わたれ!国道三号線 2
マシン語を使ったゲームも完成間近。いろいろな理由で改造が必要になります。
12月に入るころ、俺たちのゲーム、「わたれ!国道三号線」は完成に近づいていた。
このタイトルは高木君の発案だが、なんとも地元愛に根差したタイトルである。
正直、片側3車線、両側で6車線もあるような道は県内にもまだ少ない。
熊本市内まで出れば無いことはないのだが、昔からの道は細いので、実際には両側6車線もある道は新しくできた道か交差点付近で少しだけ。
むしろ三号線でその広さがあるのは他県の方が多かろう。
県内ではまだ片側3車線の国道3号線は無いかかなり短いはずである。
要するに、地元を通っている一番太い幹線道路の名前を付けただけなのだ。
タイトル画面についてもばっちり国道三号線という名前が大きく書かれている。
というか、タイトルは絵を描くのが好きな木村君が描いたうちの小学校の校舎の絵をドット絵化して、上にロゴを載せただけの代物だ。
どう見てもうちの小学校マルバレである。
2人に言われた通り作ったんだが、これ、コンテストに出すとか全く考えてないんだろうな。
タイトル画面でスペースキーを押すと画面の下の方にStartのロゴが書き込まれ、次の画面へ。
ローディング風に女の子が画面中央で左から何歩か右へ歩いて、Stage番号が表示され、ゲーム画面へ。
ゲーム自体は大きく手を入れてはいない。
自動車をよけるタイプのフロッガーだ。
それで、ステージについては背景と車の形状だけ変更したものを3ステージ分準備した。
各ステージでちょっとづつ車のスピードが上がるように設定している。
それ以外の修正点は衝突エフェクトを増やしたくらいか。
女の子が車にぶつかった場合、ビープ音だけでなく、衝突エフェクトを出して車の反対側の画面外へ女の子が飛んでいくようにした。
通過中の車の側面に自分が突っ込んだ場合は横回転しながら手前か奥にぶっ飛ぶ感じ。
ぶっ飛んだあとはStage1に戻されて再スタートだ。
女の子がぶっ飛ぶアニメを3種類4コマづつドット絵で書いたのはちょっと面倒だったが、こういうのは派手な方が盛り上がるという高木君の意見に従ってこんな感じの仕上げとなった。
3面クリアすると、画面が切り替わり、女の子がそのまま歩いて学校に入ってゲームクリア。
ドット絵で、きりーつ、きおつけー、終わりって出てゲームクリアだ。
要するに通学のために道路を渡ってた、というストーリーなわけ。
ゲームの面白さはともかく、ストーリーは小学生って感じだな。
まあ、最初考えていたよりは面白くできたつもりである。
お披露目会とかするんだったら、これくらいは作りこみたいよな。ほんと。
アニメの多さはちょっとやりすぎたかなと思わないでもないけど。
ところで、話は変わるが、ゲームの完成とともにちょっと面倒な話が持ち上がった。
と同時に、ゲームの原型ができた頃に高木君と木村君が何に盛り上がっていたのかやっとわかった。
なんの話かと言うと、主人公の女の子にモデルがいるんじゃないか、と言う話だ。
主人公の格好をうちの小学校の制服に似せたのはいいが、ゲームの主人公と同じ背中までロングのおかっぱヘアの娘がクラスに1人しかいなかったのである。
そのことに気づいた木村君が、「竹尾はひかりちゃんに気があるんじゃないか」と言い出したらしい。
ひかりっていうのがその背中までロングのおかっぱヘアの子の事である。
言われてみれば、確かにうちの学校、うちの学年に限ってみると"背中までロング"の女の子が少ない。
年齢的に髪を洗うのが面倒なんだろう。長くて肩ぐらいで済ませる気持ちはわかる。
そこでさらに前髪ぱっつんまで条件に含めると、確かにその子しか残らないかもしれない。
うん、そりゃー誤解するのも解らんでもないな。
結構整った顔の子だから、確かにかわいいと言えばかわいい娘なんだよな。
それはわからんでもないんだが・・・。
正直言って、小六男子の会話じゃないだろ。
どういうませ方してればそういう発想に思いつくのか。
さすがに転生して以降、まだ女の子に惹かれるようなことは起きていない。
なにしろ、精神的な年齢差がすごいのである。
どう考えても、子供、って言動に恋愛感情とか紐づくまい。
こっちは50代のじいさまである。
小学生に好意を向けるって、出来ても完全に孫娘への視点だぞ。
だいたいそもそも、背中までロングで前髪ぱっつんのおかっぱヘアとか、アニメでめっちゃ見るやつやんけ、とか思ったが、よく考えるとこの時期のアニメではそうでもない。
んー、思い出せるのこの時期じゃZZのルー・ルカくらいかもしれない。
他に誰かいたっけ?未来のアニメじゃ、人気の定番の類型なのに。
まあ、いいや。
だいたいにおいて、こういう話題は思いつかれてしまったら終わりだ。
肯定するわけにもいかないので否定するしかないのだが、否定すればするほど疑われて話題は加速する。
まずは沈静化させるのが先だ。
そうなると、今はそういう事は無いとしながら話としては流すのが一番だ。
めんどくさくなった俺が、ここは「色数の問題でドット絵が作りやすかっただけ」って押し通そうって思ったところで木村君が一言。
「ところで、主人公の女の子って、別の髪型にすることもできんの?」
「いや、手間はかかるけどできるよ?」
「え、じゃ、2組の真由美ちゃんみたいのも可能?」
おいおい、話が違うじゃねーか。
話に出てきた真由美ちゃんの髪型は内巻き気味のショートボブである。
ちなみに水泳部。
最近はからだづくりのためよく薄着で校庭を走っている。
俺の中で木村君がむっつりじゃないか疑惑がわいた瞬間である。
「んじゃ俺は3組の裕子ちゃんがいい」
おまえはお前でポニーテールかよ。
裕子ちゃんは陸上部で夏は日に焼けて真っ黒の女の子である。
カモシカみたいな足をしていて、足も速い。
さすがに11月だと日焼けはそこまででないけど、結構地黒なのは好き嫌いが分かれるだろう。
小学生なのにうなじがいいとか言い出さなければいいけどな。
中身がおっさん通り越して爺さんに近い俺が言うのもなんだけど、小学生ってこんなませてたっけ?
ふつうはこういうの女の子のほうの反応じゃね?
まあ、技術的にはドット絵書き直してキャラの首から上だけ変更すればいいだけだけどさ。
「解った。それじゃ、キャラセレクト画面を作ろう。
その代わり、各自が希望した主人公キャラのモデルは存在しない、
似てるけど架空のキャラってことで」
「「わかった」」
その後、何とかキャラセレクト画面を実装するまでに4日かかった。
何しろ、せっかくキャラを選ばせるんだから何か意味を持たせないと、と頑張ったのである。
初心者用で何度ぶつかってもStage1に戻るだけのキャラと、自分の速度が上がる代わりに3回でゲームオーバーなキャラと、自機だけでなく敵も速度が上がるハードモードのキャラへと調整した。
これくらい差をつけておけば、なんでキャラクターセレクトがあるのとは言われまい。
完成した日、テストプレイした高木君と木村君はなぜかニコニコしていた。
うん、まあいいや。
マシン語の練習にはなったんだし。




