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ある10月の思い出3

倫太郎が本を買いに行くようです、その2。

駐車場の兼ね合いで自宅付近から熊本市内へ出るのは電車での移動の方が楽だ。

なにしろ、国鉄で熊本駅まで2駅だから。

短気な親父が一緒だと自動車での移動になるんだろうけど、母と一緒だと電車の場合が多い。

まずは、妹たちが居るので最寄りの駅までタクシーで移動して、電車で熊本駅へ。

熊本駅に着いたら、そこから市電で花畑町電停へ。

あとは銀座通りをしばらく歩くと、そこに紀伊国屋書店がある。


着くなり早速、妹二人が漫画誌を見かけて買って買ってと騒ぎ出す。

おかげで母は妹二人の攻撃に耐えかね、雑誌コーナーで足止めをくらっている。

いきなり大変そうな母の様子に内心で手を合わせるも、ここはスルー。


今日の俺にはこんなことで時間を浪費している暇はない。

今日は技術書を吟味する時間が必要なのだ。

困り顔の母に声をかけた後、俺は一人でエスカレータへと移動した。

3Fの技術書のフロアまでエスカレーターだけで上がれるので、待ってるだけで着くのだ。


3Fまでついてきてくれたのは祖母1人。

まだ足が悪くなる前だからいいけど、祖母が無理しないようにちょっとだけ移動スピードを落とす。

それに気づいたのかニコニコしながら見ている祖母を横目に早速、技術書の棚をあさる。


と言っても、平積み棚があるような通路に面した場所ではなく、脇に入った棚が並ぶゾーンがターゲットの技術書棚になる。

良く通ってた時代に比べて棚と棚の間が狭めなのが気になるが、この時代はこんなものだったんだろう。

ざっと内容を確認していく。


多いのはやっぱり8Bit系のホビーパソコン類に関する本。

PC-8001やPC-8801、FM-7にMZ、X1と機種ごとの本が並ぶ中、プログラム関連の本もいくらかある。

といっても、プログラム本全体で本棚のうちの1段の半分くらいしかないが。

BASICを中心に、最近やっと発行され始めたC言語やPascalの本が並んでおり、そうした中にぽつぽつと目的のアセンブラの本もあった。


中身を順に覗いていくが、やっぱり8bitCPUであるZ80の本が中心だ。

PC-8001用のアセンブラ本、MZ用のアセンブラ本、CP/M環境用のアセンブラ(MACRO80)本。

変わったものではフロッピー付きの冊子で「エディタ・アセンブラWACS」なんてものもある。


この本はフロッピーに入ったソフトの使い方を説明した本で、PC-9801の初期シリーズ向けのエディタが同梱されている。

このエディタ(これがWACSと言うのだが)でアセンブラプログラムを書くと、エディタ内のコマンドでPC-9801環境用のマシン語化し、16進形式のバイナリダンプを出力できるのだ。


と言っても、出力されたバイナリがそのまま実行ファイルになる訳ではない。

このバイナリはBASICから呼び出すマシン語ルーチンとして使用するのである。

大いに関心がわく内容なのだが、1つだけ問題がある。

値段だ。6800円。やっぱソフト入りは高っけーな。


そうして順番に中をのぞいていると、棚の真ん中付近に前の人生でも手に取った本があるのに気付いた。

「お、”初めて読むマシン語”だ。懐かしい。」

Z80向けのマシン語というとこれ、というような有名な本で、実は前の人生でも持っていた。

と言ってもべつに仕事でZ80用のプログラムを書いていたわけじゃない。

C言語のポインタの概念について調べていた時に先輩から勉強になるからと教えてもらったのがこの本だったのだ。


実際、読んだ時の記憶でも、Z80を活用するためというよりはマシン語全体への入門としての要素が大きかったようにも思える。

C言語のポインタ周りはマシン語のデータ構造をそのまま利用するような形で設計されているので、マシン語への理解が進むとそれがそのままポインタの概念の理解にもつながる。

