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残酷な部分があります。

気になる方はスルーしてください。

 自分はこういう荒事には向かない。

 盗賊紛いのことをやっているのは仕方がない。言い訳のようだが、他に選択肢がなかった。情報を集めることはうまくできる。衛の六感は弱いもので、自分でも六感がどうか、判断に迷う。ただ、見つかりたくないと思う時に見つかったことがない。石虎に言わせれば、隠密の能力で、「すげえ便利な能力」ということになる。だから偵察が自分の任務であることは天職のようには思っているが、この仕事のもう一つの面には、まだ慣れることができない。

 血を見ること。拷問に立ち合うこと。

 今まで拷問の場に立ち合ったことは三回、初めの時は爪を剥がすという初歩でもう吐き気を我慢できず、最後まで立ち合えたことがない。既に数回、最後まで立ち合った石虎とはずいぶんな違いだ。

 そもそもなぜそんな惨いことをするのだと思う。

 情報を得るためと言うが、拷問で得られた情報など、ほとんど信ぴょう性がない。結局裏をとるためにひどく苦労した挙句、苦し紛れの嘘だったことが分かるのがざらだ。捕らえるのが下っ端役人や兵士なのだから、碌なことを知らないのは道理なのだ。

 でも、それでいいのだと言われてしまう。本来の目的にかなっているのだとも。

 それに、自分たちの存在がまだそれほどには知られていないことを確認するのが狙いでもある、と。

 知られてしまえば、衛たちなど一溜まりもない。正規の兵士のように正式な訓練を受けた戦闘職とは違う。装備も雲泥の差だ。

 衛たちの生き残るすべは、散らばって隠れ住むこと。まとまって殲滅などされない。組織の全体を知る者は頭領を含め数人のみ。衛も石虎も当然知らされていない。

 ここまでの道のりは悪夢だが、とにかく目の前のことに対処して、生き延びていくしかない、という気持ちはある。そのためには、なんだってやってのける。

 が、避けられるものは避けたいのが本音だ。

 碧天は医者なのだろう、今は衛の出番ではない。衛は一歩引いて、碧天の見ているものを見ようとしなかった。


 「そこの方」碧天が肩越しに衛に視線を送った。「外にいる二人の様子を見てきてください。私たち三人がこの家にいなければならないなら、せめて火を持ってきてくださいませ」

 「わかった」衛は急いで外に出て、雪の中でへたり込んでいる(ハク)と蘇順を支えて、戸口の傍に座らせた。土間だが、土が乾いている分ましだろう。

 碧天の前に横たわっているのは、手足を縛られた若者だ。体を捩って呻いている。床の血は、頭部の近くに落ちている。

 「私は医者だ。怪我しているのなら治療をする」耳元でゆっくりと一語一語はっきりと聞こえるように話しながら、脇の下に手を差し込む。上半身を起こし、相手の顔を見ると、ひきつけるような呼吸音がする。暗いので、顔色はわからないが、口を大きく開いて、食い入るように碧天を見ている。

 口からゆるゆると血が零れ出している。

 頭の中に過去の光景が閃いた。碧天は体の位置をずらし、その背後に回り込んだ。やや前傾姿勢を取らせ、左手で相手の縛られた手首をつかんで、胸部に当てる。右の掌底を背中目掛けて振り下ろす。

 数回、相手の体に碧天の力が響くと、ごぼり、とくぐもった音がして、赤黒い塊が吐き出された。

お目汚し、失礼いたしました。


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