オリエンテーション
中学校で最初にこなすオリエンテーション。
輪太郎は参加する部活やクラブ活動、委員会について決めるのでした。
4月11日、金曜、今日は入学式の翌日である。
天気は曇り時々雨。全天が曇り空で小雨が続き、青空はほとんど見えない。
今日はハレー彗星の第2回最接近日だと言うのに残念なことだ。
テレビによると、早朝なら少しだけ見えた場所はあったらしいのだが、朝から曇っていた熊本では全然みることはできなかったろう。
まあ、もともと国内からは角度が悪くて見えにくいのだそうだ。
良く見えるのは南半球の方が多いらしく、そのためにオーストラリアへ行った人もいるのだという。
俺個人については、あんまり興味がない。友達が少し盛り上がっていたくらいか。
さて、今日は学校行事について書こうと思う。
中学校では入学式の後、まずはオリエンテーションが行われる。
新しい中学校になれるために必要な情報をもらったり、健康診断などをこなすための日だ。
今日はその1日目、各種ホームルームのあと、午後からは部活動紹介が行われた。
うちの中学は帰宅部が禁止なために、生徒は全員、必ずどれかの部活に入らねばならない。
オリエンテーリングの中でそれを知らされた俺たちは、何に入るかを考えながら部活動紹介を眺めていた。
前半が体育会系11部活、後半が文科部系として10部活である。
軟式野球、バスケ、バレー、ソフトテニス、バトミントン、卓球、陸上、水泳、相撲、剣道、柔道。
放送、美術、茶道、華道、合唱、書道、文芸、天文、生物、最後に吹奏楽。
実際には男女に分かれている部活もあるが、時間の都合でアピールは合同でとなっている。
前世では美術部に入って高校までつながる友達を見つけたが、今世ではどうすべきだろう。
とりあえず言えるのは、今後の事を考えると、忙しい部活には入ってられないってことだ。
氷河期をフライパスするには金が要る。
それも高校卒業以前から稼がなきゃならない位には金が要る。
金を稼ぐには時間がいる。
たとえば俺の場合であれば、プログラムを組んで、それを売り込めるだけの時間的余裕が必要だ。
となると、運動部への入部はは考えにくい。
運動部で毎日練習しながらプログラムの時間を確保する、なんてのは現実的に不可能だろう。
文化部でも吹奏楽辺りではご同様だと言える。
文科系ならいいかと言うと、そうでもない。
放送部辺りは昼休みと放課後の放送当番なんてのがあるみたいだし、合唱部は吹奏楽部との合同公演が多いみたいだ。
華道、書道辺りは普段は暇だがコンテスト期はかなり活発に活動するそうだし、生物部は採取活動に出かける時期があるとの事。
繁忙期があるのをどう考えるかだが、学内で活躍できると言えば活躍できるわけだ。
内申とか考えると必ずしもダメではないのが難しい所。
安牌で行くなら前世で知っててさぼりも可能な美術部。
それ以外だと講師が来た時しか活動してない茶道部、図書館にいつも溜まってる文芸部に、夏冬のシーズンに観測会を開く以外は週1でしか活動してない天文部あたりが有力だろうが、はてさて。
まあ、あとでヒロシとサトル君がどうするか聞いてから考えるかなあ。
放課後、図書館前の渡り廊下。
アルミパイプの手すりによっかかり、階下に見える吹奏楽部の練習風景を見つつ、邪魔にならないあたりでたむろしていた。
「ねえ、部活、どれに入るか決めた?」
サトル君が言う。
「今の所、まだ決めてない。
俺は勧誘期間中にいろいろ見に行って決めるつもりだけど。
今んとこ、全くの白紙だなあ。
2人はどうすんの?」
ヒロシが返す。
「俺はざっくり文科系の部活動から選ぶつもり。
もう少し頑張ればパソコンが手に入りそうなんだよ。
そうなったら、自分の為のプログラムをザクザク進めていくつもりだから時間が取られる部は嫌かな。
だから、ノルマが少なそうな部活がよくって、そうなると文科系になるかな、って感じ。
まあ、文科系って言っても美術部とか文芸部とか、そういう感じになりそうだけど。」
「リンタローはこういう時、いつも決めるの早いよね。
羨ましい。
僕、毎回こういうの結構悩むんだよなあ。」
「早いって言っても、まだ確定しているわけじゃないし。
何箇所かは見て回ろうと思ってるよ?
結論はそれからかな。」
「んー、でも美術部かあ。
リンタローが一緒なら美術部でも悪くないかなあ。」
「ん?サトル、美術部狙い?」
「部活動紹介でも言ってたけど、ここの美術部、イラスト関係とかやってる人が多いらしいんだ。
全員やんなきゃいけないのは油絵ってことだけど、1枚描いたらあとは好きな物描いてていいって言ってたし。
それなら僕もやっていけるかなって。」
「あー、選択教科で美術取ってると油絵の道具は教材として買わされるからね。
油絵がノルマなのはそれが原因じゃないかな。
ただ、イラスト系統って女子部員がほとんどだと思うけどそれは大丈夫?」
「あー、そうかあ。女子が多いと辛いなぁ。
でも、絵を描くの自体は好きだし、上手くはなりたいんだよね。
だから、女子でも見てもらえる人がいるなら悪くないかもしれない。
描けばそれだけ上達はするとは思うもん。」
「あー、先輩とかに期待するって事か。
そうね、それはアリかもしれない。」
「お前らもうチョイ活動的な部活は選ばないの?
