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宮崎へ

 三人は急ぎ羽田空港から宮崎行きの飛行機に乗り込んだ。


「羽田に来たのは、なんだか久しぶりね。このところいつも列車での移動だったから」

 頭取がそう言って、空港の喧騒を見渡す。

「なつかしいう。九州へ鉄研旅行で向かったのを思い出すのう。飛行機もまた旅行と交通ネットワークの一環。ただ忌避しては物事を見誤ってしまうのだ」

 総裁が誇らしげに胸を張る。


「まあ、今回はスピード重視。東郷に先を越されるわけにはいかないわ」

 頭取は、機内に乗り込む前に、総裁と御波に向き直った。


「宮崎では、何が待ち受けているかわからない。最大限の警戒を」


「お任せください! 鉄道を愛する者として、日本の鉄道の未来を守り、そして2000万円を無事取り戻すのであります!」


 御波は小さく笑い、三人は宮崎行きの航空機へと乗り込んでいった。


宮崎、南国の最前線

 宮崎ブーゲンビリア空港に降り立った三人を迎えたのは、真夏の陽光と、南国特有の湿った空気だった。


「暑いですね……」御波が顔の汗を拭う。

「東京とはまた違う、南国の熱気でありますな」

 総裁も日差しに目を細める。

「北海道ともまた違う。日本って本当細長いわね」


 頭取は休む間もなく、タクシーを拾い、リニア実験線跡地がある日向市へ向かうよう指示した。


「善さんが残したメッセージの『心臓』は、きっとあそこにあるはずよ」


 約1時間半後、タクシーは日向市内の旧リニア実験線跡地に到着した。高速道路のような高架橋が延々と続き、その下は広大なソーラーパネルが敷き詰められたメガソーラー施設となっていた。


「ここが、かつての日本の高速鉄道技術の夢が詰まった場所……」

 総裁が目を丸くする。


 だが、あたりは静寂に包まれ、人の気配はほとんどない。善さんの動画に映っていたコンクリートの壁の落書きはあったが、それ以外に特筆すべき施設は見当たらない。


「タクシーの運転手さん、この近くに北急電鉄関連の施設があったりしませんか?」

 御波が尋ねる。


「北急電鉄? いやあ、聞いたことないねえ。ここは昔のリニアの実験線跡地だけど、今は太陽光発電と、あとは部品の試験場くらいのもんだよ。リニア関係は山梨に全部行ってしまったし。都会の人がたまーに廃線跡だ、って見に来るくらいでね」

 運転手は首をかしげる。


「まさか、これで行き詰まり、でありますか……」

 総裁の顔に焦りの色が浮かぶ。

 善さんのメッセージは、単なる何かの冗談だったのか。


 三人が途方に暮れ、タクシーに戻ろうとしたその時、御波が指差した。


「あ、あれ! 見てください!」


 高架橋の陰に、ポツンと一軒の農家が見える。周りには広大な畑が広がっている。

 その農家は雑木林に埋もれるように建っていて、コンバインなどの農機具が並ぶ農業倉庫が隣接していた。その倉庫の隣には、古びた土蔵が建っている。


「土蔵……?」

 頭取が訝しむ。


「あれは?」

 御波の目が一点に釘付けになる。


 その土蔵に、周囲の建物とは比べ物にならない太さの、見慣れない200Vの高圧電線が引き込まれているのが見えた。


「まさか!」


 総裁は思わず声を上げ、タクシーを降りた。頭取と御波もそれに続く。


「運転手さん、ここで待っててください!」


 三人が農家の敷地に入り、土蔵に近づくと、古びた扉がわずかに開いていた。総裁がそっとその隙間から中を覗き込むと――


「これは!」


 土蔵の中は、外見からは想像もできない光景だった。


 静電気を嫌う精密機械のために、土壁には金属製のシートが貼られ、落雷回避のアンテナの下、最新鋭の空調設備が導入されている。

 そして、その中心には、SF映画から飛び出してきたかのようなスクエアな形状の巨大なスーパーコンピュータが、青い光を放ちながらフル稼働していた。


 無数の光と冷媒のケーブルとチューブが複雑に絡み合い、サーバーラックのファンが唸りを上げている。

 これは、間違いなく高度な情報処理を行うための施設。


 その時、土蔵の奥から声が聞こえた。


「誰だ! 勝手にここに入るな!」


 老人の強い声に一行はその場で飛び上がりそうになる。


 そして一人の若い女性エンジニアが、緊張した顔で三人に駆け寄ってきた。彼女の胸には、北急電鉄の社員証が下がっている。


「北急電鉄の社員の方ですね。北浜共立銀行の山本です。事情があり、北急の危機を救いに来ました!」

 頭取が冷静に名乗りを上げた。


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