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重役会議

「田岡もほんと、しょーがねえなあ」

 会議室の大画面に映るさっきの田岡の取材の様子を報じるニュースショーに、樋田会長は笑っている。

「駅の宮ケ瀬蕎麦に昼食しにいくところだったので空腹で気が立ってました。すみません」

 重役フロアの会議室に北急首脳が集まっての緊急重役会である。社屋に社員食堂あるのに、と周りが言うと、駅の蕎麦はまた違うんですよ、と田岡が答える。

「まあいい。『こんな会社なんてつぶれっちまえ!』っていうかと思った」

「そんなことないですよ。いくらなんでも」

「それは拓銀破綻のときの有名なインタビューですな」

 田岡の声の次に総裁が答える。

「まあ、北急はまだつぶれてないし、TOBの内容もまだ不明なのはまったくその通りだ」

「あの内容でTOBって、ちょっと腑に落ちません。不自然です」

「ちょっとどころか、著しく不自然で前代未聞だ」

「では、彼らには何か別の狙いが?」

「そうだと思う。でも思い当たることがない」

 樋田はそういう。

「そうでしょうか。国交省と樋田会長、「あまつかぜ2」の建造の時に喧嘩してませんでした? 国内で観光開発は足並みそろえろ、っていう国交省にジャック・リーに支援してもらうからいちいち文句言うな、って」

「あ」

「あ、じゃないですよ。会長からこの調子だもの。うちの会社、心配だよなあ」

「そうですわね」

 頭取が続く。

「この件、わからないことが多すぎます。川崎銀行がなぜグローバル側に行ってしまったのかもわからない。金融庁、国土交通省の受け止めもまだわからない。それにどうも……うっすら犯罪のにおいがする」

「犯罪?」

 総裁がタブレットPCを読む。

「今朝、札幌のデータセンターで死者が出ました」

「それが今回にどう関係が?」

「データセンター、外側にはメンテナンスの人間が出入りしますが、コア部分は普段は無人です。メンテナンスも基本的に外から行い、ハード的なメンテナンスはエリアを区切ります。その時もセキュリティに穴が開かないように、関係ないエリアは無人のまま封鎖され、関係するエリアへの入構者は厳しく管理されます。それなのに今朝、常時走っているはずのセキュリティチェックで構内で突然死者が発見された。どこから入ったのかもわからないのに」

「密室事件?」

「さふであります。道警は警視庁サイバー犯罪対策課に応援を求めて、目下竹警部が札幌に向かっております。そして、その事件が発生した区域のサーバに」

「まさか北急の」

「ええ。北急と北急車両製作所のデータを収めたハードウェアのラックがその近くにあります」

「関連性は?」

「警察は興味を持っていますが、確証はありません。事故事件両面での捜査が始まっています」

「なにか北急のデータに関心があるものが仕掛けてるのか」

「それにお忘れではないと思います。北急データHQで起きた情報漏洩事件」

「あの亡くなった善さんがもってっちゃったんじゃないかって話? 犯人は捕まったでしょ」

「ところが、その犯人笹木が奪ったSDカード、だれかがそこからまた発見されるまでの間にデータを読み取った痕跡があるのです」

「本当に漏洩したのか?」

「管理者のカオル君が厳重な暗号化を仕掛けたので漏洩はまだかも、という話です。しかし突破されるのも時間の問題とも」

「なんということだ」


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