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【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される  作者: 水都ミナト@『解体嬢』『推し活幼女』6/10発売
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される
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30. 地上へ

「うっ…眩しい」

「ほわあ…ここが地上ですか」


 とある日の昼下がり、エレインとアグニは魔法陣で地上へと転移して来た。

 久々の日の光を浴び、エレインは眩しそうに目を細めた。フードを被っていても、ダンジョンの中では感じられない日差しに多少の懐かしさを感じる。散々不満を漏らしていたアグニも、何やかんやで初めて降り立つ地上の様子に興味津々のようで、辺りを見回している。


「へぇ、ダンジョンって外から見るとこんな感じになってるんですねぇ」


 マジマジとダンジョンの塔を見上げるアグニ。


「外観より内部の方がかなり広く感じますね。空間の構造が違うのでしょうか。興味深いです」


 何やら難しいことを考えている様子だが、エレインにはさっぱり分からないので、とりあえず当初の目的を果たすことにする。


「えっと、お婆ちゃんの手記を取りに宿に行きたいんだけど…せっかくだから宿を引き払おうと思うの。それで問題が支払いなんだけど…」


 エレインは外套の内ポケットを探り、幾つかの魔石を取り出した。


「修行でダンジョンに放り込まれた時に、倒した魔物が魔石をドロップしたんだけど…これを換金して支払いに当てようと思ってるの」

「おや、意外とちゃっかりしてますね」


 たいてい泣き叫びながらダンジョンを駆け回っている印象だったのだが、回収するものはしっかりと回収していたらしい。この辺りは腐っても冒険者気質なのだろう。


「というわけで…換金するためにギルドに行かなくちゃいけないのよね…はぁ」


 エレインの足取りは重い。ギルドは冒険者が集まる場所であり、アレク達も頻繁に出入りをしている場所であった。顔を合わせることがなければいいのだが…

 それに、今はアグニがいる。万一アグニが魔物だとバレたらとんだ騒ぎになってしまうのだ。


「大丈夫ですよ、さっさと行って用件を済ませてしまいましょう」

「えっ、待って…!」


 エレインの心配をよそに、アグニはスタスタと人で賑わう大通りへと進んで行ってしまう。エレインは慌てて後を追い、二人は冒険者ギルドへと向かった。


「そういえば、ドリューさんが魔物の力が低下するって言ってたけど、体調はどう?平気?」


 道すがら、エレインは気になっていたことを尋ねた。


「うーん、身体が重いとかそういった不快感はないですね。ただ、身体の芯の部分に感じる魔力量はかなり少ない気がします」

「そう…」


 とりあえずはアグニが苦しんだり痛みを伴ったりすることがないようで、エレインはホッと安心した。


 不意にアグニが立ち止まり、前方を指差した。


「あ、もしかしてあの立派な建物がギルドですか?」

「ん?ああ、そうだよ」


 ダンジョンの塔から程近くの大通り沿いに、その建造物はあった。ウィルダリアの街の中でも随一の大きさを誇るそれこそが、冒険者ギルドであった。


「ダンジョン攻略をするためには、まずここで冒険者登録をするんだよ」

「へぇー色々な設備が入ってるんですねえ」


 ギルドの強固な扉を押し開き、中に足を踏み入れると、あちらこちらで冒険者らしき人々で賑わっていた。ダンジョン攻略の情報収集や仲間の募集、目的は様々であるが、皆ダンジョンの踏破を夢見る冒険者達だ。


 入って正面に受付があり、受付に向かって右手にダンジョンのドロップアイテムの換金所、左手にメンバー募集や依頼内容に関する掲示板がある。

 ダンジョン内でしか採れない草花や、魔物の皮や牙など、薬や武器の材料として使われているものも多い。そんな素材集めを求めるクエストが主に掲示板では募集されている。

 ダンジョンの攻略を目指す冒険者ばかりではなく、そうした素材集めで生計を立てている者も少なからずいるのだ。


 エレインとアグニは静かに壁沿いを進み、換金所へ向かった。


「あの。これ換金お願いできますか?」

「ん?ああ、見せてもらえるかい?ふむふむ…」


 受付には、鑑定用のルーペを目につけた初老の男性がいた。エレインも何度か魔石の換金を頼んだことがあるロックスという名の男だったため、慌ててフードを目深に被り直す。


「ああ、中々の純度だな。これだと…こんなもんだな」


 ロックスはしばらくエレインが渡した魔石を鑑定していたが、やがてルーペを外すと、カウンター下から硬貨の入った木箱を取り出し、金貨3枚を差し出した。


「えっ!?こ、こんなにですか!?」

「ん?どの魔石も50階層以上でしか採れない希少なものばかりだ。ああ、もしかして足りないか?じゃあ…」

「あっ!!だだだ大丈夫です!ありがとうございました!」

「そうかい?またのご利用を」


 ロックスが硬貨を足すために木箱を覗き込んだため、エレインは慌てて手を振って硬貨を巾着に仕舞うと、ペコリとお辞儀をしてそそくさと退散した。


 ウィルダリアでは、銅貨、銀貨、金貨の3種の硬貨が流通している。銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚の価値がある。エレインが借りている宿は、一泊銀貨5枚であるため、金貨3枚は十分過ぎる収入であった。


「ど、どうしよう…こんなに貰えるなんて…」

「いいじゃないですか、あるに越したことはないし有り難く頂戴しておきましょう」


 急に大金を保持し、顔を青くするエレインに対し、アグニはあっけからんとしている。換金所を離れて、部屋の隅でコソコソと話していると、不意に肩を突かれた。


 思わず振り返ったエレインは、更に顔を青くすることとなった。


「あ、やっぱりエレイン氏。十日も連絡もつかずにどちらへ?少しお話をお伺いしてもよろしいですよね?」


 有無を言わさぬ圧を放ちながら、エレインに声をかけてきたのは、エレインの担当受付官であるローラであった。

お陰様で30話です…!

少しずつとですが、アクセスくださる方が増えており、大変嬉しく思っています♡


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これからもエレインやホムラ達をよろしくお願いします…!

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