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図書当番とひかりちゃん。

図書委員の当番の日、輪太郎は久しぶりにひかりちゃんと出会います。

6月の4日水曜日。

今日の昼休みと放課後は図書委員の当番の日だ。

昼休みは特に変わったこともなく、先輩二人に作業を教えられ、無難に過ごした。


貸し出しは本を受け取ってから図書カードを取り出し、貸し出し者のクラスと名前と貸し出し日を書いて、貸し出し期限BOXに入れる。

貸し出し期限ボックスは週単位のくくりで用意されていて、今日借りた場合、そのカードを入れるのは3週間後のボックスになる。

毎週の週末にはその週の貸し出しボックスがチェックされ、残ったカードは未返却者一覧BOXへと移される。

その後、今週の箱は日付が付け替えられて4週間後の箱として再利用される。

最後に、未返却者一覧BOXに入れられたカードをもとに、図書館の入口に未返却者の名前が張り出され、各クラスの図書委員から督促が行われる形である。


返却はその逆で、返却の本を受け取ったら、今週の貸し出し期限BOXから順に調べて対応する図書カードを探し、返却日を書いてカードを戻す。

その後の、棚に戻すのがちょっと面倒だが、この学校では図書分類番号のほかに棚と段を表す棚段番号というのがラベルに記載されている。

そのため、図書室内の棚に付けてある番号さえ理解できれば1年生でも特に難しいわけではない。


あとは、貸し出し希望者が来るまでは、図書カウンターの内側でだべっててもいい、というわけだ。

小声でないと邪魔になるので声が大きくならないようには注意が必要だが。


ああ、なんでしゃべってても怒られないかというと、今と違って図書室にエアコンがないからだ。

そのせいで夏でも窓が開けっぱなしなので、どうしても外から音が入ってくる。

昼休みならまだいいが、放課後になると、中庭の対岸の上の階にある音楽室から響いてくる吹奏楽部の楽器の音が響き渡ってすごい音だ。

そのせいで、多少だべってても文句を言われない環境となっている。


放課後。

あまり人のいない図書カウンターで頬杖をついていると、久しぶりに会う人が図書館にやってきた。


「あれ、ひかりちゃん、どしたん?」


「あ~、竹尾かあ。久しぶり。

中学校入ってクラスが別だとなかなか会わないね。

図書委員だったんだっけ?」


「そ、7組の図書委員です。今日は何をお求めで?」


起き上がって話を聞く。


「えーと、氷室冴子って人の本で、なんて素敵にジャパネスクって本なんだけど。」


「ああ、コバルト文庫か。

んじゃ、そっちの棚だね。文庫本はサイズが揃ってるから通常棚じゃなくて専用棚のほうにあるから。

たしか、貸し出しBOXにジャパネスクのカードは無かったから借りてる人は居なかったと思う。

新刊じゃないし、多分、棚にあるんじゃないかな?」


「有名な本なの?」


「氷室冴子が人気ある、ってとこかな。

ほかの本を含めて結構借りる人は居ると思うよ。何度も借りてく人もいるし。

本自体も生徒の希望で何冊も入荷してますから。」


ちなみに、俺は冬のディーンシリーズとかも好きですねえ。

まあ、この時点ではまだ影も形もないので、話には上げられませんが。


「部活の先輩からのおすすめなんだ。

放送部で仲良くなった先輩が勧めてくれたの。」


「解ってる先輩だねえ。

ジャパネスク自体も面白いし、続巻も面白いから読み終わったらまた来るといいと思う。

3冊目まではそろってるよ。

あと、3冊目まで気に入ったなら、今月の半ばくらいには4冊目の続きが出るんじゃなかったかな。」


「詳しいね。

女の子向けの文庫じゃないの?」


「活字中毒に何言ってますの。

面白ければ読みますよ、少年向けでも成人向けでも、なんでも。

同じコバルト文庫で氷室冴子なら図書館にも入ってる雑居時代シリーズとか、ザ・チェンジあたりも面白いでっせ?」


「てことはコバルト文庫も読んでるんだ」


「最近だと火浦功あたりを読んでますなあ。

図書館に入ってるとは思わなかったけど、スターライトシリーズとかは結構面白いよ。」


まあ、この人、エタるの多いのが玉に瑕なんだけどな。

流し読みするには最適な軽さと面白さが両立しててかなり好きだわ。

そういえばもう少しでガルディーン発売される時期だっけ。

あれもエタるけど、面白いからまた買いそろえたい所だなあ。


「ふーん。パソコンばっかり熱を上げてるからこういうの読まないのかと思った。」


「いやいや、小学校の頃、図書館の本は大体読み上げてから卒業してまっせ?

