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ホワイトナイト

 タクシーは万代広場から北上、流作場五差路に出て、新潟市街を分ける大通り・国道7号を走る。

 そしてひときわ目立つ膨らんだ形の高層ビル・新潟日報メディアシップ前をすぎ、信濃川を立派な作りの萬代橋で超える。

 あたりに中層建築が並ぶなか、川向うにNTTの鉄塔が見えた。


「ここでいいです。ありがとうございました」


 頭取が川を渡ったホテル前でタクシーを止め、カードタッチで素早く支払い、降車する。


「あそこよ」


 この柾谷小路の道路の反対側、石造りの古風な建物が目的地だ。


 頭取が目指したのは、北陸地方を地盤とする越山銀行の本店だった。


「越山銀行……地域密着型で地元の名士たちから強い信頼を得ている北陸中心の有力地方銀行ですね。北急の地域密着寝台ジョイフルトレイン『雪水米宋』プロジェクトにも、公的セクターとともに融資という形で深く関わっていると伺っています」


 詩音が情報を提供する。


「ええ。そして、彼らこそが、私が密かに用意していたホワイトナイトよ」


 頭取は力強く言い切った。


 越山銀行の頭取室に通された山本理華は、越山銀行の頭取・山崎と対面した。


「山本頭取、まさか貴方からお越しいただけるとは。北急電鉄の件、大変ですね」


 山崎頭取は、穏やかな笑顔で頭取を迎えたが、その目は真剣だった。


「山崎頭取、単刀直入に申し上げます。北急電鉄を救うために、貴行の力をお借りしたい。グローバルワークキャピタルによるTOBを阻止するための、ホワイトナイトになっていただきたいのです」


 頭取は、EHR-400Xの真価、東郷徹郎の悪質な情報操作、そして北急電鉄が持つ地域の未来への価値を熱弁した。

 そして、北急の長距離列車事業が、越山銀行の地盤である北陸地方にもたらす経済効果の大きさも強調した。


 山崎頭取は静かに話を聞き終えると、深く頷いた。


「山本頭取。貴方の情熱と、北急電鉄が持つ『夢』に、私も賭けます。地域金融機関として、地域を軽視し、利益だけを追求する外資系ファンドに、大切な資産である鉄道を奪われるわけにはいきません」


 山取頭取は、そう言って、北急電鉄の株式を市場外で買い増し、TOBに対抗するための資金提供を行うことを約束した。


「ありがとうございます、山崎頭取。これで、北急電鉄は一筋の光を見ることができました」


 頭取の顔に、初めて安堵の表情が浮かんだ。


 越山銀行がホワイトナイトとなることで、北急電鉄の株主構成は一気に変化し、グローバルワークキャピタルのTOB成功率は急降下する。


 しかし、まだ戦いは終わっていない。残る二つの列車、大阪と仙台に向かったツバメ、カオル、御波、華子の安否、そして東郷弁護士の次の手を警戒する必要があるのだ。


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