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白いキャンバスを目指して

中間テストの終わった次の日、輪太郎は美術部でキャンバスを張る作業をするのでした。

話は少し戻る。

中間試験が終わった次の日。5月17日、土曜日の午後。

俺とサトルは美術室にいた。


この時代の中学校は土曜日が午前中授業だけ(半ドン)であった。

よって、なにもない学生は昼前には帰宅する。

それなのに、俺たち2人がなぜ美術室にいるかというと、部活動のためである。


4月中はまだ勧誘期間で部員が確定しておらず、5月は直ぐに中間テストに入るため、本格的な活動は行えない。

だから、中間試験の終わったこの日、17日が本格的な活動が行える最初の日になっていた。


当然、美術部も例にもれず、美術室に集まって本格的な活動を開始する。


何をするのか?

油絵を書くためのキャンバス作りである。

卒業した先輩たちが置いていった油絵たち、その生地を剥がして枠だけを再利用し、新しい生地を貼ってキャンバスを再生する。

そうすることで、予算のない美術部でもひとり1枚といわず、何枚も油絵が描ける、という寸法だ。


きちんと張るにはそれなりにコツがいるものの、美術教師の江藤教諭は美大出身でこういう作業に詳しい。

例年の事だが、その技術でもって部員たちを指導し、半日で必要数のキャンバスを準備するのだ。


前の人生と同じなら、1時チョイすぎには全員がそろって作業が始まるはずだ。

例年同じスケジュールだから、おそらく今回もそうだろう。

持ち込んだ弁当はそれまでには食べ終えておかなくてはならない。


サトルと二人だけで食べるのもさみしいので、男性陣みんなに声をかける。

と言っても、現在は1年しかいなくて、4人しかいない。

俺とサトルと、山元君と北村君である。


このうち、確実に絵が上手いのはサトルと山元君の2人だ。

2人とも絵が好きで、サトルは風景画とデフォルメ画風がうまい。

山元氏は現時点でもイラスト風の画風でかなり上手いんだが、もうちょっと先になると出渕裕に影響を受けてキャラクターを描くのが超上手くなる。

まあ、彼が出渕裕と出会ったのは俺が美術部持ち込んだコンプティークのロードス島戦記なんで、上手くなった原因は俺かもしれないですがね。


で、残りの2人、俺と北村君は絵が得意じゃない方である。

まあ、俺の話は以前に話したし置いておこう。

北村君の方はと言うと……彼らのクラスはクラスの男性陣がほとんど運動部に流れたそうだ。

ところが北村君は運動が苦手で、それは勘弁してほしかったという。

そういうわけで、男性陣で唯一文科系に流れた山元君についてきた、というのが事実らしい。

まあ、前の人生ではそんな彼でも、3年生のころにはそれなりに描けるようになってたから努力ってものは重要である。

さぼってTRPGのゲームマスターばっかりやってた俺とはえらい違いだ。


食事をとってしばらくだべっていると、三々五々先輩たちが集まってくる。

どうやら、そろそろ始まる気配かな。

とりあえず、集まった中に知らない顔が無いかどうかを確認する。

前の人生でも美術部だったから、見慣れない顔が居ればさすがにすぐわかるだろう。


襟章を見るに3年生の先輩が6人、男子2人に女子が4人だ。加えて2年生が男子1人に女子7人。計8人。

テストの時に過去問を貸してもらった田川静子先輩も2年生である。

この時点で14人いるのだがここに俺たち1年生が加わる。

さっきも書いたが、男子が4人に追加で女子が5人になる。

さぼっている奴がいなければ、美術部総員23人、男子7名、女子16名という事になる。


見る限り、サトルを除くと前の人生でも見かけた顔ばかりだ。

やはり、特に干渉しなければ世界は変わらないのだろうか。ちょっと気になるところである。


先ほどサトルを除いてはと書いたが、実は前の人生ではサトルがここに入部してない。

だから本来に比べて1年生が1人多い

そのせいか、今年は男子が豊作だねえなんて声も聞こえる。


まあ、今年の男子は2,3年合計したより1年が多いからね。

今日のキャンバス張りもはかどることだろう。


遅れ目でやってきた江藤先生は、ジーンズと白Tシャツに白衣姿で全員の前に出ると、作業について説明を始めた。

「えー、今回は使用済みのキャンバスから画布を剥ぎ、新しい画布を貼って下地を塗り、新しいキャンバスを作ります。

幸い今日は小雨で湿度も高いですから釘も緩いはずです。

まずは画布を固定している釘を外すところからやっていきましょう。

釘抜きはそこの工具袋の中の物を使ってください。

無理に力を入れると木枠が痛む場合があるので、テコの原理で丁寧に抜きあげましょう。


では、グループを作って作業にかかってください。

まず女性陣は上級生が指導できるよう、高学年がと低学年が混ざるようにグループを作って下さい。

そのうえで、男性陣が1人は入るようにグループを組むこと。

力の強い男性陣には今日の作業で活躍してくれるよう期待していますよ?」


女子16人に男子が7人だから、女子2~3人に男子が1人の組になる。

毎回思うが、これ、男子にとってはいきなりハードル高く無い?

まあ俺の場合、前の人生でも世話になってた田川先輩のグループに潜り込めたので良かったが、他のメンツは大丈夫かな。ちょっと心配である。


ちなみに、田川先輩のグループに潜り込めたのがよかったってのは他の女子がちょっと苦手なのもある。

また後で書くこともあると思うが、前の人生では俺のせいで美術部の男子と女子が仲たがいしてしまった事がある。

そのせいで、女性陣が多い場は俺にとってちょっとだけ居心地が悪い場所になってはいるのだ。


そんな俺を見て緊張してでもいるのだと思ったのだろうか、田川先輩が声をかけてくれる。


「リンタロ~。中間試験、どうだった?手ごたえはあったか~?」


「いきなり名前呼びはやめてくださいよ。

ええ、でも、自己採点の結果を見る限り、どうやら上位に入れそうです。

これならパソコンも買ってもらえるでしょう。

それもこれも田川先輩のおかげです。」


「それはよかったね。無茶して私から過去問借りた甲斐があったってもんじゃない?

