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処罰

 蘇順がさっと顔を上げ、碧天を見る。「火、消えますよ」碧天は地面に膝をついて、火口の上に枝を数本移動させる。

 「あたしが許せない?」と言う蘇順の顔色は白いが、表情は落ち着いている。予想外、と言うわけではなかったようだ。「私が許すも許さないもありませんよ。ただ、(ハク)さんの牛、その件はまあ金銭で片付くかもしれません。(ハク)さんの方の傷、これは殺意は認められないと判断される可能性が高い。ですが、水に落としたのは不味いです。これは処罰の対象にしないわけにはいきません。あなたは団徳に着いた途端、捕縛されるでしょう」

 「いろいろ手助けしたわよねえ?庇ってくれたりなんかは、無理?」碧天は大きく息をついた。「手助けの点はしかるべき筋には説明します。ですが、庇うのは違います」「じゃあなんで今言うの?逃げろってこと?」「逃げて生き延びられますか?」

 蘇順は碧天を見る。揶揄っているようには見えない。蘇順の表情を見守っているようだ。お互いが考えていることを探りあっている。碧天の思惑がわからず、蘇順は仕方なく問われてことを考えてみた。

 辺境で集落に属さず生きるのは、至難の業だ。牛や山羊などの家畜、必要な家財道具、幾ばくかの金を持ち出したとしても、無理だろう。まず冬を越せるだけの家が必要になる。自分と家畜のための燃料は、薪を集めておけば可能かもしれないが、食料が難しい。一人で畑を開墾し、一年間生き延びるだけの収穫を得るのは、量からいっても種類からいっても無理がある。集団で協力し補い合うことで、皆が必要とする量を確保できる。冬の間の手仕事も、街に売りに行って現金化し、それでまた必要なものを手に入れる。その過程もすべて一人ではこなせない。

 どこか拠点となる集落が必要だ。身元を隠しては、小さな集落では受け入れてくれない。人の多い都会なら住み着くこともできるかもしれないが、恐らく別の危険があるだろう。それがどういうものか、蘇順は考えたくもなかった。「無理ね」蘇順の肩が落ちる。

 碧天は蘇順から視線を外さずに、顎に手をやった。「私たちに協力して、団徳に戻りましょう。あなたに協力してもらったことも報告します。処罰は受けるべきだ。でも、手を貸します。あなたにとって有益なものになるように」「有益?処罰が?」蘇順は首を傾げる。しかし碧天は真面目な表情を崩していない。「そんなことができるの?あんた、商人でしょう?」

 「商人だからですよ。必ず利益を出して見せます」


 火の勢いが増してくると、碧天は(ハク)の手伝いに戻ってきた。ほとんど終わっていたので、「一応傷を見ておきましょう」と言うので、眠る阿珠の隣に腰を下ろし、外套を脱いで、襟巻を緩める。医者だと思っているのか、着衣の中を覗きこまれることにそれほど抵抗はない。なぜだろう?一体いつから医者だと思いだしたのか?

 牛飼として碧天に出会った頃は、医者だと思っていなかった。そのときなら、こんなふうに肌を見せることはできなかったに違いない。商人として愛想がいい人、読み書きができて、隊長から一目置かれていることから、未成年者なのに、かなり優秀な人なんだろうと、そして自分とはかなり異質な人だという印象だった。

 再会したときはものすごい美女に化けていたので、違和感が酷かった。整った顔立ちの人で、旅の最中でも小綺麗だったのは確かだが、その化けっぷりはおとなしい牛の群れの中に、猛々しい軍馬が紛れ込んだみたいだった。そのとき周囲の村民から漂った『匂い』は、結構笑えるものが多く、嫉妬が少なかったのが意外だった。碧天の美女ぶりは嫉妬を引き起こすよりも、圧倒的だったようだ。

きりよく終われませんでした・・

すみません。

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