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三つの夜行列車、囮作戦

 YouTubeライブによる告発で、東郷徹郎とグローバルワークキャピタルは窮地に立たされたが、彼らが最後の手段として、頭取の物理的な拘束や妨害を仕掛けてくる可能性は極めて高かった。


「東郷は、山本頭取を北急電鉄の株主総会に出席させないために、あらゆる手を打ってくるでしょう。特に、世論が動いた今、焦って大胆な行動に出るはずです」


 詩音がそのおだやかな普段とは違って鋭く指摘する。


「ゆえに、ワタクシたち、追手を撹乱する作戦に出るのである!」


 総裁は、緻密に練り上げた囮作戦の概要を説明した。


「皇軍の最大の作戦、レイテ沖海戦に習った大規模かつ高度な囮作戦である! 名付けて「鉄五号作戦」であるのだ!」


「史実で悲惨だった作戦なんで真似するの!? ヒドイっ!」



 一行は、その日の夜、東京から出発する三つの夜行列車に分乗した。


寝台ジョイフルトレイン「雪水米宋」 新潟行き

  頭取・総裁・詩音

寝台快速「明星」 大阪行き

  ツバメ・カオル

特急「リバイバルスーパーひたち」仙台行き

  御波・華子


「この三つの列車、どれに乗っているかを敵に悟られてはならぬ。ワタクシたちは、それぞれの列車で、東郷の手の者が動き出すのを警戒し、同時に最後の情報収集を行うのだ」


 御波とカオルは、それぞれに与えられた任務と、頭取の安全確保という最大の使命を胸に刻んだ。


 そして総裁、頭取、詩音を乗せた寝台ジョイフルトレイン「雪水米宋せっすいべいそう」は上野から北上、信越本線に入った。


 その落ち着いた空間は、気動車でありながら長旅の疲れを忘れさせる。


「雪水米宋」は、北急電鉄とJR東日本が共同で運行する4両編成のハイブリッド気動車寝台列車である。全長が短いため機動性に優れ、地方のホーム長が短い非電化区間にも乗り入れられるのが特徴だ。


 車内は、豪華な個室寝台に加え、板前割烹を提供する本格的な食堂車が連結されていた。


 その食堂車「しば田」では、新潟産の米、地酒、日本海の海の幸、越後山脈の山の幸など、新潟の豊かな食材を活かした料理が提供される。とくに料理クルーが固定されているために「走るオーベルジュ」としてミシュラン掲載を目指しているのもまた特色である。


 総裁と頭取、詩音は、この「しば田」で夕食を取り、心身ともに英気を養った。


 短い編成ながらシャワー室も完備されており、三人は東京から新潟までの移動の疲れを洗い流すことができた。


 列車は国境を超えて日本海側に出る。長い勾配も最新鋭ハイブリッド動力システムで難なく超えた。


 そして迎えた戦いの朝。


 食堂車で供された朝食は厳選された新潟米を使ったお茶漬けだった。


「ああ、この出汁とお米の香りが、心を落ち着かせるのであります」


 総裁は、静かにそう呟きながら、一粒一粒を噛みしめるように味わった。頭取もまた、このシンプルな朝食に、戦いへの集中力を高めているようだった。


「これこそ儀式ですね。余分なものを削ぎ落とし、本質と向き合う時間ですわ」


 詩音も静かに頷いた。越後の清らかな水と米は、彼女たちに新たな活力を与えた。


  「雪水米宋」サービス項目

編成   4両 ハイブリッド気動車寝台列車

運行区間 上野 - 新潟(JR東日本との共同運行)

食堂車  板前割烹「しば田」(新潟の厳選食材を提供)

設備   個室寝台、シャワー室、ラウンジカー

朝食   新潟米のお茶漬け(厳選された出汁と香の物)


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