でも、次からはほとんど初対面の先輩にいきなり頼み事しなくて済むようにしなよ。

まあ、面白そうならそんときも乗るけどさ。」


「はい、無理を言ったのは解ってます。

ホント感謝してます、田川大先輩。」


「よしよし、じゃ、今日はその分も含めて頑張ってもらおうか。」


先輩は工具箱を指さして言った。


「いってこい、ポチ」


「わうーん」


悪乗りする俺たちにちょっと引いた雰囲気の同じ班の1年生。

やりすぎたかな。でもこのノリは田川先輩だからだしなあ。


あ、田川先輩、きちんとフォローに入ってるや。もう一人の1年生女子にもきちんと話しかけている。

ああ見えて、対人関係は結構うまいというか、丁寧なんだよな。


とりあえず、まずは先に釘抜きを確保しようと、先生が言ってた工具箱に向かう。

前世同様、中をのぞくと、中には大量のタミヤのプラモデル用ニッパーが。

一応、このネタは繰り返しておくべきだろうかね。

前の人生と同じセリフを吐いてみる。


「せ、先生、道具間違ってません?」


「ん、何?」


「プラモ用のニッパーが大量に入ってるんすけど」


「それでいいの。むしろそれが抜きやすいんだよ。

毎年そういうこと言う子がいるから、普通の釘抜きも1本持ってきてるけど、どう考えてもこっちのほうが楽だから。

後で試してみるといいよ。とりあえず、みんなはニッパー使ってね。」


仕方ないので、ニッパーと釘抜きを両方持って班に戻る。

早速まずは先輩から渡されたキャンバスから釘を抜いていくことにする。

まずはホルベインの釘抜きを使うが、やはり、うまく釘が釘抜きに引っかからない。

てこの要領でくぎ抜きを引き上げるとき、どうしても釘が外れてしまう。

仕方なくニッパーを使うと、これが信じられないくらい簡単に抜くことが出来る。

うん、やっぱどう考えてもニッパーが楽だわこれ。


前の人生でも何度かやった手順なので、手際よく先輩のやつ、同じ班の1年生の娘のやつ、自分のと次々釘を抜いていく。


キャンバスも十分釘が抜けてくると木枠の部品が崩れてバラバラになっていく。

何しろ、木枠は接着とかがされているわけではなく、組み合わせられ、画布で止まっているだけだから当たり前だ。

そこから、残った部品に当て板をして、個別に傷つかないように釘を外していく。

うん、特に問題なく分解できた。


こういうの、だいたい小器用なやつと不器用な奴に解れるのだが、俺はだいたいマシな方だ。

サトルや山元君も御同様でマシなほう。

2年や3年の先輩も過去の経験からそつなくこなしており、残ったキャンバスはどんどん片付いていく。

残念ながら不器用をさらしたのは木村君だけだった。

彼は釘を斜めから抜こうとして木枠のフレーム1個を割ってしまっていた。

一応、割ってしまったもの以外は別の先輩の手助けで何とか処理できたようだが、作業が荒い、丁寧にと怒られている。

まあ、先生によると例年1個か2個はダメになるそうで、気にするなとは言われているようだが。


おおよそのキャンバスが片付いたところで再び江藤先生が解説を始める。

「大体分解は終わりましたね。

それでは、今度は新しい画布を貼り付けていきます。画布自体はここに新しいものを置いておくので、各自取りに来てください。


学校で使っている油絵の具の都合上、あまり目が荒いと描きにくいので、今回張っていくのは中目の物を使います。

去年は男性陣の数が少なかったので|キャンバス用釘≪タックス≫を打ち付けて作りましたが、今年は新入生が多いのでタッカーを使います。

技術科室から借りてきていますので、壊さないように。


2.3年生の張り具合については去年の要領で作業すれば大丈夫です。タッカーで固定する際、画布がゆがまないようにだけ気を付けてください。

1年生は基本的に先輩に指導してもらって準備をおねがいします、

最初は締めるのにコツがいるので、その部分は先生が調整しますので、仮固定の段階まで進んだら先生を呼んでください。2つ目からは自力でやってもらいますので、きちんと手順は覚えておいてくださいね。


