クリスマス会の思い出1
輪太郎の校区では子供会でクリスマス会が行われるのですが・・・。
俺の小学校の校区では、毎年12月には決まったイベントがある。
複数の子供会合同主催のクリスマス会だ。
と言っても、平日は無理なので(今年の24日は火曜日だ)前倒しで直前の日曜日に開催される。
25日だと冬休みに入っていて旅行に出てしまう子供たちがいるので前倒すわけだ。
というわけで今年は22日日曜日に小学校で開催されるわけなのだが。
なんとも困ったことに、この日、俺の作ったゲームがお披露目されることになってしまった。
毎年、レクレーションの一環として、みんなの活動発表、みたいなのを理科室に展示するのだ。
その中の一環として、俺の作ったゲームが展示することとなってしまった。
いや、別に俺が希望してそうなったわけじゃない。
高木君と木村君もクラスの仲いい子たちには発表しようぜって言ってたけど、こんなに大きなことになるのは望んでなかった。
騒ぎのきっかけは高木君のお父さんだ。
高木君を含む俺たち三人は、ソフトが完成するまで、ほぼ毎日高木君の家にいた。
1時間から長くても2時間くらいか。
だいたいは俺が家で組んだプログラムをX1に入力して、保存して、実行するの繰り返し。
前日の続きを修正しながら進めるっていうのを4~5セット繰り返すとだいたい高木君のお母さんが仕事から帰ってくる。
高木君ちも共働きで、大体はお母さんが返ってくると俺たちも挨拶して帰宅、みたいなのが多かった。
最初こそ冷蔵庫に入れておくからジュースを、とか言ってたけど、木村君と俺がジュースの分をパソコンのための電気代に使ってくださいって言ってから代わりに麦茶が出てくるようになった。
実際、俺たちも麦茶のほうがありがたかった。
何しろ、甘いと水がほしくなるからね。
正直、あーでもないこうでもないと、プログラム組みながら雑談するほうが楽しいので、麦茶のほうがよかったんだ。
そのうち、週末にもプログラムをするようになり、そうすると、高木君のお父さんも俺たちのことを気にするようになった。
何しろ、いつも一緒にいるし、パソコンがある部屋から出てこないんだから気になるよね。
で、パソコンを使わせてもらってる関係上、おじさんにも説明しなきゃいけないかなと、完成間近なプログラムを見せることにした。
いやー、びっくりしてたね。
最初、パソコンを見せてもらうようになった頃、高木君ちにあったゲームは、ほとんどがテキストモードの文字を操作する類のものだった。
画面内にランダムに配置されるドットを食べていくと自機の蛇の長さがだんだん伸びていって、ぶつかると負けっていうスネークってゲームとか、主人公が"人"の文字で、ブロックが田、壁がロの倉庫番とか、文字でできてるインベーダーゲームとかだ。
知り合いからただで分けてもらったゲームだったんだって。
全部BASICで出来てたみたいだから、誰かが趣味で作ったものだったんだろうと思うけど。
だというのに、俺が作ったゲームはファミコンのようなかわいいキャラが動いてアニメーションするんだから。
誰が作ったのか、って聞かれたので、軽い気持ちで「3人で作りました」って言ったわけよ。
実際、タイトル画像は木村君の絵を使ってたし車のドット絵も木村君だ。
ゲームシステムは結構高木君の意見も入ってて、キャラクターセレクトとか、高木君の意見が無いと追加されてないし。
そしたら、あれよあれよと話が大きくなって、いつの間にか活動発表で展示されることになってしまった。
展示のためのX1も高木君の物が提供されて、理科室へ。
周りはあれだよ。
書道とかお花とか、絵画展で賞をとった絵の間に並ぶ赤いX1。
画面には小学校の絵が描かれてて、その上に「渡れ!国道3号線」だよ。
なんかこう、すごいシュールななにかを感じさせるよね。
しかも、事前に話を聞いてたらしく、かわるがわる先生たちがどんどんやってくる。
まあ、タイトル画面からしてうちの小学校だから、俺らが作ったこと自体は疑いようもないんだと思うけど。
しまいには校長先生まで来た日には、もうどうしていいものやら。
フリープレイにしてるから、年下の子たちも遊びに来て、何度もプレイしてるし。
その挙句には、同じ奴がプレイしすぎてプレイ順が回ってこないって泣き出す子まで出てきて、ちょっとした騒ぎになってさらに人が来て・・・。
体育館で子供会対抗のドッチボール大会が行われてる横で、理科室に集まる子供の山。
いいのかこれで、年内最後の子供会の総決算の日だぞ、とか思いつつ。
そんな中、もう絶好調でニコニコしている高木君の親よ。
いやー、楽しそうでいいなあ。
俺、こんなに大規模に遊んでもらうのは初めてなんで、バグが出ないか結構ハラハラしてるんですけど。
マシン語のプログラムのデバッグとか、出先でできるわけねえので、出たら速攻あきらめて、カセットからデータを読ませる算段で準備してますけどね。
で、こういうことになるとだいたい聞かれるわけですよ。
今後はどうするの?って。
ど、どうするってあーた、小学生が起業してゲーム会社起こしますとか言えるわけはないんだから。
まあ、お茶を濁すことになるよねえ。
「趣味で作ったものですから。
3人で楽しめればいいかなって。
だから、今回こんな感じで見てもらって、感謝してます。
また、次回作が作れたらいいなあって感じですかね。」
高木君と木村君もうんうんとうなずく。
俺も作る気が無いわけじゃないから、嘘はついてない。
「ふむ、なんか雑誌とかでコンテストをやってるって聞いたんだが、そういうのに出すつもりはないのかね。
地元愛あふれるゲームだし、学校や子供会の宣伝にもなると思うんだが・・・」
こ、校長、なんでそんなときだけ詳しいんだよ。
しかも、学校や子供会って、勝手に一枚かむ気になってやがるし。
こりゃ事前に誰かに空気入れられてきやがったな?
