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ちょっと短いですが…


 すぐに(ハク)の傍らに膝をつき、首筋に指を当てて脈を計ろうとした碧天だったが、意図に反して手が持ち上がらず、体中の筋肉が解けるような感覚を覚えた。そのまま(ハク)と並んで地面にうつ伏せになってしまう。

 麻痺毒だな、と碧天は思う。どの毒かまではわからないが、幸い意識はあり、呼吸も苦しいというほどではない。一応毒の耐性をつけるべく、毒物の摂取の試みには参加したことがある。それでどの程度の耐性がついたかはかなり疑わしい。それよりも、用いられた毒物が、殺さず、しかし動けないように調節されていると考えたほうが納得できる。

 手が動かないのでじっと(ハク)を観察する。体の微かな動きから、呼吸はあり、痙攣ではないことを見て取って、少し安堵した。「黒の院」の目的が碧天の予想通りだとすれば、積極的に人間を死なせることはないはずだ。瞬きも問題なくできる。

 張が(ハク)を石垣の向こうに投げたのは、こうなることを知っていたからだろう。恐らく奴らの仲間が毒にやられたに違いない。ここを見つけた時点で、「黒の院」に突撃したはずだ。その時に同じような目に遭ったことで、石垣が「黒の院」の防衛線であることを知ったのだろう。

 碧天は目を動かして張の姿を捉えようとした。無傷ではないが、壁に衝突した後に声が聞こえていたから、意識を失ってはいない。この毒で死なないとすれば止めを刺しに来るだろうか?いや、ここまでくれば同じ目に遭うことを知っているのだ、ここには来ない。

 碧天は(ハク)が身じろぎしたのを目にした。もう解毒され始めているのか。これほど速やかに消えていく毒は知らない。軽い胸のむかつきを感じるが、実際に嘔吐するほどではない。少し体が熱い気もする。症状からすると、貝毒にも似ている。海辺の町ではよく耳にするものだ。この辺りではあまり縁のない毒だろう。貝毒は、植物などから抽出できる他の毒と比べて人工的に増やすのが難しいので、毒というより食中毒として認識されていることが多い。闇市でも扱われていない。「商品」としては流通しない毒だ。

 考えながら、舌先の動きを確かめる。思うように動き始めている。緩んでいた口元を引き締め、この分だとそろそろ指も動かせそうだと力を入れようとした。

 微かな声が上がった。ひび割れた声だが、(ハク)らしい。ゆっくりと(ハク)の目線が上向き、碧天を見る。

 目が合った、と思った時、体の下で小石が擦れた。痛いというほどではないが、違和感が続いた。間近に見えていた(ハク)の顔が一回り小さくなって、ざらざらという音が感触として響く。

 引きずられている。

 頭を掴まれて、北の方角へ、(ハク)の傍らから、遠ざけられている。掴まれている感触はない。地面に接触している感覚もないのだが、音がするので連想して感じているみたいだ。一体誰が。張か?それとも、と考えていると、音がしなくなった。

 碧天の爪先が地面から離れた。

 (ハク)の目の前で、碧天はふわりと宙に浮き、北に向かって移動していた。

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