この作業は今後、油絵を描くたびに行う作業なので、忘れない事。

それでは初めて。」


すぐに田川先輩がさっと前に出て、まとめて数枚画布を抱えて戻ってきた。


「画布はもってきたよ。まずは、この上に木枠を組んで中央に乗せて。

そのあと、片側の真ん中をずれないように釘かタッカーで止める。今回はタッカーだね。

いいね、その調子。今回は初めてだし、ここで先生を呼ぼうか。」


先生が丁寧に画布を張って、3方向にタッカーを打つ。

これでキャンバスの4面の中央にタッカーが打たれた状態だ。


「大体このくらいの張り具合でしょうかね。触って確認してみて?ここにひし形ができるのが良い張り具合になります。

次からは自分でやってもらいますので、できるだけ覚えて下さいね。

まあ、完成済みのキャンバスを見本にしながらでも調整できるので、何度かやればすぐ覚えられると思いますけど。

じゃ、ここからは難しくないので田川さん、説明してあげてね。」


ここからの作業は早い。

ひし形のしわを伸ばすように引っ張りながら四隅の角を打って、角と中央の中に2個か所から3か所追加。

これで1辺に7か所から8か所タッカーの針が打たれた状態になって、基本形は完成。


電子機器の部品を固定する時のように、対角線を交互に打つように進めていけばテンションを均等に保つことができる。

あとは、キャンバスの角の端を重ねるように折り返してタッカーで止めればキャンバスは完成である。

|キャンバス用の釘≪タックス≫だともう少し苦労するが、タッカーで済むならこんなもんだ。


1個完成したら田川先輩に状態を確認してもらう。


「うん、いいね。申し分ないと思う。

筋がいいよ。引き続き残りも作っていこうか。」


ふー。もう、前に張ったのは前世の中学3年生の時だから35年前だ。

なんとかうまくやれて良かった。


「うん、どんとこいです。次お願いします。」


俺たちだけでなく、各グループとも1,2枚作ると慣れたのか、キャンバスを作るペースが上がっていく。

苦戦していたのは分解でも苦労してた木村君チームくらいだったように思う。


「4つ目か、もう職人みたいになってきたね。むらもなく張れてるし、プロみたい」

「プロとかいうのは早いですよ先輩。そんな甘い世界じゃないですって……はい、打ち終わりました。

次お願いします。」

「十分はやいよ。はい、5つ目の画布。そろそろ木枠も無くなりそうだから、多分それで最後かな。」

「了解です。ぴしっとやりますね。」

「うん、よろしく。んじゃ、私は下地材の準備を始めるね。」

「下地材?」


「そう、チタニウムホワイトを厚塗りするだけでもいいんだけど、それだけだとどうしても生地の目が残っちゃうのよね。

それで、先生のこだわりでジェッソっていう下地材を使うの。それを何度も重ね塗りして生地の目があまり出ないようにするわけ。

キャンバスを平坦にするにはジェッソを厚塗りして、そこにさらにやすりをかけるといいんだよね。

まあ、この部活でそこまでこだわって平らにする人はあんまり居ないけど。


この下地材を塗るのは手がかかるから、部の全員で分担して行うの。

