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改修版つくりませんか?

父からコンテスト受賞結果への問い合わせの結果を聞かされた輪太郎。

その中で、編集部からインタビューを受けてほしいと問われ……。

翌日の夜、夕食の後に、父からコンテストについての問い合わせの結果を説明された。


まず、最初に問われたのは渋谷の工学社に来れるかだったようだ。

なんでも、入賞者に関しては可能なら直接賞したいとのことで、出来れば来社出来ないかと問われたらしい。

それに対して、作成者が熊本県の小学生3人組であるため、それは難しいことを説明したらしいのだが、ひどく驚かれたという。

なんでも、マシン語を使って作った表示周りのルーチンの出来がよく、編集部内では絶対に大人が絡んでいると思われていたらしい。

そこに父が電話をかけてきたもので、編集者たちは案の定、大人が絡んでいると思ったらしいのだ。


ところが、しばらく話していると、父が全然コンピュータに詳しくないことが解る。

他にも親は居るはずだからと尋ねてみるも、教師、兼業農家の市役所職員、農協勤務とコンピュータに詳しそうな仕事が出てこない。

そこでやっと子供たちが自分で組んだプログラムである可能性に思い至ったのだという。


それで次に頼まれたのが、もし来社出来ないのならぜひ一度電話取材をさせてほしいという事だった。

これについては、日曜に3人を集めての上で良ければ、と言う形で回答をし、我が家で対応予定。

高木さんと木村さんにも了承を得ているという。


また、これは電話取材の時までに決めてもらっておけばいいとのことだが、原稿を書くかどうかも決めてほしいとの事。

これは、応募したソフトが近いうちにゲームプログラム投稿雑誌の「PiO」へ掲載されることになるとのことで、その紹介記事の原稿の話のようだ。

ちなみに、記事を自分たちで書いた場合には原稿料が支払われること。

また、応募されたソフトの著作権は工学社とはコムパックの物になるが、3000円ほどの金額で通信販売が行われれ、売れた本数に基づいて10%程の印税が入ることも説明されたという。


父から聞かれたので、原稿を書くつもりであることを伝えると、原稿枚数と郵送先に関するメモを渡された。

「一人だけで決めずに、3人で話し合って決めなさい。

原稿料の分け方についてもどうするかは電話の前に決めて文章で残しておくこと。」

と説明をされた。


また、賞金については本人確認後、当人名義の通帳であれば別けても振込可能とのこと。

これもインタビュー時に確認して、その後、3人の口座に分けて振り込まれることになる。

これについても、振込確認後に折り返しのご連絡を頂戴できると助かりますとのことで、対応は夜勤の代わりに平日に代休のある母に任された。


同じ内容は高木さん、木村さんにも共有されているとのことで、高木さんが著作権を取られたことをしきりに気にしていたとの話だったが、直販するつもりはないので今のところ問題はない。


とりあえず、原稿についての話は明日学校の昼休みにでも話をすればいいだろう。

打ち合わせの内容を忘れないようにメモだけしておくとしよう。



翌日の昼休み。

記事についてはプログラムが解る竹尾に一任。

代わりに原稿料も竹尾が受け取る、という事で話が付いた。

打ち合わせ内容を文章で残す件も特に問題なく、ノートにボールペンでサインして完了。


簡単に話が付いたのは原稿料が安いからで、実際のところ、原稿料が1本単価で文字数にかかわらず、どれだけ書いても1万円との事。

但し、掲載上の上限はあるので、だいたい原稿用紙5枚程度が上限。それ以上は切られるそうな。

プロじゃないからそんなもんなんだろうな。



週末

4月27日、日曜日。

俺のうちに3人で集まり、台所で編集部から電話がかかってくるのを待っていた。

微妙に緊張した雰囲気のなか、氷入りの薄めのカルピスが舌にやさしい。


電話機が鳴って、祖母が受話器を取る。

「ええ、はい、竹尾と申します。

ええ、ああ、工学社の方?はい、村上さん。

ええ、聞いております。

ああ、はい、3人にですね。

では、代表者として孫の輪太郎に代わります。

少しお待ちください?」


受話器の口の部分に左手で蓋をして、祖母が俺たちに話しかけた。

「輪太郎、工学社という会社の方で、I/O編集部の村上さんという方からお電話。」


「代わって。」

受話器を受け取ると早速挨拶をする。

「初めまして、竹尾輪太郎と言います。

今日はよろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いします。

えーと、プログラムを書いた子かな?

多分お父さんとは話させてもらったと思うけど。」


「はい、そうですね。」


「見事なプログラムだったね。

うちのプログラム班の人間が感心していたよ。

何処で勉強したんだい?」


「だいたい本でと後は実機ですね。

最初はどれだけ遅くてもまずBASICで全部書きました。

それで遅い部分、つまり画面表示周りですけど、そこだけマシン語に変えていきました。


Z80のマシン語は参考文献で書いてましたけど「初めて読むマシン語」で学びました。

で、X1固有の仕様についてはマニュアルが主です。

グラフィック周りとかはマニュアルのメモリマップを見ながら、マシン語で指定領域を叩いていって、仕様を調べた感じです。

PCG…X1では文字の形状を好きな形に置き換えられるんですけど、そこ周りの実装調べるときが一番時間かかりましたね。

おかげで何度もパソコンが壊れたとか、俺のパソコンを壊すなとか言われました。」


「こりゃ間違いない。

ホントに自分で作ってるんだねえ。

他のお友達との作業の分担はどうしてたんだい?」


「ゲームの仕組みづくりというか、どうなると面白いっていうのを考えてくれたのが高木君で、中で使ってる絵やロゴを描いてくれたのが木村君です。

基本的には私はパソコンでプログラムを組めれば楽しい人間なので、どういうゲームにすれば楽しいかとかはあんまり考えてなかったんですよ。


それをキャラクタ選択画面追加したり、主人公が車に衝突したら画面外へ飛んで行く方が面白い、とか、アイディア出して、面白さでハンドリングする役目が高木君でした。

彼の意見が無いと自分では思いつかない事ばかりで、こんな面白くならなかったと思います。


逆に、私が描けないイラスト周りはほぼ木村君ですね。

タイトル画面の建物、僕らの学校そのまんまの絵なんですが、これを描いたのも木村君です。

今回は描いてもらった絵やロゴをパソコンの中に取り込むのは私がやりましたが、次に作るものとして、絵を描くためのソフトとかもあってもいいんじゃないかと思っています。」