帰りに限界まで本抱えてた俺見たことなかった?」


「あんま興味なかったから。

でも、言われたら確かに本持ってることは多かったかも。

へ~。そんな読んでたんだ。」


前世読んだ分もだいぶ含まれてますけどね。

まあ、活字中毒は嘘じゃないよ。


「えーと、それじゃあ……」


「ああ、ちょい待ち。

時間的な問題もあるから、先に本探しておいで。

話したいなら話は聞くから、貸し出し処理を先にしておいたほうがいいよ。

帰る直前になってからバタバタ貸し出し処理して、帰るのが遅くなってもアレでしょ。」


「あ、そうだね。」


ひかりちゃんはバタバタと文庫本の棚へ向かい、いろいろ見比べるとジャパネスクと思しき単行本を抜いてさっと戻ってきた。


「はい、これかな?」


十二単の女性が手に袋に入った琵琶でも持ってるような表紙。

うん、間違いないね。


「これだね。

じゃ、貸し出し処理するからちょっと待ってね。

クラス何組だっけ?」


「4組」


はい、1年4組、佐藤ひかり、貸し出し日6月4日、と。

カードを3週間後の貸し出しBOXへ突っ込んで作業完了。


「はい、終わったよ。どうぞ。」


「ありがと。

そういえば、図書委員って何時までなん?」


「4時くらいまでかな。

もう30分ないからさ。」


「なら、今日一緒に帰らん?」


「いいけど、またなんで?」


「アイスの借りを返してもらってなかったでしょ。

そんな本読むんなら、面白そうな本を紹介してほしいし。

先輩たちの知らない本とか紹介できると、先輩からの受けもいいでしょ?」


「かっこいい先輩でもいるの?」


「かっこいいって言っても女の先輩だよ。

ジャパネスク教えてもらった先輩なの。

放送機器を颯爽と使いこなして、かっこいいんだ。」


「へ~、そういう先輩がいるんだ。

あ、そういえば、放送部ってことはひかりちゃんもそのうち昼休みの放送当番とかやるの?」


「あれは放送委員会を兼ねてる人だけなんだけど」


「兼ねてないの?」


「兼ねてる。

いや、別に昼の放送がやりたくて部活入ったんじゃないの?

むしろ入ってから知ったの。

でも、先輩たちがいい人でやめられないの。」


「いや、そんな気にしなくて大丈夫。

ひかりちゃん、いい声だから放送当番やることになったら聞きやすそうって思っただけだから。

別に他意があるわけじゃないし。」


「……1学期は1年生の当番は無いんだって言ってた。

2学期からは時々やんなきゃ行けなくなるんだって。

私、機械のほうの当番だけがいいんだけどな。」


「そんな心配しなくて大丈夫だってば。

俺なら聞いてみたいかも。きっと人気出るよ。」


「うっさい。」


頭をスパンっとたたかれた。

ひかりちゃん、なんか、かお真っ赤になってるんだけど。


「女の子が微妙な気持ちのとときに突っ込まない!」


「いや、なにが?」


「そういうとこだよ。竹尾。

もうこれでアイスの貸し、3個目ね。

もうちょっと女の子の気持ちを考えなさい」


いや、それがわかれば50まで独身生活送ってないんだけど。

まあ、今回の人生ではもう少し理解できるようになりたいのは確かだな。


「いや、よくわからんが。まあ、気に障ったなら悪かった。」


「あーもう。

ごにょごにょ(何の気なしにいきなり)ごにょ(褒めないでほしい)ごにょ(んだけど……)

うーん、とりあえず、竹尾が当番が終わるまでここで本読んでてもいい?」


「解った~。もう20分くらいだからもうちょい待ってて。」


再び図書カウンターに戻って図書カードを整理する。

やることなくて、もう3回目くらいだが。

すると、棚の後ろから3年生の先輩の声が……。


「おい竹尾。あの子誰?」


「小学校の頃の同級生です。

まあ、ツレみたいなもんっすね。」


「それにしてはラブコメの波動が感じられたんだが……」


「先輩……。

先輩も男女で話してると何でもかんでもラブって人ですか?

少女漫画の読みすぎじゃなくて?」


「いや、俺だけじゃなくて三上ちゃんもニマニマしてんだけど。」


無言で俺の肩をバンバンたたく三上先輩(2年生女子)

しかし、前世で俺は知っている。

三上先輩はラブの気配さえあればNLだけでなくBLまで行けてしまう逸材だということを。

だから、勘違いも相応に多かったということを。


「いやー、そりゃ無いっすよ。

そもそも会ったのも久しぶりっすから。

親御さんもいい人ですし、いい子ですけど、その線は無いと思うっす。」


「いやー、お前、そりゃお前がそういうならそれでもいいけどさあ。


てか、今日は残ってる生徒、もう待ってる彼女以外居ないだろ。

彼女帰れば図書室締めていいんだから、連れて帰れ。

鍵返すのは俺がやってやるから、今のうちに窓締めとけよ。

窓締め終わったら先に上がっていいぞ。」


「そっすね。それは助かります。

んじゃ、そうさせてもらいます。」


片づけを手早く済ませると、荷物を抱え、ひかりちゃんを伴って図書室を出た。

約束通り、学校の目の前のスーパー、寿屋でアイスを買って食べながら帰る。

最近は気温だけでなく湿度も上がってきている。ホームランバーは小中学生の救世主だ。


5月末からやっと解禁された自転車で並走しながら俺たち2人はだべり続けた。

新井素子の星へ行く船と扉を開けての良さについてとか、竹宮恵子の絵の素晴らしさとかについてを。


……後で考えると結構俺が話してた量が多かった気がする。

一応にこにこして聞いてくれてたけど、どうだろう。

機嫌悪くしてなければいいけど。反省しよ。


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