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【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される  作者: 水都ミナト@『解体嬢』『推し活幼女』6/10発売
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される
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17. エレインのいないパーティ①

「うぅ〜ん…いてて」


 アレクは二日酔いで痛む頭を抑えつつ、ゆっくりとベッドから身体を起こした。ずきりと頭に鈍い痛みが走る。

 チラリと視線を投げた先の床には脱ぎ散らかした服が散乱しており、アレクは服を纏っていなかった。


 パーティのお荷物だったエレインをダンジョンへ置き去りにして早くも3日目の朝。ここ2日間は計画をやり遂げた祝杯と、休息のためにダンジョンへは潜らずに食って飲んで眠ってを繰り返していた。


 ふと隣を見やると、アレクと同様一糸纏わぬリリスが気持ちよさそうにスヤスヤと眠っている。昨夜は飲み過ぎてつい盛り上がってしまった。

 リリスとは同郷のメンバーでダンジョン攻略を始めてしばらくしてから、深い関係を持つようになった。パーティの調和を乱さないためにも、自分達の関係はロイドやルナには秘密にしている。

 アレクはふわふわとしたリリスの髪をひと撫ですると、ベッドから起き上がり、シャワーを浴びるために浴室に向かった。



(ノロマでグズなエレインのことだ、もう『破壊魔神』にズタズタにやられているだろうな)


 シャァァ…と頭から熱めの湯を浴びながら、元パーティメンバーの最期に思いを馳せる。が、罪悪感は微塵も感じていなかった。むしろ70階層まで一緒に旅ができたことを半人前であれ冒険者であるならば感謝して欲しいものだ。


 ーーーアレクは70階層まで到達できた影に、エレインの努力や補助魔法の効果が存在していたことには未だ気付いていない。そして、己の力に慢心するが故に、『破壊魔神』と呼ばれる戦闘狂の鬼神が、不殺の信条を持ち、戦った冒険者は殺さず地上へ送還している事実も知らない。だからこそ、エレインはすでにこの世にいないものと信じきっていた。


 シャワーを浴びてさっぱりしたアレクが部屋に戻ると、目を擦りながらリリスも身体を起こしていた。


「ん…アレク、おはようございます」

「ああ、おはよう。俺は着替えたら先に自室に戻る。また後でな」


 ふわりと柔らかく微笑むリリスを軽く抱きしめ、アレクは素早く服を着ると、静かにリリスの部屋を後にした。




◇◇◇


「さて、リフレッシュは昨日までで十分できたな?そろそろボスの間攻略に向けて準備を整えていこう」

「ああ、休み過ぎて身体が鈍っちまいそうだ」

「ルナは準備万端。いつでも行ける」

「ルナったら。今度の相手は、あの『破壊魔神』ですよ?装備やアイテムをしっかりと揃えて万全の態勢で挑まなければいけませんよ」


 朝食がてら、定食屋で今後のことについて話すアレク達。


「ロイド、盾はもう武器屋に預けてるんだよな?」

「ああ、思ったより値が張るが、あと5日ほどでメンテナンスが終わるらしい」

「ルナは《転移門(ポータル)》用の魔石やポーションをすでに注文済。支払いは受け取る時」

「ふむ、そうか…」


 パーティの懐事情は厳しいわけではないが、決して余裕があるというわけでもない。何故なら、それなりに整った装備、必要なアイテムやポーション、そして飲み食い代が少なからず掛かっているからだ。

 武器の整備にあと5日かかるならば、ボスの間に挑むのはその後だ。それまでの5日間は時間に余裕がある。


「まあいいだろう。またエレインをダンジョンに放り込んで、魔物を倒して魔石を採取させればすぐに取り戻せるさ、ははっ」


 ニヤリと口角を上げながら珈琲を口に含むアレクの言葉に、他の3人は気まずそうに視線を交わした。


「その、アレク?エレインはもう…」


 リリスにやんわりと指摘され、アレクはハッとした。


 そうだった。エレインはもう()()()()()()()

 アレクがこの手でボスの間に突き飛ばしたのだった。


「チッ、そうだったな。居なくなって清清するが、小金稼ぎや荷物持ちが居なくなったと思うとちっと不便だな」


 居ても居なくてもアレクを苛立たせるエレインの存在を疎ましく感じながら、ロイドに向き合った。


「じゃあよ、ロイド。盾の料金分ダンジョンでサクッと稼いでこいよ」

「なっ…俺1人で魔石狩りをしてこいってことか?」

「ん?なんだ?それぐらいお前なら余裕だろう?」

「ま、まあそうだが……はぁ、分かったよ」


 ロイドは始めは怪訝な顔をして乗り気ではなかったが、平然としているアレクの様子に、諦めたように頷いた。

 アレクは満足げに頷くと、何かを思いついたかのようにポンっと手を叩いた。


「ああ、そうだ。70階層に挑む前に各々レベルを確認しとこうぜ!もうレベリングは済んでるよな?」

「ふ、もちろん。レベリングは基本中の基本。ルナはダンジョンから出たらすぐに経験値を振っている」

「その通りだな。もちろん俺も対応済みだ」

「ふふ、レベルの確認も久しぶりですね」


 皆はそれぞれ自分のレベルに自信があるのか、何処か得意げにしている。そして、一様にブゥンと《ウィンドウ》を開いた。


「では、私からいきますわね。えぇと…レベルは55、ですね」

「ふふん、次はルナ。ルナのレベルは58。」

「マジか。俺は57だな…で、アレクはどうなんだ?」


 3人の期待に満ちた視線を集めるアレクは、勿体ぶったように《ウィンドウ》を開いた。


「ふ、俺は…レベル60だ!」

「「「おおっ!」」」


 パーティ唯一のレベル60台に湧く面々。戦闘時、トドメを指すのは大抵アレクな為、獲得経験値が多めなのは必然であった。だが、アレク達は自分達のレベルしか知らないため、レベルが到達階層の水準に達しているかどうかも、パーティ内という狭い世界での判断となっていた。


 そして、レベルが()()()()()()()()こともあり、アレク達はレベル50を超えていることは強者の証であると認識していた。

 ーーー戦闘や窮地をエレインに頼ることがなければ、本来なら皆70レベル近くに到達していただろうことは、知るよしもなかった。


 鼻高々でロイド、ルナ、リリスからの羨望の眼差しを集めるアレク。


「みんな強くなったな!これだけのレベルがあれば、きっとボス戦も余裕だぜ!じゃあ、この後はそれぞれ準備を進めよう」


 アレクの言葉を契機に、綺麗に朝食を食べ終わった面々は、ダンジョン、教会、雑貨屋など各々の目的地へ向かって行った。

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