伯父
寝台の上で壁にもたれて座っている白を目にした時、一瞬孫火だ、と思った。
年々奴に似てくると思ってはいたが、白は孫達と話す際には、どこか余計な力が入ったような表情をしている。
けれど久しぶりに見る寝台の上の白は、力が抜けた顔をしていた。
無口なところはそっくりだ。話しているのに、何か別のことに気を取られていることがよくあるのも、似ていた。
ただ、孫達は孫火に対して身構えたりしなかった。普通の兄弟だった彼らは、ずっと一緒にいてお互いに馴染んでいた。孫達は村長の跡取りとして、親の期待を受けていたが、それを自慢にも思い、鬱陶しいとも感じていた。そしてその愚痴を孫火にだけ零せるほどには、馴染んでいた。
孫火はあまり一つのことに執着しない性質だった。それが生来のものか、次子だからなのか、判然としない。村長の家にも団徳という村にも、孫火は執着しなかった。幼い時期から、遠くへ旅することを願っているようなところがあった。それを口に出すことはあまりなかったが、言葉の端々、眼差しの遠さから孫達はそう感じていた。同郷の幼馴染たちも同じようなことを言っていたから、そういう雰囲気があったことは間違いない。
孫火と白は性格も似ているところがあるが、孫達は白に対して虚心になれなかった。もっとうまく接して、愛情を示してやらなければ、と思う。しかし何をどうすればいいか、孫達にはわからなかった。白の前に出ると、孫達は責められているような気がして、居心地が悪かった。
白が幼い頃から、それはずっと続いていた。むしろ白と離れているほうが、白のことを考えてやれた。一向に弾まない会話の後で、白の姿を思い返して、白は痩せすぎだ、もっと栄養を取らせる必要があるなと思えば、食事の量を増やしてこっそりと小屋へ運んだ。
白の飼っていた雑牛が瀕死の状態で見つかり、白自身が村内で見つからなかったことで、孫達の脳裏には孫火が亡くなった時の光景が浮かんだ。出血が止まらず、氷よりも白い顔をして横たわっていた孫火。荒い息をひきつるようにしたかと思うと、その顔が、体が、生きた人間でなく物体に変わっていく様を見守るしかなかった情景が。
闇雲に探し回りたかったが、それを押し留めたのは、孫達自身の経験と、王都の客人だった。
責任者の盛容はすぐに隊の人間を動員した。彼らの同僚が同じく行方不明になっていたからだ。彼らには土地勘がないので、助力を乞われた。辺境のような地では、土地勘がないことは大きな枷になる。街道に沿って近隣の村落へ向かう役目は彼らが請け負い、馬を引き出して対応してくれた。
道のないところへは、団徳の人間が先導する形で捜索が進められた。
眠れないまま一夜が過ぎてた。辺境の人間ならば、冬の山中でも一晩くらいなんとでもなる。そう言い聞かせていたところに、狼煙が上がったという報告があった。その報告を聞いて、まだわからないと言い聞かせつつもかなり安心してしまい、うっかり眠ってしまった。
目が覚めて白の生存を報告された後のほうが、混乱することになった。




