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会議室での激論

 役員会議室での朝の議論はやはり激しいものとなった。北急電鉄への敵対的TOBに対する対応策を巡って、意見が真っ二つに割れたのだ。


「頭取、グローバルワークキャピタルの提案するTOB価格は、現在の株価を大幅に上回っています。これは株主にとってメリットが大きい。反対するのは道義的にはともかく、金融機関としての利益追求の原則に反します!」


 重厚なテーブルを挟んで、専務が頭取に食ってかかる。彼はつつじHDとのパイプ役でもあり、常に利益を最優先する論者だ。


「専務、確かにTOB価格は魅力的です。しかし、北急電鉄が持つ社会的な価値、地域経済への貢献度を無視して良いのですか? KKBは地域に根差した銀行として、単なる利益以上のものを追求すべきです」


 頭取は冷静に答える。


「理想論は結構! 今は非常時です。理想だけで経営はできない。川崎銀行がTOBに応じたこと、どうお考えですか? 彼らはドライに判断した。我々もそれに倣うべきだ」


「川崎銀行の動向は承知しています。しかし、その裏には何かしらの圧力や事情があったと見ています。そして、TOBを仕掛けた側の真の目的が北急の経営権ではない可能性があること、情報漏洩事件や札幌のデータセンターでの死者といった不審な点も無為に看過できません」


「そんな憶測で、何百億円という膨大な利益を棒に振るのですか! 我々は我々の株主にも説明責任がありますよ!」


「憶測ではありません。私は事実に基づいて判断しています。北急電鉄は、樋田会長の下で再生を果たし、地域に愛され、また日本の観光業界でも周遊・長距離列車事業など先駆的な鉄道として新たな価値を創造している。その芽を摘むことは、未来の莫大な利益を捨てるに等しい。金の卵を産む鶏を焼き鳥にして食べてしまうようなものです」


 頭取は、自席の横に立っている総裁と御波を一瞥した。二人は一言も発さず、頭取の言葉を真剣な表情で聞いている。その姿は、頭取の理想を体現するかのように見えた。


「私は北急電鉄へのTOBに反対し、徹底抗戦の構えを取ることを提案します。株主に対して、TOBの不当性を訴える意見広告を出し、ホワイトナイト候補を探すなど、あらゆる手段を講じます」


「ホワイトナイト? そんなもの、すぐに現れますか?」


「信念を曲げなければ現れます。必ず」


 頭取の強い意志に、専務は言葉を失った。他の役員たちも、そのオーラに圧倒されている。KKB頭取・山本理華は、単なる銀行家ではなく、強い信念を持つリーダーだった。


 議論の末、頭取の提案は僅差で可決された。KKBはTOBへの対抗姿勢を明確にし、株主に「TOB不応答」を呼びかける声明を出すことになった。



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