敷地内へ。
週末でひとけがない施設の入口には張り紙の誘導看板が張られ、館内へと人をいざなっている、
母と一緒に商工会議所の中へ。
入口へ入ってすぐに次の誘導看板がある。誘導に従ってエレベーターで3Fへ上がる。
今日の検定試験はは3Fの会議室で行われるらしい。
3Fへ上ると会議室の前には職員の影。あたりには他の受験者の姿も確認できる。
母は中に入れないので会議室前のロビーで待っているそうだ。
母を置いて会議室へ。
職員に受験票を見せるとやや驚いた顔をしたが、会議室の中へ入るよう誘導される。
さっきの驚きはなんだろうと思ったが、周りの受験者の姿を見て、直ぐに年齢によるものと気づいた。
こりゃ主な受験層と年齢差があるのかな。やりづらくないといいけど。
会議室の中に入ると思ったよりたくさんの受験生の姿。
高校生と思しきメンバーの集まりに大学生らしい連中がそこそこ、もちろん社会人の姿もちらほらとある。
全体的に年齢高めのメンバーの中にただ一人混じった中学生、それが俺だ。
俺が入った瞬間にちょっとだけ会話が止まる。
「うわ、中学生?ちっちぇえ」
「え、私が落ちて中学生が受かるとかなり精神的に辛いんだけど」
「この試験、落ちれなくなったわー」
高校生たちの声が漏れ聞こえてくる。
やりにくいなあ、もう。
誰が受かって誰が落ちようが、本人の問題だろ。
結構全力で勉強してきたから俺は落ちるつもりは無いぞ?
騒然とする高校生を横目に受験票を見ながらとっとと自分の席に移動する。
受験番号43番。前から5列目の左から3番目。うん、ここだ。
とりあえず、席に着いたら復習ノートをパラパラとめくって内容を確認する。
うん、問題ない。ノートを仕舞って時間を待つ。
しばらくすると、スーツ姿の試験官がやってきて、試験に関する説明が始まった。
さあさあ、これからが本番だ。
勝負の一時間。
何とか問題なく受かりたいところだが、どうだろうか。
配られた問題用紙を伏せてはじめの声を待つ。
スーツ姿の職員が問題用紙が全員に配られたのを確認すると、始めと声を上げた。
問題用紙のページをめくる。
うん、行ける。
俺は、自信をもってどんどん解いていった。
つまるところ自体がほとんどない。知ってさえいれば大丈夫な問題ばかりだ。
まあ、ほとんどの資格試験はそんなものなのだが。
今のところ全く意味の解らない設問などはない。
これなら満点とはいかなくても合格までなら何とかなるんじゃないか?
最後の大問の問1である決算整理後残高試算表を作りながらそう考えた。
15分ほど残して全問を回答し、2度の見直しを終えた俺は解答用紙を机に伏せた。
特に解けない問題はなかったので、自信を持って言える。
これなら多分合格できているだろう。
問題側の余白に落書きをしながら試験終了の時間を待つ。
書いてることは大体次のプログラムについてだ。
PC-9801 VM2を調達したら最初に作るのはなんだろう。
先ずはフルスクリーンテキストエディタが欲しい。
ラインエディタのEDLIN使ってプログラムを書くのは見通し悪くて辛いからなあ。
多機能でもEMACSみたいなバイナリデカいのは要らない。
といって、vi系ほどキーバインドやモードが特殊なのも使いにくい。
まあ、どちらかの系譜を使えというならviでなくてvimをタブモードで使うけどな。
実用上でいくならVZみたいなファイラ付きの汎用エディタでしょ。
でも、VZってまだまだ登場は先だし(1989年)、だからと言ってVZを自作するのは時間の無駄だ。
最小限の機能を備えたエディタを自作する方向だな。
先ずはテキストVRAMを直接いじって文字表示を行う高速エディタを準備して、それに機能を足してく感じだな。
当面はマクロ機能は無くてもいいだろう。
起動時に行数指定してその行を中心に開く機能や行番号の表示非表示と自動再付与あたりは欲しい。
まだBASIC全盛だからなあ。
自動インデントは当面なくていいかな。
アンドゥとリドゥ、カット&コピーペースト、検索とGREP、ワードジャンプに行番号ジャンプ辺りは必須か。
あと、クリップボードヒストリと全角空白とTAB文字の区別表示機能は欲しい。
クリップボードヒストリは他のプログラムからも参照できるようにディスクに保存機能も欲しいな。
FDDは遅いから、アンドゥやヒストリの数は自分で設定可能にする。
それで、全部保存するか、終了前だけ保存するかを選べるといい感じかな。
軽快に使いたいなら保存は終了時のみ、細かくヒストリ残したいなら遅いけど全部保存とかって感じ。
可能ならチェックサム付きバイナリエディタ機能が付いているともっといいな。
これでソースファイルを作って、あとはアセンブラでアセンブルしてプログラムを作る感じか。
かな漢字変換は一太郎を購入するんだからATOKが使えるだろうし、このくらいあれば特に問題はない気がする。