そのためには下地材が入った容器を全員に配らないといけないからその準備だね。

ジェッソは高価だから、うちの部では安くあげるために、容器に豆腐の入れ物を使ってるわ。

今からそれを小分けしていくのよ。」


「へえ。そうなんですね、了解です。準備お願いします。」


「じゃ、谷村さん、手伝って。」


田川先輩は同じ班の1年生を連れて教師用のテーブルのほうで作業を始めた。

ほかの班からも数人が前に出ている。

置いてある4リットル缶の中身を混ぜては器用に豆腐の容器に小分けにして入れていく。


俺はキャンバスの組み上げを終えると頬杖をついて田川先輩の作業を眺めていた。


じきに、全てのキャンバスが完成し、再び江藤先生の声。

「キャンバスの組み立ては完了しましたね。

それでは今度は全員|キャンバス立て≪イーゼル≫を組んでください。組み方は上級生が下級生に説明すること。

完成したら、その上にキャンバスを立てて、下地材を塗っていきます。


塗り方も上級生が教えてあげてください。下地材はこちらの豆腐のケースに小分けにしてあります。

これを刷毛やローラー、筆などで綺麗に塗っては乾燥させを3回ほど繰り返します。

毛羽が立たないよう、注意して塗っていってくださいね。


全員出来上がったら今日の作業は完了です。

乾燥には3日、雨が続くと1週間ほどかかる場合もありますので、今日はそのまま出して帰ってください。

週明けの月曜日に私が準備室のほうに片づけておきます。

場所を移動する関係上、自分のキャンバスには裏側に下地材で目印を描いておいてください。


なお、次回の油絵に関する活動はキャンバスが乾燥する来週後半以降になります。

ただし、デッサンなどキャンバスを用いない活動を行う場合は週明けから美術室を使っても構いません。

では、作業をお願いします。」


早速、下地材の入った豆腐のケースを受け取り、キャンバスへ塗っていく。

塗り終わったら軽く乾かして、また塗っての繰り返しだ。3回ほど繰り返すと大体良い塩梅になってくる。

ただ、作業自体が単調なのと、塗り終わって乾かす時間が必要なため、そこかしこから雑談が聞こえてくる。


うちの班でも田川先輩がいろいろな話を振ってきてくれる。


「2人って、どこから来てんの?

伊水市内?それとも、小学校はほかの校区?」


「俺はほかの校区ですね。隣の|草原≪くさはら≫です。」


「私は市内ですね。本町の裏通りのほうです。」


「私も市内、市役所から伊水小学校のほうに少し行った所に住んでる。

交通の便もいいし、いいとこだよ。」


「俺んところは三号線をわたるんで、ちょっと離れますね。

住む分にはのどかでいい場所です。ま、町の|字≪あざ≫はちょっとアレですが。」


「アレ?」


「人切れっていうんですよ。人がいなくなる場所って意味で。

要は街はずれの人が住んでない場所、くらいの意味らしいんですけど。」


「ホラー小説で出てきそうな地名だね。村人が失踪しそう。」


「ひどいなあ。市内ほどじゃないですけど、住んでみれば悪くない場所ですよ?

