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陰謀の香り

「今の株の保有比率ではグローバル側のTOBは成功しかねない情勢です。それを逆転するには個人株・外国人株の動向が焦点。そこで北浜共立の山本頭取の動向に注目が集まっています。弊社の第2の黄金時代を切り開いた頭取の直接の意見は株主への影響力は大きいと考えられる。さらにこの買収劇にかくされている真相が露見したら。ここからの逆転は十分にあり得ます」

「逆に言えば、グローバル側にとって北急の経営権なんてどうでもいいのかもしれないな。その目論見が達成できれば北急なんてどうなってもいいのかも」

「我々はたまりませんよ」

「そりゃそうだ。どちらにしろ頭取の身柄の安全と真相究明が急務だ。そこで我々は頭取の盾となる。現在弊社は各方面に向けてJRさんと協力する2種事業として長距離列車を各方面に運転している。その中なら我々が守れる」

「普通にじっとどこかホテルに隠れてればいいんじゃないですか。わざわざ移動しなくても」

「そのとおり、弊社経営のホテルはある。しかしそこにこもっていて解決できると思うか? まず頭取は北浜共立の役員会で弊社TOBへ対抗することを確認せねばならないが、北浜の役員会にはまだリモート参加の規定がない。確認には大阪本店に移動する必要がある」

「今どきこんな体制の本行で正直、忸怩たる思いです。ほかの案件を先にしてそこをなおざりにしてしまった。すみません」

 頭取は頭を下げた。

「しかたないですよ。まずは御行の決定を早くアナウンスできる状態にしてください。私もつてをあたってみます」

 樋田会長がとりなす。

「北急の意思として、TOBには断固抵抗する、としたい。異論は?」

 重役たちはみなうなずいた。

「そうだな。我々の魂と志と夢の鉄道、うばわれてたまるものか。冗談じゃない」

「ええ!」

「そうです!」

 声がそろった。

「頭取、改めてよろしくお願いします」

 樋田会長は頭取の手を握った。

「すぐに大阪にもどって行内の意見をまとめたいのですが……新幹線、間に合わないわね」

 頭取は時計を見た。

「えっ、もうこんな時間!」

 御波が驚く。

「20時を回ってる。新大阪行き最終の新横浜20:00ののぞみ223号に間に合わない!」

 カオルがメッセージを送ってくる。

「ふつうは、であろうの」

 総裁が不敵に笑う。

「北急運転の列車にありましたな。東京から大阪を結ぶ寝台快速」

「『明星』だな。あれは東京を23:10に出て、翌朝7:28に大阪につく寝台快速だ。小田原は0:31に停車する」

「間に合いますね! 23時の北急の列車で!」

「席、あいてるかな」

「調べてます。満席、かとおもったら明星コンパートに1つキャンセルが出てます!」

「確保だ」

「できました!」

「明星、一般座席と女性座席、一般と女性のクシェット(簡易寝台)、それにコンパートがあるけど、どれもなかなかおかげさまで切符が取れない事で有名になってる」

「運はまだ味方してますね!」

 御波は声を弾ませた。


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