第十二話 ミノル。
村は惨劇の一言だった。
皆殺し。
みんな、殺されていた。
気のいい漁師たちも、
沼地の農家たちも、
子供たちでさえ、
等しく息をするものは居なかった。
なんだ?
何なんだ?
頭が混乱し、息がうまく吸えない。
切り取られた写真のようなリザードマン達の死体が頭の中でぐるぐると回る。
足に力が入らない。
なんだ?
現実なのか?
どこから?
ここは異世界なのか?
何が起こったんだ?
トボトボと村を一周して自分の住処へ戻る。
傍らにはミノルが寝たように倒れている。 死んでいるのだ。
俺はフラフラとミノルの部屋へ足を踏み入れた。
ミミズのようにのたくった日本語の文字が、あちらこちらに散乱している。
机の上に、大切にしまわれた手紙のようなものを見付けた。 何の気なしに俺はそれに目をやった。
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わたしは、びっくりした。
タカシ、どのは、まつりでつかう、だいじなフルーツを、たべていたから。
わたしは、みんなをまもっている。
わたしは、おかあさんのこどもだ。
おかあさんは、みんなのおかあさんだ。
わたしは、つぎに、みんなのおかあさんに、なる。
だから、つよく、なった。
でも、タカシ、どのはもっとつよい。
そして、やさしい。
さかなくさいといわれたら、かなしい。
タカシ、どのを、おかあさんからきいたジョバジョバだとおもって、おかあさんをつれていった。
おかあさんはタカシ、どのをジョバジョバだといった。
だから、そばにいるように、いわれた。
タカシ、どのは、笑うことを、おしえてくれた。
たくさん、おしえてくれた。
笑ったら、げんきに、なる。
みんな、げんきになる。
タカシ、どのは、すごい。
ジョバジョバは、すごい。
みんな、笑ってる。
タカシ、どのにさかなくさいといわれる。
タカシ、どのにさわったら、さかなくさくなる。
おかあさんにきいたら、それがあい、だといっていた。
あい、はなんだか、かゆい。
むねがかゆい。
わからない。
でも、あい、してる。
まつりで、つよいおとこと、けっこんする。
タカシ、どのでわない。
タカシ、どのと、けっこんしたい。
タカシ、どの、あい、してる。
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