田んぼの真ん中ですけど、水が上がってこない程度に土地は高いですし。」


「谷村さんのほうは本町の裏通りってどこら辺?」


「馬洗いの眼鏡橋のすぐそばですね。少し行けば画材も売ってる亀屋も近いんで、便利です。」


「へ~、二人はなんで美術部に?」


「私は絵が好きだからですね。油絵は初めてですけど、絵を描くのは子供のころから好きだったんで」


「部活が本格的に始まったら描いてる絵を是非見せてね。私のも見せるから。

で、少年のほうは?パソコンはここにはないよ?」


「僕は付き添いですかねえ。サトル……木村君がイラスト描くのが好きで、でも女性が苦手だっていうんで。

実際のところ、先輩もご存じの通り、俺はコンピュータで色々するのが好きな人間なんで、美術部員としては微妙かもしれません。

邪魔にはならないようにしますけど、役に立つのはこういう時の頭数くらいですかねえ。」


「正直だね。

まあ、なんでもやりますって言っといて出てこなくなる奴に比べればいいか。

人数的に女所帯になりがちだから、男性陣が居づらいってのは解らないでもないしね。」


「はは、プログラムでも絵を描くことはできるので、そのうちそういうのをお見せしますよ。

代わりに、手で描く絵のほうはある程度割り引いて考えておいてください。

正直、そういうのはサトルに任せきりなんで。」


「じゃ、そのコンピュータで描いた絵というのに期待しましょう。

どういうのかいまいち想像できないけど。谷村さん、想像つく?」


「パソコンの中で絵を描くんでしょうか。TVとかで出てくるような奴しか思いつかないですね。

画面で表示するだけだと、TVとかと同じで絵とは言えないような気もするんですけど。」


「まあ、それは期待してお待ちくださいってやつで。

ヒントを出すと、プログラムで描く絵は画面にじゃなくてプリンタを使って描きます。ホントの紙に印刷するやつです。

ただ、まだ自宅にパソコンがないので、そのためのプログラムも書けないから、もうちょっと待ってください。」


「あーまあ解った。うん、期待しとくね。」


文字を重ねて出力して濃淡で表現するモノクロの絵、とか、この時代じゃまだ見ないよね。

想像つかないのは当たり前だと思う。

まあ、テキストアート自体はモノクロプリンタを使った初期のプログラムサンプルとしては定番なんだけどね。

元絵はモナリザとかダヴィンチの自画像とかをモデルにするのがそれっぽいかな。

雑談を続けながら、俺はプログラムをどうするかを考え続けた。



下地材の白色がキャンバス全面を白く染め上げるころ、窓の外の雨は完全に上がって、青空が広がっていた。

もうだいぶ太陽は傾いてきていて、もう少しで赤く染まり始めるだろう。

大体のキャンバスにきちんと下地材が塗られていることを確認すると、江藤先生は本日の作業の終了を宣言した。

作業用の絵筆や刷毛、ローラーなどを流しで洗い流してから陰干しする。

豆腐ケースも集めて洗い、窓際にひっくり返して干しておく。

この辺の備品もキャンバスと一緒に、江藤先生が片づけてくださるそうだ。

最後に、全員で挨拶をして本日の活動は終了である。


来週からの部活動、どれくらい出席すべきか悩むところだなあ。

油絵講習の間は来た方がいいんだろうけど・・・。

前の人生同様なら、先生がいるのは週に2日くらいで、あとは自主的な集まりだからなあ。

まあ、来た方が人間関係は充実するんだけど、その分作業時間は減るからなあ。

とりあえずは、簿記の勉強の方を優先させてもらって、最小限で済ませておくか。


参考まで。

テキストアートのモナ・リザのサンプルです。

https://graphic.nobody.jp/irom/g_etc/text_art.htm

実際にはこういうフォント一つだけじゃなく、プリンタを直接制御して同じ行に複数の文字を重ねて印刷して濃淡を表すものもありました。

輪太郎が作ろうとしているのはこの重ねて印刷して濃淡表現するほうのテキストアートです。


昔、テキストアートってのがあったんだよと書きたかっただけなんですが美術部のころの記憶を思い出してたら過去一長い話になりました。

こんなはずじゃなかったんだけどなあ。

あと、さすがに地名については仮名です。さすがに市や町の名前までそのまま出すのはさすがにアレですので。


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