ある10月の思い出2
倫太郎が本を買いに行くようです、その1。
さて、今日が誕生日の前日と言う話は書いたと思うが、何故この日かという話はしていなかったな。
実は明日の日曜日、誕生日プレゼントを買いに連れてってもらえることになっている。
と言っても、別におもちゃ屋に行くわけじゃない。
楽しい楽しい本屋巡りの予定である。
今回は親父が仕事で付いてこない予定なので、付き添いのメインは母になる。
ただ、俺だけじゃなく、妹たちもつれていくそうなので、回れる本屋の数は限られるだろう。
となると、メインは熊本市中心部の本屋がターゲットになる。
熊本市内で書店というと、紀伊国屋書店、長崎書店、まるぶんが主力で、後に蔦屋書店が乗り込んできてあとは百貨店内にぽつぽつ、というのが市外在住の人間の記憶である。
実際には小規模な書店は割と多く、あちこち回ればそれなりに本を探すこともできる。
しかし、新しい技術書を探すとなるとそういう地方書店は品ぞろえが微妙になる。
それなりに本をそろえている書店に行かないと技術書の類は本自体が入荷しないのである。
そんな中、この時代の熊本で一番技術書が充実していた場所、というと、紀伊国屋書店になる。
熊本駅から市電に乗って花畑町停留所で下り、銀座通り沿いに下通アーケードへ向けて進む。
すると、道沿い左側のもう少しでアーケードという辺りに紀伊国屋書店が存在した。
1985年前後だと、市中心部にある中で一番大きな本屋で、後に蔦屋書店 熊本三年坂店が出来るまでは本屋として一番繁盛していた店だと言っていい。
前の人生のでは残念ながら2007年に閉店しており、現在は快活CLUBが入っている。
3F建てで、書籍レイアウトも何度か変わっているが、おおよそ1Fが雑誌や小説類、2Fは一般書籍や漫画、そして3F奥がレコードや技術書のコーナーだった。
前の人生では俺もひたすらよく通った場所で、高校、大学時代の帰省時、社会人と何度も足を運んだ覚えがある。
とは言え、普段買ってるような月刊のパソコン雑誌等は1Fの雑誌コーナーにあるので、母的にはそこがターゲットだと思っているだろう。
しかし、今回の目的地は1Fではない。
今回は3Fの専門書コーナーにある本がターゲットだ。
狙うはマシン語関連の本。
それも、PC-9801で使用されている8086やV30向けの物を狙っている。
と言っても、1985年というと、まだ8086関係の本が出だしたばかりのころの筈。
本棚に並んでいる本の主力はZ80向けが中心だろう。
だが、いま必要なのは出だしたばかりの8086向けのマシン語本。
そのレアな8086向けマシン語本を見つけるのが今回のミッションである。
なにしろ、このままいくと、来年の夏まではPC-9801向けのプログラムは全く作ることが出来ない。
となると、まずは実機無しでプログラムが出来るよう、8086向けのデータシートが掲載された本が欲しい。
また、可能ならアセンブラ本を元に、以前使ってた技術・・・インラインアセンブラで培った技術が使えるかどうかも判断しておきたいと言うのがある。
また、Z80向けのマシン語本も要らないわけではない。
本番となる8086互換環境向けのマシン語プログラムを組む前に、実機のある8Bit環境でマシン語を組むことを試すのは悪くない考えだ。
高木君のX1や木村君のMSXなど、友達の家まで行けばZ80系統を搭載した実機があるのだ。
試してみるのは悪いことじゃないだろう。
なにしろ、X1やMSXのBASICは遅い。
特にグラフィック周りを触ろうとすると特に遅い。
今はまだテキストモード中心でのプログラムで済ましているのでそこそこの速度で動かせているが、Line文を使ったり、文字情報をキャラに書き換えて使うようなプログラムじゃ、まともなスピードのゲームは作れないだろう。
だから、グラフィック込みのプログラムに手を出すなら絶対にZ80向けのマシン語も必要になる。
そういう意味では1冊くらいは入手しておきたいのは確かなのだ。
問題は、誕生日プレゼントで渡される予定の図書券で両方を購入できるか、という事なのだが・・・。
頼むよ親父。せめて普段の小遣いの4倍、2000円位はお願いしたい。
技術書の類はホント高いんだよ。
そこで2冊となると、かなり厳選しないと調達は難しくなるから・・・。
果たして必要な本を手に入れることが出来るのか・・・。
翌朝、俺は完全勝利の笑顔で目を覚ました。
昨日、夕食時に親父から渡された図書券は3000円分。
「このところ、勉強も頑張っているみたいだから奮発した」という話だった。
確かに、過去に巻き戻ってからずっと勉強を頑張ってはいる。
しかし、それがこんなところにまで影響を与えるとは思っていなかった。
朝食時に父に礼を言い、今日は本を買いに行く旨報告する。
母によると、今日は本屋に行った後、昼食を外食して戻ってくるというスケジュールらしい。
上と下の妹もつれていく為、母のほかにも祖母も一緒に出掛けるそうだ。
まあ、ちょっとしたお出かけだな。
起きてすぐ、財布をチェックする。図書券以外にも手持ちの小遣いが650円。
これは毎月の小遣いの残りをためていたものに、俺の小遣いの残りを足したものだ。
毎月の小遣いが500円。
これでも、マイコンBASICマガジン辺りは1冊350円であるため毎月購入できる。
余った150円を2か月分と、それ以前の小遣いの残りが350円というわけ。
正直、お菓子なんかにも使いたいのだが、質を考えなければおやつはあるし。
500円しかないのに、それをお菓子に使うのはなあとか思っちゃって。
まあ、今回の人生では無駄遣いは極力しないで生きていこうと思ってるわけです。
ちなみに、質って言ったけど、おやつの質が良くないという話じゃないんだよね。
うちではおやつとして祖母の手作りだご汁とかが出てくるんだよね。
だご汁って、熊本の郷土料理で、練った小麦粉をしばらく置いといた後、手で伸ばしてちぎったのを醤油味の汁に仕立てたのの事。
普通は昼食とか夕食ので出てくる汁物の椀だね。
おやつとして出てくるものじゃないわけ。
だから友達んちのホットケーキとかが羨ましい年ごろなわけだ。
まあさすがにそこは2度目だけに我慢できるけどね。
それに、前の人生ではついつい祖母におやつの事で文句言ってしまったことがあって。
で、その時の悲しそうな顔思い出しちゃうと、ちょっとね。
我が家は両親が共働きだったので、前の人生では祖母には本当に世話になった。
実際、親よりも親らしいことをしてもらっていた気がする。
母方の祖母と、父方の祖父にはほんとうに頭が上がらない。
そんな祖母が死んだ時の事とか思い出すと、今回の人生では悲しい思いをさせたくないなって。
とは言え、まだ今年62歳だから、ヨボヨボってよりはシャキシャキした感じなんだけど。
まあ、余談はともかく。
図書券と合わせると3650円。
技術書2冊と考えると結構心細い金額だが、マイクロソフトのWindowsAPI本を買うわけでもないんだ。
多分、何とかなるだろう。




