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データの密室

「これで警察だけでなく労災の可能性で労基署も来てる」


「北急の敵、東郷弁護士がかかわったにしては随分凝った事件であるのう」


「そうなんだよね。どうにも複雑で大掛かりすぎる」


「グローバルワークキャピタルがやるにしても、いくらなんでもと言う気が」


「そして東郷弁護士は東京にいたようですね」


「むむむ。何かがおかしい。これでは全く組めないパズルのようだ」


 カオルが言う。


「北急は全面的に捜査に協力しています。この件が来る株主総会に影響しそうだけど、そこで変な隠蔽めいたことをしたら逆に追い詰められてしまう、という判断です」


「樋田会長らしい判断ね」


「ただ、それで提出したすべてのログが大量すぎて。ボクも見たけど、なかに生成AIによる自動要約が混じってて完全データじゃないの」


「ええっ、それじゃかえって大変じゃない! 調べるのが困難に」

 御波が言う。


「そうなの。ボクはそこまでの北急のシステムの権限持ってないからどうにもならない。だれかがそういうコトしたのかな、と思うけど、それが誰だかわからない。そこで技術顧問の山城さんに相談してる」


「山城さん?」


「外部技術顧問。東大理工学部の修士。北急の多くのシステム構築に助言してくれてた。中堅IT企業アークラインテクノロジー(ALT)のCEOでもある。ALTは企業向けクラウドのシステム設計・提供やデータ要約AI「SYNOPT」の開発、ITインフラのリスク管理運営へのコンサルティングをやってる会社。2008年創立で資本金4億円」


「そうなんだ。優秀な人ね」


「政府のIT化推進、ガバメントクラウド構築の委員会の委員もしてるスーパービジネスマンだ。ぼくもなんどか会って話してる」


「ともあれ、今のところそのデータセンター密室の捜査は困難な状態なのであろう」


「そう。データ量が多くて時間かかるし、いろんな謎要素があって真相がつかみにくい」


「東郷弁護士をつかまえて全部聞こうにも、この件との直接のつながりがない」


「そうなんだよね」


「かくなる上はワタクシの片目の力で自白させるしか」

 総裁がそう言い出す。総裁の片目、カラーコンタクトで隠している目で見られると人は嘘を自白してしまうのだ。


「やめて。それ、ものすごく危ないし、使って自白させたってそれをどう検事さんと裁判所に提出するの? いろいろと無理すぎる」


「てへ」


「総裁変なところでまた照れてる」


 そのとき、列車の発車を告げる放送が鳴った。


「お昼ご飯はまた食堂車でいただくことになるのう」


「列車の旅って時間がかかるわね。それがいいんだけど、先を急ぐなら早く着く特急に乗り換えたほうがいいかも」


「北急電鉄の誇る牽引機関車DF200旅客型でもそこまで速度は出せぬからのう」


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