指輪
今日はわりと暖かです。
朝、通勤途中歩いていて思いつきました。
ふと思い立ってクリーニングしようとしたら指輪が抜けなくなっていた。
軽い焦りでスマホ片手に検索し、糸とオリーブオイルでなんとか危機を脱した。
本当に久しぶりに見る指輪の裏側の刻印『June 1st,2004 Y to A』が汚れのおかげでくっきりと読める。
なるほど、子供も受験の年になり、寄る年波も感じるわけだ。
何より指輪が抜けなくなると言う体たらく…
『ディズニーアンバサダーホテル』にステイし、『パパ』からのプロポーズを受けたあの夜…
鏡に写った自分を『美しい』と感じ、“今日”の想いと共に劣化させまいと誓ったのに…
あの頃流行った唄の文句の様に、四六時中好きと言われないから?
パパが指輪をどこかで無くしてしまったから?
男の子二人の子育てを一手に引き受けたから?
第一! 劣化したのはパパの方が先だ!
中性洗剤を垂らしたコップのお湯に指輪を落とし、なんとなくサラサラと振ってみる。
モヤモヤンと揺れる指輪はレンズ効果か?大きく見える。
このくらい大きければ楽なのにね。
薬指にくっきり付いた跡に指輪を戻すことは躊躇われる。
壁の時計がパートの時間の訪れを知らせる。
別に浮気するつもりもない。
頭の中に、パート先の男共の顔を思い浮かべて、心の中の声を大にする。
そんな事はあり得ない!!
でも、
これを機会に
指輪つけるの
止めよっかな!
とうの昔に
パパはしてないしね。
パート先へ向かう自転車を右手だけで漕ぎながら、空いた左手の親指で薬指の腹を撫でてみる。
僅かな違和感と気持ちの軽さは、せいぜい指輪の重さくらい。
かくも重い“日常の煩わしさ”は坂道を漕ぐペダルの重さくらい。
それでも坂道の上を目指し漕ぎ続ける私の額を、気の早い春風がそよと撫でて行った。
このお話は完全にフィクションです。
楓の日常とはまるっと無関係なのですが…
エチ無しだけど僅黒なので、『黒楓名義』にいたしました。
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>