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頭取、再び急ぐ

 その夜、北浜共立銀行本店での対応を終えた頭取は、すぐさま次の行動に移ろうとしていた。総裁と御波は、頭取の護衛という任務を再認識し、緊張感を高めていた。


「東郷徹郎……やはり、あの男の影があったか」


 頭取は、総裁が持参したカオルからの続報を読みながら、厳しい表情で呟いた。カオルは、善さんのアカウントの不審な動きを追跡する中で、かつて北急の解体を企てたリゾートファンドの元顧問弁護士、東郷徹郎が、今回のTOBの裏で暗躍している可能性を示唆する微かな痕跡を見つけていた。


「総裁、東郷は北急の情報を手に入れるためなら、どんな手段も厭わないでしょう。笹木さんに情報漏洩の濡れ衣を着せ、さらに札幌のデータセンターにまで手を伸ばしたとすれば、彼の目的は単なる買収ではない。北急の根幹に関わる何かを狙っている」


「その通りであります。ワタクシの『悪しき者』への勘は間違いなかった。しかし、奴は一体何を……」


「その答えは、札幌にあるはずよ。札幌のデータセンターでの一件、そして竹警部の捜査。すべての糸口はそこにある」


「大阪から札幌、となると……」御波が地図アプリでルートを検索する。


「普通は新幹線と飛行機を使う感じですね」


「しかし、それでは敵の動きを読んで、待ち伏せされる可能性があるわ。私たちは目立たない移動手段を選ぶべきよ」


「……ということはまた寝台特急でありますな。夜行の」


 総裁が口元に笑みを浮かべた。


「ええ。『デラックス日本海』。大阪から札幌へ、日本海側を経由して走る、北急電鉄とJR北海道・JR西日本との共同運行による夜行特急列車。これなら敵も警戒を緩めるはず」


「また寝台列車ですか! 運が良い。しかし切符はありますか」


「樋田会長が手配してくれたわ。あなたたち鉄研のネットワークと、北急の持つ全国の鉄道網を最大限に活用させてもらうわよ」


「ワタクシたちに与えられた使命、しかと果たします! 悪しき者の企みを阻止し、北急電鉄の危機、そして2000万円を何とかするのであります!」


 総裁の決意に、頭取は満足そうに頷いた。


「では、大阪駅へ急ぎましょう。『デラックス日本海』で、札幌へ。発車は17時47分、ちょっとタクシーで急がないと」


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