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狙われる北急電鉄

「なぬ!」

 それから数日後、総裁はインターンで働いている銀行で、流しっぱなしの経済ニュースに気付いた。

「北急電鉄が敵対的TOBを仕掛けられた、とな!」

「総裁、それで札勘の手とめちゃダメ」

 叱られる総裁。

「しかし、多額の有志をしている御行にも大きな影響が」

「そうなのよね。北急の金融機関持株比率、つつじHDが34.1%、川崎銀行が20.5%、東京生命15.9%、四菱信託銀行が13.6%、うち北浜共立がそのあとの9.1%。で、今回のTOBPは国際ファンド・グローバルワークキャピタルが仕掛けてきた。川崎銀行がそれにしたがっている」

「うっ、20.5%が敵側に」

「そのうえ公開買付をする。金融機関は総株主の42%、一般外国人が19.6%個人株主が28.9

%いるから」

「ひいい、買収、成功しちゃうじゃないですか!」

「そうなのよね。今頭取が対応を検討してる」

「……頭取ってどんな方なのですか」

「山本理華。つつじHDに首席で内定してたのにそれを蹴って北浜共立に入り、順調に出世してきた人。女性だけどものすごくエネルギッシュで鋭いわ。北急電鉄についてもその理想を応援する姿勢で知られている。そのなかで啖呵きったり」

「うっ、女「半沢直樹」ではないですか!」

「そうなのよ。実在するのがほんと驚きなの」

「そういう人なら北急の斯様な危機を救えるのでは」

「そうだと思いたい。でも圧倒的な資金には抗えない。金融ってのはそういう戦いだから」

 先輩の銀行員・丸沢は息を吐いた。

「結局、資金さえあれば、私達金融屋も無力なのかもしれない。誰がやっても同じかも」

「そんなことはないと思います」

「そうかな。頑張ってもお金がそれでドバッと増えるわけでもない」

「……札束で頬を叩かれる、みたいな話かも」

「そう。叩くか、叩かれる立場か。そのどっちになるかは資金次第」

「うぐう」

「でも、それを覆すとしたら、頭取なのよ。いくつもの伝説を持っている人だから」

「しかし、ということは」

「その頭取をどうにかするでしょうね。彼ら」

「危ないじゃないですか!」

「ボディーガードがいるんだけど、それでは十分ではなさそうなのよね」

「洒落にならん……」

 そのときだった。

「総裁、ちょっと」

 呼ばれた。

「うぬ、秘書課長がなぜ?」


 総裁は小さな会議室に通された。


「あなたがあのエビコー鉄研総裁なのね。私は山本理華。この北浜共立銀行の頭取」

「うっ、頭取閣下」

 待っていた頭取に総裁はビビっている。

「おどろくことはないわ。私も所詮金融屋だもの。けっして魔法使いじゃない」

 だがオーラは間違いなく普通の女性と違っている。

「どういう件で」

「ちょっと、手伝ってほしいの。どうぞ」

 そう呼ぶと、入ってきたのは樋田秀明、北急電鉄会長だった。


「これから私は狙われる。しかし普通のボディーガードでは対応できない。そこで北急電鉄さんにお願いすることにした。北急は2種鉄道事業として現在、いくつもの周遊列車・長距離列車を走らせている。それを身を隠す「盾」にできないかと考えた」

 頭取の言葉に総裁は眼を丸くする。

「だが北急の社員ではあからさますぎるし。北浜さんの銀行員でそういうスキルを持つものはおそらくいない。そこで君たちエビコー鉄研に依頼することにした」

「マジであります、か」

「そうだよ」

「ワタクシたちは所詮タダの鉄道好きですが」

「日本を危機に陥れたアスタリスク事件や厚木レイバー大暴走事件を解決したのに?」

「それは」

「私は君を高く買っているんだ。きっと君たちならできる」

 樋田も頭取も頷いている。

「君に、今回のTOBの図式の洗い出しと各勢力の調査、そして頭取の直接護衛を依頼する。まもなく北急電鉄の臨時株主総会がある見込みだ。敵はそれへの頭取の出席を絶対阻止しようとすると思われる。なんとしても頭取を守って、総会に出席させてほしい。そのためなら資金物資人材全てにわたって全力で支援する」

 総裁は緊張に顔を強張らせた。

「頼んだぞ」


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