うん、日常使いでは問題なさそう。
次に作るのがDiffとPatchか。
ファイル間の差異をテキストファイルで保存してくれるDiffと、保存された差分を元のファイルに適応できるPatch。
これが無いと、複数人でのプログラムに支障をきたすから、絶対に必要。
Diffが出来たら、バージョン管理ソフトも作れるけど……Subversionやgitを運用するにはディスク容量が足りないなあ。
当面は保留かな。
そっから先は作りたいものを作っていいと思うんだよな。
最初に作るのは何だろ。
とりあえず、まずは業務アプリがターゲットなんだよな。
今の所、狙う市場は会計ソフトなんだから、レポータ周りかデータまわりかか。
FDに保存できるデータ量だけで会計処理をするんだから、データ形式がベタのテキストファイルやCSVじゃ限界がある。
データの保存量を極力少なくて済むようにするなら、必要に応じてデータの圧縮が可能なリレーショナルDBかな。
数字だけならデータ量はかなり小さくて済む。
会計処理なら日本語テキストが必要な部分も使いまわしがほとんどになるはずだ。
仕入れが同じ会社なら入力する内容も同じ内容になりがちだからね。
となると、日本語部分はリレーショナルにしてIDで日本語を割り付ければ、かなりデータは小さくて済む。
そのうえで四則演算や集計、最高値、最低値、平均あたりの機能を付ければ簡単な物なら十分作れるだろう。
まあ、現物としては軽量なSQLiteっぽいものを自分で実装すればいいか。
あとはそこからカード型風のインターフェースを自作して入力画面を作っていく。
同様に、入力されたデータを元に集計して帳票にする部分はレポート画面を作る感じだな。
となると、順番的にはデータベース作るのがいっちゃん先かな。
データベース部分を初期化して完了したらメニュー画面を初期化する。
メニュー画面からボタン遷移で入力フォームやレポータに画面遷移する。
で、印刷すると、プリンタから結果レポートが印刷される。印刷完了したらレポータ画面に戻る。
こんな感じの実装かな。
他のツール作るにしても、データベースはどうせ必要になるし。
データファイルは外だしで作れば、同じファイルを別のアプリから参照出来て便利そう。
最終的にはHDDが大容量化するに伴って、国産ERPを目指してシステム拡張していけばいいと思う。
そのころには1人でじゃなくて複数人で開発するようになってるだろうな。
まあ、それもこれもうまくいけばの話だけどね。
はてさて、本当に思った通りに行くかどうか……。
メモを取りながら考えているうちに時間が過ぎた。
時間が近いのだろう、スーツの職員がちらちら時計に目をやっている。
簿記試験も終了の時間なのだろう。
スーツの職員の止め、の声とともにテストが終わる。
解答用紙がが回収され、速い人はすぐに席を立つ。
俺も、メモしまくった問題のプリントをカバンに入れて会場を出る。
入り口付近からは受験者たちの悲喜こもごもの声が聞こえる。
上手くできたとか絶望的だとかいろいろだ。
見回すと窓際でこちらを見ている母が居る。
受験者たちをかわしつつ近寄ると声をかけられた。
「どうだった?うまくできた?」
「多分ね。
これで駄目だったら軽くショックな位にはうまく出来たと思う。
まあ、結果が発表されるまではホントの所は分かんないけどね。」
「まあ、それはそうでしょ。
でも、よくできたんならよかったわ。受けに来たかいがあったわね。」
「うん、これでまた目標に一歩近づいたよ。」
「そう、それはよかったわ。
さ、それじゃ、そろそろ帰りましょうか。
この時間なら11時半までには帰り着くでしょうし、お弁当を買って帰りましょう。
お父さんと幸子たち、おなかすかせてると思うわよ。」
話しながらエレベータ側へ移動する。
案の定混んでいるうえ、エレベータのスピードがそこまで早くない。
降りれるまでに2~3回は待つ必要がありそうだ。
母と2人、顔を見合わせると、エレベータ横の階段を降りることにした。
見てると他にも何人か階段で下りている人たちがいる。
まあ、黙って待ってるよりさっさと移動したほうが早いもんなあ。
「お昼ご飯、どこで買うの?
通り沿いだとそんな選択肢ないと思うけど」
「いつもの所にしようと思ってるわ。
いいでしょ?3号線沿いのお弁当のヒライで。」
「あー、あそこかあ。
解った。なら僕はカレーかな。」、
階段を抜け、正門側の出口を抜けると10時半の空は快晴。
室内にいたせいで少し目がしばしばする。
なんでこう、暑いんだか。
時期的にはそろそろ梅雨でおかしくない時期なんだが。
今月に入って雨降ったの6日だけじゃなかったっけ?
梅雨が間近とは思えない天気が続いている。
今年は梅雨が遅いと朝のTVで言ってた気がする。
あまりヒドい"から梅雨"にならないといいんだけど。
そう思いながら、駐車場の母の車に乗り込んだ。