「3人は去年まで小学生で、今年やっと中学生だって聞いたけど、それについてどうかな?」


「プログラムは年齢が関係ない所がいいと思ってます。

パソコンさえあれば、小学生の私でもこんなものが作れる。

それがいい所かなと。

今年から中学生ですけど、これからも出来ることは増えていくと思います。

まだまだいろんなものを作ってみたいです。」


「竹尾君、回答ありがとう。

最後にもう少し質問すると思うけど、まずは残りの2人の話も聞きたいから、どちらかに代わってもらっていいかな?」


「解りました。じゃ、えーと、高木君に代わります」


ふう。

こんなもんでそつなく回答出来てるかな?

高木君と木村君も上手く話せるといいけど。


高木君と星さんの話はしばらく続き、最後は木村君へ。

二人ともソフトについてとか、いろいろ質問されているようだった。

後ろから2人を見ていると、笑顔が垣間見えるから質問の合間に褒められてるのだろう。


電話が一回りした後、もう一度俺のところに受話器が回ってきた。


「最後にいくつか質問したいんだけど、もう一度竹尾君にいいかな」


「はあ、なんでしょうか?」


「まず、事前に伝えてた内容から。

PiOの原稿はについては3人の誰かが書きますか?それとも、こちらで準備した方が良いですか?

書いてもらえるようなら、郵送で原稿用紙と返信用封筒を送ろうと思いますが。」


「はい、事前に話した結果、私が書くことになってます。

応募時に記載した返信用住所へ送っていただければ助かります。」


「わかりました。原稿用紙とかはそちらに送りますね。

それから、もう一つ。

君たちの作ったプログラム、改善版って作ってみませんか?」


「改善版?」


「全体的に完成度が高くてすばらしいんだけど、もったいない点も多いんですよ。

内容的にマップが3面しかないのはゲーム性の割には数が少なすぎると思います。

邪魔ものの車の違いを速度以外にも作ってやればマップも増やしやすいんじゃないかなあと。

速度以外にも変わった動きの車を増やしたり、長ーいトレーラーの隙間でしかわたれないようにするとか方策はあるでしょう。


また、小学校の風景をそのまんま使うとか、タイトルに実在の地名をそのまま使うのはちょっとまずいように思います。

架空の小学校とか、架空の道路名とかにして、何かあっても抗議を受けないようにしておくべきだと。

そういう点の改善版ですね。


もしそういう物が作れるなら、投稿されたもの以外に、改善版も販売できるし、より売りやすくなるように思うのですが。

どうでしょうか?」


「作れるか作れないかで言えば、作れます。

ただ、一度完成したものに手を入れることになるので、まず仲間内で話をしてみたいと思います。

そのうえで、作ることになるようでしたら、ご連絡差し上げます。

お手紙でのご返答でいいですか?」


「検討してもらえるだけでも助かります。

他のコンテスト受賞作でも同じような問題を抱えていて、こういうお願いをしているソフトはあるのです。

問題があると、長期的には販売が続けられないケースが出てくるものでして。

あと、電話代が高くつくという事で手紙なのであれば、今回同様にまたお電話してもいいですが。」


「しっかり決めたいので一度決めるところまでは手紙でお願いします。

改修することに決まって、そのうえで必要な場合にはお電話で相談させてください。」


「しかし、今回はすごい子供たちとを取材させてもらいました。

出来る事なら3人全員に直接会ってみたかったです。

ぜひ東京に出てくる機会があったら弊社にお寄りください。

東京をご案内しますよ。」


「ありがとうございます。

機会がありましたらこちらこそぜひお願いいたします。」


「また、賞金の振り込みに関しましては、この電話で確認が取れましたので、明日より指定の口座への振り込み手続きを進めさせていただきます。

事務手続きの都合上、最長1週間ほど頂く場合がありますので、その点だけはご了承ください。

じゃ、長くなりましたが、今回の電話取材にご対応いただきましてありがとうございました。

お父さん、おばあさんにもよろしくお伝えください。

それでは。」


「それでは。」


電話が切れたのを確認して、受話器を置く。


ふー。

取材は無事終了。

これで賞金の方も振り込みが行われる、と。


考えなきゃいけないのは、コンテストのプログラムを修正したものを作るかどうかか。

まあ、ステージ数の事はともかく、残りの事は事前にわかってた内容だから修正自体はやぶさかじゃないけど…。

新しいプログラムは3人で作ったプログラム、ではなくなっちゃうんだよな。

2人がそこをどう考えるっての次第だな。

オリジナルは残るし、売るバージョンだけの話って割り切ればいいだけではあるんだけど。


あと、修正版を出すと、MSX版を投稿する場合も改修版を元に修正しないと投稿できなくなりそうだな。

そうなると、めんどくさいっちゃあ、めんどくさいんだよな。

まあ、MSX版を投稿しないってのもアリだから、2人が決めた後で考えて問題ないんだけどな。


とりあえず、まず2人に内容を伝えよう。

全てはそれからだ。


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