シーズン制の運動部って選択肢もあるんだぜ?
水泳部とか、夏は泳げて冬はオフシーズン、最高じゃね?」
甘いんじゃないかなー。それは。
俺は経験を元に忠告する事にした。
「悪くはないけど、結局冬も体づくりで陸上とかさせられると思うよ?
うちの親父、何の部活の担当だったか忘れてる?
俺も親がよその小学校に行く5年生まで4年間は水泳部だったんだよ?
まあ、体力的にキツい部活だから長時間泳がせられるのは試合前くらいだとは思うけど。」
「キツいのかよ。
涼しいうえに女子の水着見れるなら悪くないかなと思ってたんだが。」
「多分、練習でせいいっぱいで考えてる暇ないと思うな。
でも、暑い時期のプール練習はたしかにたまらないとは思うけどね。
他は汗臭い中、自分たちだけ涼しい水の中だからね。」
「うーん、やっぱ水泳部にも行ってみるわ。
シーズン前だけど、雰囲気位は解るでしょ。」
「もう水泳部にしぼるの?」
「うんにゃ?そんなわけないじゃん。
まだまだ白紙の思い付きよ。
ただ、体育会系の個人競技でビビッと来たのが水泳だっただけ。
団体競技は苦手だし、他は陸上、卓球、バトミントンに後は武道系でしょ?
なんか汗臭いイメージが強くって。」
「文科系はないの?」
「吹奏楽とか合唱部は集団競技だから苦手。
生物部は見に行ったらオタマジャクシがいたから無理だ。
女子の方が多い部活はやりづらいし、残るのはそんなに多くない。
気になるのは放送部とか天文部くらいかなあ。」
「んじゃ、3人で見に行くなら美術部、水泳部、文芸部、放送部、天文部ってところだね。
今日はもう終わりそうだし、そろそろ引き上げて明日から順に回ってみようか。
部活の勧誘週間って、今週だけみたいだし。」
「怠いけどそうすっかー。」
「そうしよー」
だるいけど、いつまでも学校にいても徒歩帰宅なのは変わらん。
すぐに自転車登校利用者証がもらえればいいが、まだ昨日書類を提出したばかりなんだよな。
もう、昔過ぎて何日かかったのか覚えてないけど、受理までに数日は時間がかかるはず。
ホント、早く自転車使えるようにならんかな。
せめて来週いっぱいくらいまでには自転車通学できるようになればいいけどな。
早く学校帰りに本屋や図書館に寄りたいもんだよ。
なお、数日後、見学の末に俺とサトルは美術部、ヒロシは水泳部に入部することが決まった。
決め手は美術部員に前の人生で仲が良かった連中が全員いたこと。
特に、イラストの上手かった山元氏が先にいたことが決定理由となった。
あと、ヒロシが水泳部に入った理由だが、小学校の時仲の良かった真由美ちゃんの姿があったのを見て、納得した俺がいたとかいなかったとか。
今回はクラスが同じらしいし、より仲良くなってくれればいいと思う。
4月15日、引き続きオリエンテーリングのの日。これで4日目になる。
部活動紹介の翌日が避難訓練、その翌日に休みをはさんで昨日の月曜が身体測定。
今日からついに半日通常授業となり、午後に最後のオリエンテーション。
ホームルームで今年のいろんなことを決める日である。
例えば、地元との交流のために開催されてるクラブ活動をどうするか、とか、
各種の委員会活動に参加するのはだれか、とかそういうやつだ。
クラブ活動は週に1回、木曜日の6時間目に行われる授業で、地域支援や交流活動を主眼に置き、地域の皆さんの指導で色々な事を学ぶ活動の事だ。
といっても、指導者の方が来れないとか、担当が居ない場合、結局、学校の先生が代わりをするらしいけど。
2年生までの生徒はどれかに入って参加する必要があるそうだ。
種類は多彩で面白いのも多い。
囲碁や将棋からギターの弾き方、果ては地域神楽の踊り方講座や祭り太鼓の叩き方入門、機械の修理なんてのまである。
まあ、機械の修理は技術科の先生がやるみたいだから趣味みたいなものかもしれないけど。
どれもそれなりに面白そうだが、そうした中に、一つだけ興味を引くやつがあった。
「パソコン・ワープロ入門講座」と言うやつだ。
これ、あれでしょ。
この学校に導入されたパソコンを使う授業。
入学後すぐ調べたところによると、納入されたパソコンは2台だそうで。
1台は職員室にあって、残りの1台は図書館のとなりの視聴覚室にあるらしい。
案の定、早速1台は持て余されてるよ。
その持て余してるパソコンを活用したい、という事なんだろうな。
だから、たぶん、授業に使えるのは1台だけ。
ワープロも、松か一太郎、おそらくはお値段的に一太郎だと思う。