俺としては、ゲームで稼ぐのは望み薄だと思ってるから、こういうので名を売りたくないんだけど。
「ありがとうございます。
でも、このソフトで賞がとれるとは思えないです。
もっといいものが出来てから挑戦したいと思ってます。」
「いや、そうは思わないな」
出た、高木君ちのお父さん。
「せっかく皆で作ったゲームだろう。
自信を持ちなさい。
僕が見てもかなり出来のいいゲームに見えるよ。
どれかよさそうな雑誌を見繕って投稿してみたらどうだろう。
6年生最後の記念にもなるだろうし。」
うわ、なんか完全にノリノリじゃねえか、高木君のお父さん。
校長も「それはいい」じゃねえよ。
煽られた高木君と木村君も前向きな感じの発言してるし。
こんなローカルネタのゲーム、雑誌投稿して大丈夫なのかよ。
まあ、確かにまだ個人情報もくそもない時期だけどさー。
みんなの目線が乗り気でない俺に集中する。
あーもう、投稿すればいいんだろ、投稿すればー。
「は~。解りました。
じゃあ、全然自信はないんですけど、年が明けたら試してみたいと思います。
これは機械語使ってるのでマイコンベーシックマガジンではまずいですし。
今の時期だと、I/Oかな?
1月半ば締め切りで3月半ばくらいが入選作発表のコンテストがあったと思います。
タイミング的に、小学校の知名度につながるかは微妙ですが・・・。
でも、助言ありがとうございました」
3月半ばって言葉で校長先生が少し残念って顔をした。
俺ら3人、3月で小学校は卒業しちゃうからね。
上手いこと使うにはちょっとタイミング悪いだろうなあ。
そして、ノリノリが収まらない高木君のお父さん。
「うん、なにかあったら力になるから。
きっと先生たちも相談に乗ってくれると思うよ?
それから月刊ASCIIの方には投稿しないのかい?
うちではあっちの方を買ってるんだが・・・。」
うお、おっ金持ち―。
いや、この時代、ベーマガが350円、I/Oが430円、ASCIIが500円だったんだよな。
一番高いのを買ってるなんて、羨ましい。
俺なんて、I/Oですら気に入った記事が無いと立ち読みだよ。
高木君の部屋の本棚には漫画しか並んでないよな。どこにあるんだろう。
多分、お父さんの部屋の本棚かなんかに入ってるんだろうな。
今度頼んで見せてもらおう。
「すみません、小遣いの都合でASCIIはたまにしか買ってないんです。
もし、ちょうどいいタイミングのコンテストとかあったら教えてください。」
「そうか、後で調べてみよう。
見つかったら宏にASCIIを渡しておくから、ぜひ考えてみてくれ」
解りました、とは言ったものの、コンテストかあ。
変なことにならなきゃいいんだけどなあ。
皆様のおかげで、どうやら今夜 PVが2500を超えそうです。
こんな若い子置いてけぼりの内容の作品なのに、思ったよりずっとたくさんの人に見て頂けて驚いています。
若いころ小説の同人誌出して爆死してた頃のこと考えると、夢のようです。
あの頃は見てもらう事すら難儀だったので…。
ましてや、ブックマークや感想が既に頂けてたりなんて、三文作者には驚き以外ありませんね。
なろうって、思ってたよりずっとすごい所だったみたいです。
今後も引き続きお読みいただけ、お気に召していただけましたら感想をいただけますと幸いです。
なお、今週末は土曜から月初に入りますので、土曜から1週間お休みいただく予定です。
よほど仕事でトラブらない限り、次回投稿は6月8日からを予定しています。




