賽は投げられた
変わりようのない日常とは、朝から騒がしいクラスメイトが、いつも通りテレビやら動画投稿者の話やらで盛り上がる日々のこと。
「一条。今日は日直当番は君だぞ」
「分かってるって"級長"」
変えようのない日常とは、この青葉高等学校での学校生活。同じ道を歩いて、同じ机の前に座って、毎日毎日窓の外を眺める。これは高校生の"義務"であり、変えようのないこと。
(こんな毎日が、後一年以上も続くのかぁ…)
この世は"お金"と"権威"がすべてだ。それを得るためには、その義務を果たすことが必要になる。一般的には"学歴"と呼ばれるものだ。学歴はお金と権威に繋がる第一歩といっても過言ではない。
「先生遅くね?」
「きゅーちょー! 職員室いって呼んで来いよ!」
「村上。俺は雑用じゃないぞ」
逆に学校では、"学歴"がすべてだ。優秀な生徒は学校から推薦状を渡され、有利な立ち位置で国立の大学を狙える。権威とお金の為の"レベル上げの場所"と例えた方が自然かもしれない。
「……?」
「え、誰あの女の人…?」
俺たち高校生は、学校で他の生徒と競い合っている。悪く言えば、蹴落とし合いに近い行いだろう。テストの順位で若い数字を狙い、勉強、勉強、勉強の毎日。そんなに勉強をして、役に立つのか…なんて考えるだけ無駄だ。
優等生が勝ち組となり、劣等性が負け組となるのが世の中の仕組み。俺は負け組にはなりたくはない。たとえ人を蹴落としてでも、この学校で勝ち組となってやる。
「…あの、どちら様ですか?」
「……」
「僕たちの担任の田中先生では、ないですよね…?」
そう固く決心し、努力をし続けてきた日々が、
「はい注目してください!」
そう強く構え、周囲に嫌われてきた日々が、
「"交配種共"の皆さんには、今から"命"を懸けた"心理戦"をしてもらいます」
たった今――すべて無意味となった。