コンピュータでプログラムを組むなら一度は読んでみていい本だと思う。

ちなみに、前の人生では死ぬ少し前まで余裕で売ってあった。

基本は強いなと思う次第である。

Z80でのプログラムに必要な要素はだいたい書いてあった気もするので今回の用途にはこれがいいかもしれない。

とりあえず、Z80本はこれにしよう。


あとは8086系CPU向けのアセンブラに関する本だが・・・。

本棚の端の方に1冊だけ、それらしい本がある。

”PC-9801 マシン語入門”

ぱらぱらとめくってみると、なんと希望にぴったりのMS-DOS上でのM(マイクロソフトマクロ)ASM(アセンブラ)を使った解説書だ。

巻末には8086のインストラクションセットの一覧も載っており希望にばっちり沿っている。

発行日時の関連でPC-9801シリーズでもVMに関しては一部未対応なようだが問題ない。

これだけ情報があれば、プログラムの準備としては十分だ。

十分ハンドアセンブル可能だと思う。

さすがに実機が無いとテストも出来ないので、実際の開発開始は中学生になってからになると思うが。


まあ、あらかじめ初歩的な演算用のルーチン作っておくだけでマシン語プログラムはすごく楽になるからな。

なにしろ、マシン語は処理系としては生に近すぎる。

加減乗除あたりですらプログラムが必要で、高度な処理を行うには、こうした基礎的なプログラムを積み上げておかないと本格的なプログラムは組めない。

それも、スピードを重視するなら、作成するだけじゃなくて、使うルーチンの命令数をいかに削るか、みたいなことまで注力する必要がある。

ノートで事前にそれが整理できれば実際のコーディングでも十分役に立つだろう。


そうやってこれさえあれば、あれも、これも、とか考えていると、祖母から声をかけられる。

「そろそろ、買う本は決まったかい?

そろそろレジを済ませないと、妹たちも腹を空かせる頃じゃないかねえ。」

時計を見ると、確かに思ったより時間が経ってしまっている。

選ぶのに時間をかけすぎたようだ。


焦ってレジに向かい、本を差し出すと、店員さんの一言で俺は青ざめた。

「3740円です。」

うわ、持ってきた金額をオーバーしてる。

手持ちの金額は3650円。90円足りない。


焦ってどうしようと考えていると、横から祖母が黙って100円出してくれた。

「今度小遣いもらったら必ず返すから」

「いいよぅ。誕生日だろ?ちょこっとだけだけど、プレゼントってことにしとくよ」

「ええ~」

「その2冊とも、本当に大切そうに持ってるじゃないの。

それだけ必要って事なんだろう?

そんな難しそうな本、何に使えるのかばあちゃんにはわからんけども、必要なんじゃろ?

だったら買うといい。100円位ならばあちゃんでも出せるよ。」

「ありがとう、ばあちゃん」


店員さんに袋に入れてもらって、持ってきたキャンバス性のショルダーバックに大切に包む。

これと来年手に入れるパソコンが俺の人生を変えてくれるはずのものになる。

何度も読み返して、しっかり身につけないと。


祖母の足の事を考えて、エレベータで1Fに降りることにする。

建物の中を抜けて、建物の入り口側の外へ。

エレベータで1Fへ降りると、退屈しきった妹2人とだいぶ疲れた顔の母と合流した。

1時間チョイ位のはずだけど、やっぱり時間をかけすぎたようだ。


「いい本は買えた?」

母の声にうんと答える。

最初の技術書としてはばっちりだろう。

「じゃあ、ご飯食べたら帰ろうか。ごはん、何がいい?」

「カレー。できればカツカレーがいい。いつもの地下の辛いやつ!」

岩田屋伊勢丹の地下のカレー屋、好きだったのに、大学で県外に出てる間につぶれちゃったんだよな。

今回はそれまでに何回食べられるだろうか?


妹たちが少しごねたが、結局誕生日の俺の意見が通った。

岩田屋伊勢丹の地下の店でカツカレーを食べて帰った。

食べてみるとなかなかおいしかった。

記憶って美化されがちだけど、この店のカレーは記憶通りだったな。

また来よう。


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