札幌
「着いたー!!!」
大阪から約20時間にも及ぶ長い列車の旅を終え、『デラックス日本海』は定刻通り昼過ぎの札幌駅に到着した。
活気あふれる札幌の街の空気は、大阪や東京とはまた違った、どこか清涼感のあるものだ。
「ワタクシたち、さっそく竹警部とカオルくんと合流するのだ」
「ちょっと待って! 総裁」
頭取が静止した。その顔は厳しい。
「カオルさんからまたメッセージが来ているわ。東郷弁護士が動いた」
頭取のスマホ画面を覗き込むと、カオルからの緊迫したメッセージが表示されていた。
カオル「敵が動いた。北浜共立銀行の役員会を敵側が招集請求した模様。開催日は明日の午後。場所は大阪本店」
「リモートで役員会を開けるように定款変更の役員会をこっちが招集しようとした矢先よ」
頭取は口を歪めた。
「頭取が不在の今、敵側が一気に定款変更を阻止する可能性が高い」
「なんと!」
総裁が声を上げる。
「東郷徹郎……やはり、先回りしてきたわね。大阪で役員会を開くのは私が移動する手間をかけさせ、不在の間に仕掛けようという魂胆ね」
「このままだと頭取は大阪を動けなくなる。北急株主総会への出席も阻止されてししまう!」
御波がそういう。
「その通り。時間は私たちには残されていないわ。すぐに大阪へ戻る。札幌での調査はカオルさんに任せましょう」
「しかし、どうやって大阪へ? 途中で狙われる可能性が」
「……北急電鉄には、大阪と函館を結ぶ特急があるわ」
頭取が地図アプリを開く。
「北急電鉄、JR北海道、JR東日本、JR西日本の4者共同運行による特急『オーロラ白鳥』。所要時間は15時間50分。今から函館に飛行機で向かえば、今夜の函館発の『オーロラ白鳥』に乗って大阪に着ける」
「うわ、すごい! 北急電鉄の長距離列車、このルートも走っているのですね」
「向こうは薄々北海道に我々が来たことを察知しておるかもしれぬが、まさかまた長距離列車で大阪に戻るとは思うまい。そして北海道と関西を結ぶ貨物列車の大動脈を利用した運行だ。これもまた樋田会長の趣味が暴走したとしか思えない列車であるのだ。これですぐに大阪駅に向かうのだ!」
「なんかこれ「水曜どうでしょう」のサイコロ旅みたい……」
御波が呆れている。
頭取と総裁たちは急ぎ足で駅のコンコースを駆け抜ける。
冒険は丘珠空港へ、そして函館へ。