てことは、教えてくれる人も、発売日的にここ1年くらいで覚えた人だろうからあんまり詳しくないかもしれないな。
とはいえ、この状況でパソコンを教えようと思う人ならそれなりに知識があるかもだし。
上手くいけばパソコンの情報源になるかも……まあ、ちょっとそこは期待薄ではあるけど。
問題はパソコンに群がる人数だけど……、こればかりは入ってみないと解んないな。
台数が少なすぎるから、人数が多すぎるとちょっと困ったことになりそう。
交代しながら入力練習とか、そういうので終わりになりそうで辛いなあ。
正直、自分はタッチタイプできるからいいけど、ほとんどはそうじゃないと思うしなあ。
ちょっと触ってあとは大体待ってる授業になりそうな予感がする。
ま、いいや。
その場合はノート上でプログラムする時間にあててしまおう。
早速、パソコン・ワープロ入門講座の部分に〇を付けて先生に提出する。
他の連中も三々五々希望クラブの申し込み書類を先生に提出し、しばらくすると全員分集まったようだ。
次の議題に移ることになった。
次の議題は委員会活動だ。
委員会類は生徒会の下に入る学級委員長と副委員長、ほか、生活委員、美化委員、図書委員、視聴覚委員、保健委員、放送委員、飼育委員会、緑化委員会など、8つの委員会がある。
委員長と副委員長が一人づつ、残りは全て男女1人づつが選ばれて役割を果たすことになる。
だいたいは当番制で週に活動するのは1日あればいいほうなのだが、40人の生徒のうち18人しか就かなくていいため、押し付け合いになって決めるのに時間がかかりやすい。
そこで、うちのクラスでは全員でくじ引きをして、まずやらなくていい奴が抜け、残ったメンバーでどの委員をやるかを押し付けあうことになっている。
とりあえず、どれかをやらされるのは決まっているのだから、押し付けあってないで、希望の役割を探してさっさと決めろ、というわけだ。
希望が重複したらじゃんけんで決まるのでホントにギャンブルである。
まあ、入学したばかりで適正もくそもないし、向き不向きも解らんならこの方式のほうがいい、のかなあ?
くじで負けた俺はいろいろ考えた末に図書委員を選び、公正なるじゃんけんの結果、無事図書委員になることが決まった。
まあ、前回の人生でも中学、高校時代はだいたい図書委員だった覚えがあるので、2度目の人生もほっておけば同じ展開に収束するというやつかもしれない。
その後は委員会ごとに集まっての顔合わせが行われた。
委員会がない奴は5時間目相当で学校は終了になるので、委員会関連のメンバーだけが割を食う形だが……まあ、こればかりは仕方あるまい。
図書委員の場合は会場が図書館で、そこで先輩たちから年間を通じての活動内容についての説明を受けた。
図書委員会は基本的に平日の昼休みと放課後約1時間だけが活動時間らしい。
といっても、活動自体は本の貸し出し・棚返却の当番と未返却者への警告の対応だけだ。
活動も交代制なため、時間的な縛りのわりに当番自体の負荷は少ない。
1学期の間は各学年1人ずつの3人でのローテーションで回し、1年生が作業に慣れる2学期からは1~3年生混合の生徒2人で回すようになるそうだ。
ただし、2学期以降は昼と放課後も分けてのローテとなるため、回数自体はそれなりにやってくる。
それ以外にも、夏休みに1日だけ学校図書研修会という近隣の中学校の図書委員が集まって研修活動をやる機会があること、
あと、1,2学期のはじめにその年新入荷する本を選んで業者に発注し、古い本を片づけて棚を開け、入れ替えを行うという新刊導入作業というのがあるということだった。
購入する新刊は生徒の希望から選ばれ、希望数が少なかった場合には図書委員の希望も入れていいそうだ。
おっ、と思ったが、今年の4月の新刊はすでに入荷済みだそうで、公費で本を買うことはできなそうだ。残念。
会自体は説明の終了後、図書委員の名簿を作り、1学期の図書当番の予定を作成して終了した。
1学期のうちは1組の1~3年生の男子女子、2組の1~3年生の男子女子って感じでクラスごとにローテするので、日程さえ間違わなければ問題ない。
それも、毎日、前日の放課後の当番の3年生が翌日の昼休みと放課後の当番を図書館の入口の黒板に書いて帰るので、毎朝そこさえ見ていれば間違うことは少ないとのこと。
早速明日から当番制が始まるそうなので、注意してくれということだった。
俺の場合、7組なので当番はだいぶ先だが、忘れないよう注意しておこう。




