1.はじまりはじまり。
勢いだけで書いた。何これ。
昔々あるところに、とても美しく気の強いお姫様と、とても美しく気の弱い王子様がおりました。
お姫様は名前をカメリアと言いました。真っ赤で真っ直ぐな髪を肩口で切り揃え、綺麗な銀の目をしておりました。
王子様は名前をイレクスと言いました。真っ白で腰まである長い髪を首の横で三つ編みにし、綺麗な金の目をしておりました。
二人は将来の約束をしている、いわゆる許嫁同士でした。それは二人が生まれて間も無い頃に親が決めたものではありましたが、二人ともそれについて異を唱えることはありませんでした。
お姫様は気の弱い王子様を守ってあげないと!と使命感に燃えておりましたし、王子様は気の強いお姫様をかっこいい!と心の底から慕っておりました。要はラブラブでした。
お姫様は王子様の為に剣術も魔術も人一倍学びました。いつしか城の騎士逹と同等の腕になるくらいの剣の腕前を誇りましたし、魔術の腕も相当なものでした。更にはこの国を益々発展させようと様々な事柄を学んだので、学問にも秀でておりました。
そんなお姫様の為にと王子様は甘いお菓子や手作りのお弁当を用意したり、お守りになるようなアクセサリーを手ずから作っていました。
文武両道を極めるお姫様と内助の功を地でいく王子様。傍目に見ればそれはそれは美しい愛の形でした。
二人の親は思いました。普通逆じゃね?と。普通剣も魔法も比べる者が無いくらい強い王子と、それを献身的に支える姫なんじゃねぇの?と。
二人を知る者は思いました。普通こんな弱い男、歯牙にもかけなくね?と。こんな強い女怖くね?と。
ですが誰もそれを口にはしませんでした。それくらいに二人の仲はよく、当人同士が幸せならいいか、と皆が思っていました。
二人が暮らすのは、そんなのどかで優しい世界でした。