表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔人  作者: tosikazu
16/28

第十六話 イルカのお腹からさようなら作戦。


 半月後。


「自分、タカシさんに会えて光栄ッス!」

「はいありがとう」


 とりあえずモノになった。


 リザードマン(ミノルたち)との教育で俺の教え方が慣れたのか、タコ魔人の地頭がいいのか、半月ほどで日本語をほぼマスターした。 


 タコ魔人の本名はビュルビュル言ってわからなかったので“ミチコ”にした。 深い意味は無い。 ただ言葉をある程度理解した時に、まずは男か女かを確認したところ、女だと判明したから一応女らしい名前にしただけだ。



 俺は二度同じ失敗は繰り返さないのだ。



 とりあえず俺のことを好きになっちゃダメとは言ってある。 チートハーレムに興味は無い。 興味が無いどころか、タコ魔人である。 外見から別人種なのだ。 


 外見といえば、タコ魔人たちは男女が生殖器以外の身体的特徴は無く、性器も体内に出し入れ可能らしい。 なので一見どちらかは分からないが、発情期が来て始めて男女を意識するとのことだった。 不思議な世界だ。



 ともあれ、俺はミチコに色々と聞いた。



 この世界のこと。

 西のボスと東のボスのこと。

 あのイルカのこと。

 ミチコの悩みのこと。

 俺の体のこと。


 ミチコによれば、西のボスや東のボスのことは分からないとのことだった。 しかし、ミチコの一族にもボスはいるらしく、ボスなら何か知っているかも知れないとのことだった。


 そもそも、海に住む者達と陸に住む者達はあまり接点が無いらしい。


 お互いに認識はしているが、住処が違うので生活にはあまり関係が無いみたいだ。 外国のニュースを聞いても「ほーん。」くらいにしか思わない時の感覚に似てるのかも知れない。


 イルカ達は、最近あの辺りを縄張りにしている荒くれ者達で、しばらく前から海を荒らしているらしい。


 いわゆる海賊みたいなヤツらだ。


 ミチコから見ればの話なので、イルカ達にも何か理由があるのかも知れない。


 改めてミチコから悩みを聴くと、ようはミチコはあの海域の警察みたいなもので、警備というか、イルカ達を偵察するのが仕事のようだ。 しかし、何人も犠牲を出している中で上も頼りにならないし、ほぼほぼ腐っていたところに海上を競歩する俺を発見、危ないぞーって叫ぼうとしたら食われたとのこと。 つまり、俺のせいだ。 ミチコは俺を助けてくれようとしていたようだ。 マジですまん。


 というか、どこの世界も割を食うのは現場という風潮は変わらないようだ。 まさに事件は会議室では起きていないのである。 また、ミチコの組織はそれなりに統制が敷かれているようで、集落のようだったリザードマンたちとは違い、『国』として機能しているようにも思えた。


 いずれにしてもまずは情報を得ていかなくてはいけない。 俺の目的は、まず影野郎を追い出すこと、その為にこの世界の仕組みを知ることが重要なのだ。


 俺はミチコからの話を聞いた後に、この世界に来てからの経緯を話した。


 無人島にいたこと。

 リザードマンからジョバジョバと言われたこと。

 謎の悪者に取り憑かれたこと。

 コイツを引き剥がす方法を探していること。


 結局最初に戻るワケだが、ミチコいわく「ボスに聞いて欲しいッス!」とのことだった。


 あと、ミチコはもうここでの警備は嫌らしく、出来たらイルカを退治して欲しいとのこと。


 う~ん。

 いずれにしても巨大イルカから出なくてはいけない。


 ミチコは「皆殺しにして欲しいッス!」と物騒なことを言い放ったが、俺としてはイルカ達の話も聴きたい。


 イルカ達は超音波で会話をするらしく、ミチコ達に解読は出来ないらしい。 ミチコ達の精鋭部隊なら、退治は恐らく可能らしいが、上からの命令は偵察しかないのだとか。


 うむ、何か、あるのだ。


 まずはミチコのボスに会うのが一番だろう。 その前にこのイルカの腹から抜け出さなくてはならない。


 ウンコホールを抜けるのが一番近道だが、それまでに消化酵素の海を潜らなくてはならない。 そしたら多分ミチコは消化されちゃう。 最初も胃酸の海で溶かされていたくらいだ。


 ちなみに今のミチコは、俺が常にミチコの周りの胃酸成分を分解代謝し、無害化しているので悠々と胃酸の海を泳いでいる。


 タコなだけに雑食悪食で、たまに落ちてくるイルカの食料を嬉々として貪っていた。 俺は別に食べなくても生きていけるし、どうしても溢れ出る怒りのせいで食欲はあまり無かった。


 そうそう、外の出方だ。


 腹を破れば早いが、イルカは下手したら死んじゃうだろう。 ミチコの上層部が始末しないワケだから、何かしら傷付けるのはマズイ可能性がある。 これは却下だ。


 だとしたら今一度食道を逆流して、口に戻って出るしかない。 俺だけなら余裕だが、ミチコはあっという間に消化されちゃうだろう。 さすがに俺を助けてくれようとしてくれた人を、俺は見捨てる心を持っていない。


 う~ん……


 そうだ、アレでやってみるか。


 思い付いた案をミチコに話すと、「自分に選択権は無いッス!」と元気良く返事をくれた。


 まぁ懸念はあるけど、何事もやってみないと始まらない。 ミチコは女だが、部活の後輩みたいになっている。 タコ魔人に体の男女差はないとのことなので大丈夫だろう。 ちなみに声は思春期で声変わりする時の中学生みたいだ。


 そんなワケで、俺とミチコは『イルカのお腹からさようなら作戦』を決行することとなった。

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