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北浜共立銀行本店

 大阪市中央区北浜。高層ビルの林立する大阪を代表する金融街の一角、最新の免震構造を持つ高層ビルの中に、北浜共立銀行(KKB)の本店はある。東京本店同様にガラス張りのモダンなオフィスは、淀屋橋から続く古い重厚な石造りの建物の合間にあって異彩を放っていた。


 役員会議室に入る直前、総裁はカオルからのメッセージを頭取に伝えた。


「札幌のデータセンターの件、被害者は北急電鉄のデータを直接扱える人物ではなかった、とのことです。ただ、その人物は八菱電機の下請けにあたるメンテナンス会社の社員で、非常に高度なスキルを持っていた。そして、亡くなる直前に、カオルくんにメッセージを送っていました」


「どんな内容だったの?」


 頭取は冷静に尋ねた。


「『善さんのアカウントが動いている。何かがおかしい』と。竹警部もこのメッセージを重視して捜査しているとのことです」


「善さんのアカウント?」


「さふであります。すでに亡くなった北急の伝説的なベテラン技術者のアカウントが、札幌のデータセンターで動いていた。しかも、データにアクセスできる権限を持つ人間のアカウントが」


 頭取の顔がわずかに引き締まった。

「なぜアカウント止めてなかったの?」

「亡くなっても善さんを慕うつもりで完全に抹消はしなかったのですが、不活性化はしてありました。しかしそれがパーミッションが変更されてアクティブになってるそうです。カオル君及び四十八願さんの判断で、もう少し泳がして敵の特定につなげる方針とのこと」

「善さんを利用して、誰かが北急の情報を狙っている……。笹木をそそのかした『悪しき者』が、やはり実在するということね」

「ええ。カオルくんは絶対許さないつもりで発信源を検索してるらしいです。その悪しき者は、データセンターの社員までをも手にかけ、よりによって北急魂の第一人者だった善さんのアカウントを使って何かを画策している」

「ええ。これはただの買収劇ではないわね。情報戦、そして命がけの戦いよ」


 御波が静かに二人のやり取りを聞いている。


「総裁、役員会よ。行ってくるわ」


「はいっ!」


 総裁が敬礼しようとするのを、頭取は手で制した。


「大丈夫。あなたたちは私のボディガード。エレガントに、ね」


 頭取はそう言って、颯爽と役員会議室の分厚いドアを開けた。


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