第二十四話 海の巨人。
バチィンッ!!
突如の衝撃波に後ろから襲われる。
衝撃波を察知した俺は素早くそれを緩衝したが、それでも俺たちを乗せた先頭のイルカは錐揉み状に押し流されていった。
ふと後方を見ると、追従していた2匹のイルカの姿が見えない。 いや、見えないのではない。 四散していたのだ。
一匹のイルカの頭が残骸のように浮いていたのだ。 辺りは真っ赤な霧のようになっている。
敵だ!
そう思った瞬間、俺はイルカを除く辺り一面の海を消した。
海中の生物は空中では生きることが出来ない。 そう思っていた時期が俺にもあった。
辺り一面の海を消した瞬間、後方には巨大イルカの3倍はあろうかという海の巨人が現れたのだ。
上半身のみの海の巨人。 これが海中で現れたら姿が見えないだろう。
滝のように頭から波しぶきをあげながらこちらへゆっくりと進んでくる。
「クェーッ!」
イルカが怯えたように声をあげた。
「な! なんスかアレ!」
「ミチコゥ、寝てていいぞ。 アオイはイルカを落ち着かせてやってくれ」
「かしこまりました」
俺はイルカの額から飛び出して海の巨人と相対した。
海だ。
海がそのまま競り上がり、人の姿をしている。
さっき海を消したのに動いているということは……
一応俺はもう一度、目の前の海の巨人を消そうとした、が、消えない。
つまり、アイツは海ではないのだ。
「ふぅん」
次に胴体の根元を岩に変えようとしたが、変わらない。
似ている。 影野郎の時ととても似ている。
つまり、アイツに物理攻撃は効いていない。
また奪うのか?
また俺から大切なものを奪うのか?
俺の怒りは頂点に達した。
ブチン。
その時、俺の頭の中で、何かが切れた音がした。




